
「日本の財政は危機的」「過去最大の予算」「借金1200兆円超」――
そんな報道が続くなか、高市内閣の経済ブレーン・永濱利廣氏はまったく異なる見方を示す。
日本の財政赤字はGDP比でG7最小水準。
問題は“需要不足”ではなく“供給力不足”だという。
設備投資減税、即時償却、エネルギー政策転換――
高市内閣の経済政策で本当に得をするのは誰なのか?
そして私たちの生活はどう変わるのか?
メディアでは語られない視点から読み解く。
① インフレと賃金の現状
- ― なぜ「賃上げしているのに苦しい」のか?
- ■ これまで起きていたこと
- ■ 本来の見通し(イラン情勢悪化前)
- ■ なぜイラン情勢が影響するのか?
- ― なぜ“財源なし減税”が大きな転換なのか?
- ■ これまでの政府の原則
- ■ 高市政権の転換点
- ― なぜ「借金1200兆円」は誤解を生むのか?
- ■ ① フロー(赤字)を見ると?
- ■ ② ストック(債務)を見ると?
- ■ ③ 金利が最大のバロメーター
- 永濱氏の主張
- ■ 海外の見方
- ■ 合成の誤謬とは?
- ■ 今はどうなっているか?
- ■ しかし問題は「分配」
- ■ 経済成長を決める「潜在成長率」とは?
- ■ 特に深刻なのは「設備」
- ■ 労働時間の問題
- ■ 即時償却とは?
- ■ 企業にとって何が起きる?
- ■ アベノミクスとの違い
- ■ なぜ今は供給重視なのか?
- ― なぜ「エネルギー」は成長戦略なのか?
- ■ なぜエネルギーが重要?
- ■ 原発再稼働・小型原発の狙い
- ■ ドイツのケース
- ■ 世界の潮流
- ― なぜ日本は伸びにくいのか?
- ■ なぜ差がつく?
- ■ 改善の余地(伸び代)
- ― なぜ実感が伴わないのか?
- ■ それでも生活が楽にならない理由
― なぜ「賃上げしているのに苦しい」のか?
■ まず大前提:「実質賃金」とは?
実質賃金 = 賃金上昇率 − 物価上昇率
たとえば:
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 給料が2%アップ | +2% |
| 物価が3%上昇 | −3% |
| 実質賃金 | −1%(実質的に目減り) |
つまり、給料が上がっても、物価の方が速く上がれば生活は苦しくなる。
■ これまで起きていたこと
- 物価上昇率:3%超
- 賃金上昇率:2%前半
→ 実質賃金はマイナス
特に問題だったのは:
- エネルギー価格上昇
- 食品価格上昇
- 輸入インフレ(円安要因)
つまり「国内が好景気で物価が上がった」のではなく、
海外要因によるコスト上昇型インフレだった。
■ 本来の見通し(イラン情勢悪化前)
- インフレ率:2%以下へ低下見込み
- 春闘賃上げ:2%超見込み
→ 実質賃金がプラスに転じる可能性
これは非常に重要で、
30年ぶりの“賃金主導の正常な成長軌道”に入る兆しだった。
■ なぜイラン情勢が影響するのか?
中東が不安定になると:
- 原油価格が上昇
- ガソリン価格上昇
- 物流コスト上昇
- あらゆる物価に波及
つまり、賃上げの効果を打ち消すリスクが再び出てきたということ。
② ガソリン暫定税率廃止の意味
― なぜ“財源なし減税”が大きな転換なのか?
■ そもそも暫定税率とは?
ガソリンには「本来の税率」に加え、
一時的措置として上乗せされた税率がある。
これが暫定税率。
廃止すれば:
- ガソリン価格が下がる
- 物流コスト低下
- 家計負担軽減
- インフレ抑制効果
つまり、物価対策+景気対策の両面効果。
■ これまでの政府の原則
日本の財政は長年:
減税するなら、どこかで増税 or 歳出削減
という「単年度均衡主義」。
これは家計簿的発想で、
- 今年の収入=今年の支出
- 赤字は悪
という考え方。
■ 高市政権の転換点
掲げているのは:
「責任ある積極財政」
つまり、
- 単年度で完全に帳尻を合わせなくてもよい
- 成長を優先し、後から税収増で回収
という成長先行型財政。
これは日本ではかなり大きな思想転換。
③ 実は日本の財政は改善している
― なぜ「借金1200兆円」は誤解を生むのか?
■ メディア報道の印象
- 予算122兆円(過去最大)
- 借金1200兆円超
→ 「もう破綻寸前」に見える
しかしここには重要なポイントがある。
■ ① フロー(赤字)を見ると?
