皆さん、合計特殊出生率って知っていますか? これは1人の女性が生涯に産む子供の平均数を指し、その国の将来の人口増減を予測するのに非常に重要な指標です。この指標が低いと、将来的にはその国の人口が減少する可能性が高くなるのです。例えば、合計特殊出生率が2.0より低いと、その国の人口は将来減少する可能性が高いと言えます。
日本の状況
ここで日本の例を挙げてみましょう。2023年の人口動態統計によると、厚生労働省が発表した日本の合計特殊出生率は1.20でした。つまり、日本の人口は将来減少していく可能性が高いということです。また、合計特殊出生率は都道府県ごとに発表されますが、最も低かったのは東京都の0.99でした。これは1.0を下回っているので非常に低い数値です。
韓国の状況
ところが、世界にはもっと低い国があります。それが韓国です。2023年の韓国の合計特殊出生率は0.72という驚くべき低さです。韓国ではどのような要因がこのような低い出生率を引き起こしているのでしょうか?今回はその理由について詳しく見ていきます。
韓国の出生率が低い理由
経済的状況
韓国の出生率が低い最も大きな理由の一つは経済的状況です。特に2015年以降、韓国では出生率が一段と低下しています。この年以降に出産した女性の多くは1980年代中盤以降生まれであり、1980年代には韓国政府が急速な人口増加を抑制するために「1人だけ産んでよく育てよう」という産児制限政策を実施していました。これにより、2015年以降に出生率が減少したのです。
経済的な要因として、韓国では若者の多くが安定した仕事を得ることが難しく、結婚が遅れる傾向にあります。2022年の15から29歳の若年層の失業率は6.4%で、全体の失業率2.9%の倍以上です。特に大企業と中小企業の間の賃金格差が大きく、労働条件にも大きな差があります。そのため、多くの若者が大企業への就職を目指し、就職浪人をすることが一般的です。
不動産価格の高騰
さらに、不動産価格の高騰が若者たちの結婚を断念させたり、晩婚化させたりしています。韓国では結婚前に男性側が家を用意するという慣習があるため、不動産価格の高騰は男性にとって結婚のハードルを高めています。最近では韓国銀行の急速な利上げによりマンション価格は下落していますが、住宅ローン金利が上がっており、マイホームの夢は依然として遠のいている状況です。
社会文化的状況
韓国の出生率が低いもう一つの理由は、韓国特有の社会文化的な状況です。韓国社会には家父長的価値観が強く残っており、結婚してから出産するという考えが強く、未婚での出産に対する社会的な偏見が強いのです。結婚時の挨拶で男性の職業や家の購入能力が問われるなど、経済的な準備が整わないと結婚しにくい雰囲気があります。
また、韓国社会の教育熱も出生率低下の一因です。韓国は子供が誕生してから18歳になるまでの子育て費用が世界一高いことがアメリカの金融機関ジェフリーズの調査で分かっています。具体的には、韓国の子供1人が高校卒業するまでにかかる総教育費用は平均約86,800ドルです。こうした教育費の負担が子供を持つ経済的なハードルになっています。
教育費の負担
2024年の統計によると、韓国の世帯あたりの月平均教育費支出は約25万ウォンで、これは子供がいない世帯も含めた平均値です。子供がいる世帯ではさらに高額になることが予想されます。特に、学校外の教育費、塾及び補習教育費が約55万ウォンと教育費全体の大半を占めています。このように韓国社会は教育に非常に熱心ですが、その教育費の高さが子供を持つことの大きな経済的負担となっています。
仕事と育児の両立の難しさ
さらに、韓国では仕事と育児の両立が難しい状況にあります。韓国では長時間労働の文化が根強く残っており、これが仕事と育児の両立を困難にしています。多くの労働者、特に女性にとって長時間労働と育児の両立は大きな課題です。
社会的プレッシャー
韓国社会では女性に対して仕事と育児の完璧な両立を求める傾向があり、これが大きなプレッシャーとなっています。教育熱の高い韓国では、子供の教育に多大な時間と労力を費やすことが期待されており、この期待に応えるためには仕事を辞めるか、非常に厳しいスケジュールをこなす必要があります。このような状況が女性に対する大きな社会的プレッシャーとなり、結果として出産をためらわせる要因となっています。
政策の不十分さ
韓国の出生率が低いもう一つの理由は、韓国の政策が不十分であることです。育児休暇制度は整備されていますが、実際の活用が進んでいないのが現状です。特に、長時間労働が一般的であるため、育児休暇を取得することで同僚に迷惑をかけるという意識が強く、またキャリアへの悪影響を懸念する声も多くあります。
育児休暇中の所得保証も十分ではありません。特に男性が主な稼ぎ手である家庭では、経済的な理由から育児休暇の取得を躊躇する傾向があります。また、育児休暇後の保育サービスも十分に整備されておらず、公的な保育施設が不足しているため、育児と仕事の両立が難しい状況にあります。
終わりに
韓国の出生率が世界一低い理由には、経済的状況、不動産価格の高騰、社会文化的な状況、教育費の負担、仕事と育児の両立の難しさ、社会的プレッシャー、そして政策の不十分さが挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合い、韓国の出生率を極端に低くしているのです。
韓国政府もこの事態に対して危機感を募らせ、少子高齢化対策を打ち出していますが、根本的な解決には至っていません。今後、韓国がどのように立て直すのか注目していく必要があります。そして、同様の問題を抱える日本もこの事例から学び、子供を育てやすい国にしていくことが求められます。
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