自己啓発・SNSに潜む「意味があるようで意味がない言葉」の正体
SNSを眺めている時、こんな言葉を見かけたことはありませんか?
「宇宙の流れと自分の内側が共鳴すると、人生の本質的な変化が始まる」
「潜在意識を書き換えれば、現実世界はあなたの波動に合わせて変化する」
「真の成功とは、外側の評価ではなく魂の成長によって決まる」
一見すると、とても深そうに感じます。
「なんだか人生の本質を語っている気がする」
「自分にはまだ理解できない深い意味があるのかもしれない」
そう思ってしまう人も少なくありません。
しかし、よく考えてみると、
「具体的には何を言っているのだろう?」
「どうすればいいのか全く分からない」
「本当に正しいことなのか証拠がない」
というケースもあります。
実は心理学の研究では、人間は意味が存在しない文章にも、深い意味を感じてしまう傾向があることが分かっています。
今回は、現代社会に広がる「もっともらしい言葉」の正体と、私たちがなぜそれに惹きつけられてしまうのかを解説します。
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「嘘」と「ブルシット」は違う
この問題を理解するためには、哲学者ハリー・フランクファートが提唱した「ブルシット」という概念を知る必要があります。
ブルシットとは、日本語では「でたらめ」「たわごと」と訳されることがあります。
ただし、単なる嘘とは違います。
嘘つきは真実を知っている
嘘をつく人は、本当のことを知っています。
例えば、
「この商品には効果がない」
と本人が分かっているのに、
「絶対に効果があります」
と言う。
これは嘘です。
嘘をつく人は、少なくとも「真実とは何か」を意識しています。
ブルシットは真実に興味がない
一方でブルシットを発する人は、
「本当に正しいか?」
ということ自体に関心が薄い場合があります。
目的は、
「相手にすごそうと思わせる」
「自分を賢く見せる」
「注目を集める」
ことです。
つまり、内容よりも印象が重要になります。
現代ではSNSや自己啓発業界などで、このような言葉が大量に流れています。
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「疑似深遠ブルシット」とは何か?
特に研究者が注目したのが、
疑似深遠ブルシット(Pseudo-profound bullshit)
と呼ばれるものです。
これは、
「文章としては成立している」
「難しい単語が使われている」
「何となく深そう」
なのに、
「実際には意味がない」
という特徴があります。
例えば、
「意識の拡大は、存在の境界を超えた新たな調和を生み出す」
という文章。
文法的には間違っていません。
しかし、
「具体的に何を意味しているのか?」
と聞かれると説明が難しい。
このような文章が疑似深遠ブルシットです。
なぜ人間は意味のない言葉を「深い」と感じるのか?
研究では、人間が騙される理由として大きく2つの心理的仕組みが関係していると考えられています。
①反応バイアス
人間には、
「目の前の情報には意味があるはず」
と最初から受け入れようとする傾向があります。
例えば、本を読んでいて文章が難しい時、
「意味が分からない」
ではなく、
「自分の理解力が足りないのかもしれない」
と考えてしまうことがあります。
つまり、人間の脳は、
「これは重要な情報かもしれない」
という前提で処理を始めます。
これは普段の生活では便利な機能です。
誰かが話している時に、毎回、
「本当に存在するのか?」
「証拠は?」
と疑っていたら、人間関係は成り立ちません。
しかし、この能力が悪用されると、
「もっともらしいだけの言葉」
に弱くなります。
②検知エラー
もう一つは、
「おかしいものをおかしいと気づけない」
という問題です。
疑似深遠な文章は、完全なデタラメではありません。
そこには、
・成長
・意識
・可能性
・本質
・エネルギー
・変化
など、誰もが価値を感じやすい言葉が入っています。
そのため脳は、
「重要なことを言っている」
と錯覚します。
しかし実際には、単語同士が美しく並べられているだけの場合があります。
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「難しい=深い」ではない
人間は昔から、
「理解するのが難しいもの」
=
「価値が高いもの」
と判断しやすい傾向があります。
例えば、
難しい専門用語を使う人を見ると、
「この人は頭がいい」
と感じやすい。
しかし、
本当に優れた説明は、難しい内容を分かりやすく伝えます。
科学者の言葉でも、優れた人ほどシンプルに説明できます。
難しい言葉を使うことと、深い内容を持つことは別なのです。
自己啓発本が心に刺さる理由
自己啓発の言葉がすべて悪いわけではありません。
実際に人生を変える考え方もあります。
しかし注意すべきなのは、
「誰にでも当てはまる曖昧な言葉」
です。
例えば、
「あなたの可能性は無限大」
これは励ましとしては良い言葉です。
しかし、
「具体的に何を努力するのか」
までは示していません。
人はそこに自分自身の経験や願望を投影します。
つまり、
「自分に都合の良い意味」
を勝手に作り出すのです。
直感型の人ほど騙されやすい?
研究では、疑似深遠な文章を信じやすい人には特徴があることも示されています。
その一つが、
直感的思考を強く使う傾向
です。
直感は悪いものではありません。
経験を積んだ人の直感は非常に優れています。
しかし、
「最初の印象だけで判断する」
場合には危険があります。
例えば、
「この言葉、何となくすごい」
と思った瞬間に、
「本当に意味があるのか?」
を考えなくなる。
そこに落とし穴があります。
分析的思考が詐欺を見抜く
一方で分析的思考をする人は、
「待てよ、本当にそうなのか?」
と考えます。
例えば、
「成功者は全員、朝5時に起きている」
という言葉。
一見すると説得力があります。
しかし分析すると、
「朝5時に起きたから成功したのか?」
「成功した人が朝早く起きていただけでは?」
という疑問が出ます。
この一手間が、騙されにくさにつながります。
ブルシットに弱い人の特徴
研究では、疑似深遠な言葉を信じやすい傾向と、
・根拠の弱い情報を信じやすい
・極端な主張に惹かれやすい
・証拠より雰囲気を重視する
といった傾向には関連があることが示されています。
つまり問題は、
「頭が良いか悪いか」
ではありません。
情報を見る時の習慣の違いです。
騙されないための3つの方法
①具体的に説明できるか確認する
深そうな言葉を見たら、
「これは具体的に何を意味する?」
と考える。
説明できないなら注意が必要です。
②証拠があるかを見る
「科学的に証明された」
「成功者はみんな知っている」
という言葉には、
「誰が?」
「どんな研究?」
「どんなデータ?」
と確認する癖をつける。
③自分で意味を作りすぎない
人間は文章に意味を足す能力があります。
これは創造性でもあります。
しかし、
「自分が感動した」
と
「本当に正しい」
は別問題です。
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まとめ
現代社会では、SNSやネットによって大量の情報が流れています。
その中には、
「本当に価値ある知識」
もあれば、
「深そうに見えるだけの言葉」
もあります。
人間の脳は、意味を探すようにできています。
だからこそ、私たちは無意味なものにも意味を感じてしまいます。
大切なのは、
「何でも疑うこと」
ではありません。
新しい情報を受け入れる柔軟さと、
「本当にそうなのか?」
と考える冷静さ。
この両方を持つことです。
心を開くことは大切です。
しかし、開きっぱなしの心には、どんなものでも入ってきてしまいます。
現代を生きるための最大の知性は、
「もっともらしさ」と「本当の価値」を見分ける力
なのかもしれません。

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