財政赤字のGDP比は
→ G7で最も小さい水準(2年連続)
つまり、
今の年間赤字はかなり縮小している。
■ ② ストック(債務)を見ると?
● 総債務(借金だけ)
→ GDP比 約200%超
→ 世界でも高水準
● 純債務(資産差引後)
→ GDP比 約60%台
政府は:
- 外貨準備
- 年金資産
- 国有資産
なども保有している。
企業で言えば:
「借金だけ見るか、資産も含めて見るか」
で評価は大きく変わる。
■ ③ 金利が最大のバロメーター
もし本当に財政危機なら:
- 国債が売られる
- 金利が急騰する
しかし日本の長期金利は
→ G7最低水準(約2%台)
市場は「日本はまだ安全」と判断している。
④ なぜメディアは報じないのか?
永濱氏の主張
- 日本メディアは政権批判傾向が強い
- 危機を強調する方がニュースになる
- 改善報道は目立ちにくい
■ 海外の見方
例えば
Financial Times では
「日本の財政は30年で最も改善」
と評価。
つまり:
| 国内報道 | 海外報道 |
|---|---|
| 危機強調 | 改善評価 |
評価軸が違う。
⑤ 「合成の誤謬」:なぜ日本は30年停滞したのか?
■ 合成の誤謬とは?
個人にとって正しい行動が、全体では逆効果になる現象。
🏠 個人レベルでは合理的
- 将来不安(年金・雇用・増税)
- できるだけ節約
- 余剰資金は貯蓄やNISAへ
これは「正しい防衛行動」です。
🇯🇵 しかし国全体では…
みんなが節約すると:
- 消費が減る
- 企業の売上が減る
- 企業が投資・賃上げを控える
- 所得が増えない
- さらに不安が強まる
👉 負の循環
これがいわゆる「失われた30年」。
■ 今はどうなっているか?
- 名目GDP:約660兆円(過去最大水準)
- 企業利益:高水準
- 税収:過去最高
つまり、経済規模自体は拡大している。
■ しかし問題は「分配」
恩恵の中心は:
- 政府(税収増)
- 大企業(過去最高益)
一方で:
- 家計の実質所得は伸び悩み
- 中小企業はコスト増に苦しむ
👉 成長はしているが、家計に十分波及していない。
⑥ 高市政権の本質:供給力強化
■ 経済成長を決める「潜在成長率」とは?
潜在成長率 =
「インフレを起こさず持続的に成長できる力」
それは4つの要素で決まる:
| 要素 | 日本の現状 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 労働者数 | 減っていない | 女性・高齢者の参加増 |
| ② 労働時間 | 減少 | 働き方改革の影響 |
| ③ 設備投資 | 不足 | 最大の弱点 |
| ④ 生産性 | 低迷 | 設備老朽化が原因 |
■ 特に深刻なのは「設備」
日本は:
- G7で最も設備が古い
- 企業の投資が海外へ流出
古い設備では:
- 生産効率が悪い
- 高付加価値商品が作れない
- 賃金も上がりにくい
👉 設備更新=賃上げの前提条件
■ 労働時間の問題
働き方改革により:
- 残業規制強化
- 労働時間短縮
これは生活の質向上には有益ですが、
- 働きたい人も制限される
- 生産量が抑えられる
という副作用もある。
⑦ 政策の柱:即時償却
■ 即時償却とは?
通常:
- 1億円の設備投資
- 数年に分けて経費計上
即時償却なら:
投資した年に全額を経費にできる
■ 企業にとって何が起きる?
- 法人税負担がその年に大きく減る
- 投資インセンティブが強くなる
しかも:
👉 投資した企業だけが得をする
内部留保をため込むだけでは恩恵なし。
■ アベノミクスとの違い
| アベノミクス | 内のミクス |
|---|---|
| 法人税率引き下げ(全企業対象) | 投資企業のみ優遇 |
| 需要刺激型 | 供給強化型 |
| 金融緩和中心 | 実体投資中心 |
アベノミクスは「お金を回す」政策。
内のミクスは「生産力を上げる」政策。
⑧ 決定的な違い:時代背景
| 項目 | アベノミクス | 内のミクス |
|---|---|---|
| 当時の経済 | デフレ | インフレ |
| 問題 | 需要不足 | 供給不足 |
| 処方箋 | 金融緩和 | 設備投資・労働改革 |
■ なぜ今は供給重視なのか?
