中村天風著「運命を拓く」を要約。その1「生命は霊魂に宿る」

哲学

運命を拓く: 積極的な心で人生を変える

今回は、中村天風さんの著書『運命を開く』をご紹介します。本書は、心の持ち方ひとつで人生が大きく変わることを踏まえ、積極的な心で生きることを強く推奨しています。人生が思い通りにいかない、病気が治らずに辛いと感じる方に対し、中村天風さんは「心を積極的にせよ」と繰り返し主張します。

中村天風さんは30歳のとき、当時不治の病とされた肺結核を患い、心身ともに弱くなった経験から人生を深く考えるようになりました。欧米を渡り歩く中で、心が強く人生に影響を与えることを悟ったのです。

不安や病気に悩む私たちは、どのような心持ちで人生を生き抜けばよいのか。本書を通じて、その疑問を解消していきたいと思います。まず、中村天風さんの人物像について解説し、以下の3つのテーマに沿って進めていきます。

  1. 生命は霊魂に宿る
  2. 言葉が人生を左右する
  3. 運命には天命と宿命の2つがある

今回は、この3つのテーマのうち、最初の「生命は霊魂に宿る」を解説していきます。

運命を拓く 天風瞑想録 (講談社文庫) [ 中村 天風 ]

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中村天風さんの人物像を見ていきましょう

1876年7月30日、中村天風さんは八王子で生まれました。中学生になった天風さんは福岡県にある修猷館中学に入学しましたが、そこで大事件を起こしてしまいます。柔道部のエースとして活躍していた天風さんは、練習試合である高校の柔道部に圧勝しました。しかし、その高校の生徒が復讐のために天風さんを闇討ちしに来たのです。その生徒は包丁を持って飛びかかってきましたが、天風さんは逆にやり返し、その生徒を刺殺してしまいました。正当防衛として認められたものの、天風さんは学校を退学となりました。

その後、天風さんは玄洋社という政治団体に入り、諜報員として働くこととなります。主な活動場所は旧満州で、橋を破壊したり、人を斬ったり、敵に捉えられて命を奪われかけるなど、壮絶な人生を歩んできました。その後、帝国陸軍で翻訳の仕事をしていた天風さんは肺結核を患ってしまいます。この結核が天風さんの人生のターニングポイントとなったのです。

天風さんはオリバー・スウェット・マーデンの『いかにして希望を達し得るか』を読んで感銘を受け、病気のために弱くなった心を強くする方法を求めてアメリカへ渡る決意をしました。アメリカではコロンビア大学に入学し、自らの病の原因を解明するために自律神経系の研究を行いました。天風さんは精神的な教えを説いているイメージがありますが、実はしっかりとした医学の知識も持ち合わせていたのです。しかし、いくら医学を突き詰めても結核が治る気配はありませんでした。

こうして天風さんは1911年5月25日に日本への帰路につきますが、その途中経由地であったエジプトのアレキサンドリアにて、「東洋の聖人」と呼ばれるカリアッパという人に弟子入りします。そして、修行を重ねていく過程で、なんと天風さんの結核が完治したのです。

帰国後、記者として時には銀行の頭取として働いた天風さんは、突然自身の財産を処分し、1919年6月8日に統一哲医学会を創設します。そこでは心身統一法という教えを説き、いかに心の置き所が重要かを多くの人に教えていきます。1940年には統一哲医学会を天風会に改称し、ひたすら自身の教えを広めた天風さんは、1968年12月1日に亡くなりました。

以上が天風さんの人物像です。注目してほしいのは、結核を患ってから治るまでの過程です。医学的に見ても、自分で研究しても全く治すことができなかった結核が、カリアッパの下で修行を重ねることで完治したのです。この経験から、天風さんは「心の置き所ひとつで人生は激変する」と確信したのです。この考えは科学的とは言えませんが、科学的でなくても問題ないというのが天風さんのスタンスです。科学は万能の学問ではなく、多くのことは明確に証明できません。だからこそ、自分の中に確固たる信念を持ち、それを心の拠り所とする意識が必要なのです。もし信念がなければ、いつまでも不安な気持ちを抱えたまま人生を歩むことになります。

では早速、天風さんが持つ信念を本書から読み解いていきましょう。

霊魂に宿る

人間として完全な生き方をするには、心を積極的にしなければならないと天風さんは主張します。いかなる場合にも心を高徳で強く、正しく持たなければなりません。では、このような積極的な心を保つためには何が必要かを考えてみましょう。

現代の人々は、肉体そのものが自分であると考えています。しかし、人間というのは、その正体を突き詰めていくと何も見えない、何も感じない霊魂と勇気であると天風さんは断言します。この霊魂があるからこそ、肉体が活動することができるのです。つまり、霊魂が主体で肉体は道具に過ぎないというイメージですね。霊魂は、心で思ったことを良くも悪くも表現する存在です。この発想を正しく理解し、正しく応用した人のみが、命に限りない強さと喜び、安心と平和が与えられます。

