【世界一幸福な国】フィンランドはなぜ自殺率が高いのか?

啓発

フィンランドは「世界で最も幸せな国」として知られています。美しい自然に恵まれ、のんびりとした生活を送る人々の姿は、まるで映画のワンシーンのようです。国連の調査でもその幸福度が高いことが明らかにされています。しかし、この幸福の国が直面している大きな問題があります。それは意外にも高い自殺率です。世界でも顕著なこの矛盾には、どのような背景があるのでしょうか?この記事では、フィンランドの自殺率の高さと、それが世界一幸せな国の評価とどのように共存しているのかを探ります。また、国際的な視点を持ちながら、環境が人間に与える影響と、より良い生活を送るための考察についても触れていきます。

フィンランド

フィンランドは北欧に位置し、スカンディナビア半島の東部にある国です。西側にはノルウェー、スウェーデンと隣接しており、人口は約550万人で、これは日本の北海道とほぼ同じです。フィンランドは「幸福の国」として広く知られています。その証拠に、国連が実施する世界幸福度調査では、フィンランドを含む北欧諸国が毎年上位にランクインしており、フィンランドはなんと6年連続で第1位に輝いています。対照的に、日本は2000年以降の23年間で47位と低迷しており、50位以内に入ったのは8年ぶりのことです。

国連がどのように幸福度を調査しているかについて説明しましょう。幸福度はGDP、困った時に頼れる人の有無、健康寿命、生活の自由度、他人に対する信頼度、そして腐敗の少なさという6つの項目で評価されています。日本はGDPや健康寿命で高評価を受けていますが、生活の自由度や他人に対する信頼度で評価が低下しているとされます。

北欧の生活について考えると、多くの人が経済的に豊かで、のんびりと自由に生活している様子を想像するかもしれません。生活支援も手厚いというイメージがあります。しかし、世界一幸福な国とされるフィンランドにも、意外な一面が存在します。

自殺率のが高い

フィンランドは「世界で最も幸せな国」として知られていながらも、その裏では自殺率の高さという意外な問題を抱えています。実際、フィンランドはEUの平均を超える自殺率を記録しており、世界の自殺率ランキングで10位に位置しています。さらに、同じ北欧の国々も似たような結果を示しています。例えば、幸福度が高いアイスランドとスウェーデンも、自殺率ではそれぞれ15位と16位にランクインしています。これらの国々の幸福度が高いにもかかわらず自殺率も高いという矛盾は、多くの疑問を投げかけます。

こうした状況を理解するためには、世界で最も自殺率が高いとされるグリーンランドの例が参考になります。グリーンランドはデンマークに属するが、その自殺率は異常に高いです。恐ろしいことに、住民の5人に1人が自殺未遂を経験しているという報告もあります。グリーンランドの大部分が氷に覆われており、極端な天候条件にさらされています。人口はわずか約5万人で、そのほとんどがイヌイットという先住民族です。

日誌用時間の短さ

この高い自殺率の背景には、特に季節的な日照時間の極端な偏りがあります。夏には一日中太陽が出ていることで、人々は適切に眠ることができず、その結果、不眠症やその他の睡眠障害に悩まされます。一方で冬には一日中太陽が出ないため、ビタミンDの不足や季節性情動障害(SAD)などの心理的な問題を引き起こすことがあります。これらの極端な条件は、人々の心理的健康に深刻な影響を及ぼし、結果として高い自殺率につながっているのです。

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アルコール中毒

グリーンランドだけでなく、フィンランドにおいても、2つ目の大きな自殺の原因としてアルコール中毒が挙げられます。寒い国であることから、体を温めるために強いアルコールを飲む習慣が根付いています。適度な飲酒は確かに血流を改善し、リラックス効果もあるため気分を良くすることができますが、フィンランドでは過度のアルコール摂取による依存が問題となっています。多くの場合、アルコール依存は身体や精神の健康を損なうだけでなく、失業や家庭崩壊を招き、結果的に困難な環境に人々を追い込んでいます。この問題の背景には、日照時間が少なく、ビタミンD不足や季節性情動障害などからくる心理的な問題が根底にあると考えられています。