現在は:
- 需要はある(企業利益拡大)
- しかし供給力が弱い
- だから物価が上がりやすい
👉 需要をさらに刺激すると
インフレが加速するリスク。
だから:
「供給能力を高める」ことが優先
以下は⑨〜⑪を、経済全体のつながりが見える形で整理した解説です。
⑨ エネルギー政策
― なぜ「エネルギー」は成長戦略なのか?
経済の供給力を考えるとき、
実は最も重要なのが エネルギーコスト です。
■ なぜエネルギーが重要?
エネルギーは:
- 工場を動かす
- 物流を支える
- データセンターを稼働させる
- 家計の光熱費に直結する
つまり、すべての産業の土台。
エネルギー価格が高いと:
- 企業の利益が圧迫される
- 賃上げ余力が減る
- 海外移転が進む
👉 供給力そのものが弱くなる。
■ 原発再稼働・小型原発の狙い
政策の狙いは:
- 電力価格の安定
- 輸入依存の低下
- 自給率向上
- 為替・中東リスクの回避
日本はエネルギー自給率が低く、
原油・LNG価格が上がるとすぐ影響を受ける。
■ ドイツのケース
Germany は脱原発後、
- ロシア産ガス依存
- ウクライナ戦争で供給停止
- 電力価格高騰
- 産業競争力低下
結果として一時マイナス成長。
これは
「エネルギー政策は産業政策」
であることを示す例。
■ 世界の潮流
近年のキーワードは:
- エネルギー安全保障
- 国内回帰(リショアリング)
- 産業保護
つまり、
供給力を国内で確保する動き
が強まっている。
⑩ 潜在成長率の現状
― なぜ日本は伸びにくいのか?
■ 潜在成長率とは?
インフレを加速させずに持続可能な成長率。
現在:
| 国 | 潜在成長率 |
|---|---|
| 日本 | 0%台半ば |
| アメリカ | 1.8~2%台 |
約1.5ポイントの差。
■ なぜ差がつく?
① 設備投資
米国:
- IT投資
- 半導体
- AI関連
日本:
- 投資が慎重
- 老朽設備が多い
② 労働時間
働き方改革で:
- 総労働時間は減少
- 人口減でも労働者数は維持
しかし「量」は抑制気味。
③ 生産性
古い設備では:
- 同じ時間でも生産量が少ない
- 高付加価値商品が生まれにくい
👉 投資不足が生産性を抑えている。
■ 改善の余地(伸び代)
- 国内設備投資の増加
- 働きたい人が働ける制度設計
- デジタル・自動化推進
- エネルギーコスト安定
潜在成長率は「政策次第で動く」もの。
⑪ 賃金は実は上がっている
― なぜ実感が伴わないのか?
■ 事実
- 3年連続で5%超の賃上げ(春闘)
- 30年ぶりの高水準
これは歴史的変化。
■ それでも生活が楽にならない理由
① インフレが高すぎた
賃金 +5%
物価 +4%
→ 実質 +1%(小幅)
しかもエネルギー・食料中心なので
「体感インフレ」が強い。
② 労働時間の減少
総労働時間が減ると:
- 時給が上がっても
- 月収が増えにくい
③ 分配構造
- 大企業は大幅賃上げ
- 中小企業は限定的
経済全体の利益が
家計全体に均等に波及していない。
🔚 まとめ ―
これまで私たちが当たり前のように受け取ってきた「日本経済は危機的だ」というイメージとは、少し違う風景です。
日本は本当に財政破綻寸前なのか。
数字を丁寧に見れば、必ずしもそうとは言い切れない側面があります。
むしろ浮かび上がるのは、問題の本質が「お金が足りないこと」ではなく、
国内の供給力が十分に発揮されていないことだという視点です。
高市政権が掲げる政策は、需要をさらに刺激するのではなく、
- 国内設備投資を促すこと
- 生産性を高めること
- エネルギーを安定確保すること
といった「供給力そのものを底上げする」方向に軸足を置いています。
鍵となるのは、
- 国内への投資回帰
- エネルギー自給率の向上
- 成長の果実を家計へどう波及させるか
という構造改革です。
そして、もう一つ忘れてはならないのが――
私たちの“空気”そのものです。
長年続いた停滞の中で、
「どうせ日本はもう成長しない」
「財政は破綻寸前だ」
という悲観が社会に広がってきました。
しかし、過度な悲観は消費や投資を抑え、
それ自体が経済を冷やしてしまう。
つまり、
悲観が悲観を生む構造
こそが、最大のボトルネックなのかもしれません。
日本経済は本当に衰退の一本道なのか。
それとも、まだ伸びしろを秘めているのか。
答えは一つではありません。
だからこそ、数字と構造を冷静に見つめ直すことが、いま私たちに求められているのではないでしょうか。

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