肉体が生きているのは霊魂と勇気が肉体を活かしているからですが、この悟りを正しく理解できている人は極めて少ないのです。従って、私たちはわずかな不健康が肉体に生じるだけですぐに心配してしまいます。しかし、霊魂と勇気から送り込まれる力が多ければ、不健康な状態は直ちに健康状態へと回復するのです。

ここまでの話をまとめると、人間の生命に与えられた生きる力は肉体にあるのではなく、霊魂と気の中にあるということを正しくはっきり理解することが、人生を生きる上で重要だと言えます。はい、なかなかスピリチュアルな発想ですが、最初は受け止められなくても大丈夫です。実は、天風さんも最初から霊魂が人生を左右するという発想を理解できたわけではありません。しかし、自分自身の病を考えの基礎に置き、人生や生命について研究を進めるうちに、心の置き所がいかに重要かを理解できたと言います。それ以降、天風さんは自分でも驚くことに丈夫な体になり、思いもよらない長生きができたのです。

宇宙エネルギーと心の力: 天風さんが説く生命の真理

では、なぜ心の置き所が生命を強くも弱くもするのでしょうか。それは、生命に命を生かす力となる宇宙エネルギーを受け入れる機能があるからだと天風さんは主張します。宇宙エネルギーには建設と破壊の力が含まれており、その力のバランスが人の運や健康を左右すると考えています。例えば、建設の力が強ければ人は運が良くなり、健康になります。しかし、破壊の力が強くなれば人は運が悪くなり、不健康になるのです。そして、この宇宙エネルギーを生み出す源を天風さんは「宇宙霊」と呼びます。この宇宙霊は宗教で言うところの神のようなものです。

まとめると、宇宙霊から宇宙エネルギーが発され、宇宙エネルギーが私たちの肉体に流れ込み、肉体の活動を左右しているということです。そして、その宇宙エネルギーの良い部分を受け取るのも悪い部分を受け取るのも、霊魂の働き次第、つまり心の置き所一つで決まると考えられています。

天風さんは医学生時代に、空気、食物、水、日光が人間の肉体を生かす要素であると学びました。もちろん、これらの要素は肉体を動かすために必要ですが、それだけが原動力ではないのです。もし医学で習った通りであれば、肝臓が悪ければ肝臓の薬を、肺が悪ければ肺の薬を飲めば病は治るはずです。しかし、現実にはこの薬を飲めば治ると思われる場合でも、患者によっては少しの効果もないどころか、却って副作用に苦しむ場合もあります。天風さんがまだ真理を知らなかった頃には、自分の処置が間違っているのか、薬のデータが間違っているのかと悩みました。しかし、そうではなく、薬が適切に効かない原因は、あらゆる活動の原動力的要素が完全でないからなのです。ここでいう原動力的要素とは、心の置き所を意味しています。

生きがいのある人間として人生を生きたいと思うのであれば、人間の生きる命を豊富にすることが求められます。そして、その命の力を豊富にするには、いかなる場合にも心の態度を積極的に保つことが必要です。「積極的に保つ」というと難しく感じるかもしれませんが、考え方はシンプルです。要は、消極的な考え方を排除すればいいのです。心の態度を積極的にすることで、人生は好転します。強く思い込むことで、人生を力強く生きることができるのです。

この悟りは、人生の本当の幸福の扉を開く鍵のようなものです。誰もが幸福の方向を持って生まれ落ちますが、それを開く鍵を持っていなければ、中の宝は無いのと同じです。心の態度を積極的にすることで、人生の本当の幸福の方向は開かれます。この悟りを獲得すれば、健康も運命も何も特別な手段を取らなくても完全になるのが自然の作用であり、宇宙の真理なのです。

この悟りが心に満ちていれば、大した努力をしなくても、いつも元気いっぱいな状態で人生を生きていくことができます。今後、何が起きようとも、消極的な態度を捨て、常に高貴で強く、正しい積極的な態度を心に保たなければなりません。そうすれば、不思議なほどに元気が湧き出してきます。元気が出るということは、人間と宇宙霊が完全に結びついている証拠にもなります。

シンプルに言えば、元気になることが最も必要かつ大事なことなのです。

力の誦句

では、今回最後に、ここまでの話を踏まえた上で、ひとつお伝えしようと思います。ちなみに、「誦句」とはありがたいお言葉のことを意味しています。

天風さんは本書の中で複数の章句を伝授していますが、その章句を魂に刻む意識で読むようにと教えています。なぜなら、魂に刻む意識で誦句を読まないと、悟りを開くのは難しいからです。

では、今から「力の誦句」

力の誦句

「私は力だ。力の結晶だ。

何者にも打ち勝つ力の結晶だ。

だから何者にも負けないのだ。

病にも、運命にも、否、あらゆる全てのものに打ち勝つ力だ。

そうだ、強い強い力の結晶だ。」

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