さらに、人間の孤立化も深刻な問題です。これはグリーンランドに限った話ではなく、フィンランドや日本を含む多くの国で見られます。特に、都市化が進むにつれて、伝統的なコミュニティから離れて都市へ移住する若者が増え、その結果として過疎化が進みます。都市への集中は一見すると経済的な機会を増やす一方で、家族や地域社会からの孤立を促進し、精神的な孤独を深めることになります。これは結果的にメンタルヘルスの問題につながり、自殺率の高さに影響を与えていると考えられます。

幸福度調査

幸福度調査で重視される「人生選択の自由さ」という項目は、理論的には自由に生活できる場所を選べることが幸福に繋がるとされています。多くの人々が都市に集まり、そこで生活することによって、単純に考えれば孤立することは少なくなるはずです。しかし、都市生活の実態はそれほど単純ではありません。

都市における孤立化は、隣人が物理的に存在しないわけではなく、むしろ隣人はたくさんいます。しかし、これらの隣人たちはしばしば歴史や伝統を共有していない「他人」として存在します。たとえば、満員電車に1人で乗っているときを想像してみてください。あなたの周りには多くの人がいますが、その中であなたは孤立しているように感じるかもしれません。これは、人間がただ物理的に集まっているだけでは、真の共同体としての結びつきや連帯感を感じられないことを示しています。

このように、都市化が進むことで生じる「物理的な接近と心理的な距離」という現象は、人々の孤立感を増大させ、それがメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、結果的に自殺率に反映されることがあります。幸福度が高いとされる国々でも、このような都市の孤立が問題となり得ることを理解することは重要です。

エミール・デュルケームの『自殺論』

エミール・デュルケームの著作『自殺論』は、自殺が個々人の精神状態だけでなく、社会構造に根ざした現象であることを示した画期的な研究です。デュルケームによれば、自由や豊かさが増すことが、逆に自殺を促進する要因になり得るとしています。これは、幸福度が高い国々で自殺率も高いという矛盾を説明する一つの視点を提供します。

デュルケームは、「自己本意的自殺」という概念を提唱しました。これは、個人が社会から切り離され、生きる意味を見出せなくなった結果として発生する自殺タイプです。彼の理論では、人生に余裕ができた時、人々は生きる目的を見失いやすく、過剰な自由や孤立が心理的な危機を引き起こすと考えられています。

具体的には、狩猟民族のように生存のために日々奮闘する生活から、現代のように物資的に豊かで生存が保証された状況に変わると、生きることの目的が曖昧になりがちです。また、古い共同体や宗教が提供していた生きがいや目的が失われた現代では、人々は自己の存在意義を見出しにくくなっています。その結果、特に都市部や個人主義が強い社会では、「自己本意的自殺」が発生しやすいとデュルケームは指摘しています。

この理論は、フィンランドや他の幸福度が高い国々で見られる高い自殺率の理解にも貢献します。豊かで自由な社会であっても、人間が孤立し、共同体とのつながりを失ったとき、精神的な危機が生じやすくなるというのがデュルケームの見解です。

グリーンランドで見られる高い自殺率の背景には、伝統や故郷を捨てて都市への移住が影響しているとされています。この問題はグリーンランドだけの特異な現象ではなく、フィンランドや日本を含む多くの国々で共通する課題です。特に、「幸せの国」とされるフィンランドでの自殺率の高さを考える際、エミール・デュルケームの理論が有効な解釈を提供してくれます。彼の理論では、物質的に豊かで自由な社会ほど、個人が社会的な結びつきを失い、生きる意味を見失いやすいとされています。

フィンランドでは現在、うつ病や自殺対策が重要な課題となっています。全人口の7%以上がうつ病治療薬に頼る生活を送っており、うつ病患者のケアが需要に追いついていないのが現状です。日本もまた、新型コロナウイルスの流行がうつ病患者数の増加を招いており、これには企業の倒産や失業、そしてそれに伴う社会的孤立が大きな原因として挙げられています。

これらの国々では、経済的な豊かさや物理的な安全だけではなく、人々の精神的健康を支える社会的な支援とコミュニティの強化が急務となっています。特に都市部での孤独感の増大や社会的な結びつきの希薄化に対処するために、より具体的で包括的な対策が求められています。例えば、地域コミュニティの活性化やメンタルヘルスへの意識向上、アクセスしやすい心理的支援サービスの提供などが挙げられます。これにより、物質的な豊かさに加えて、精神的な充足をもたらす社会的な環境の構築が進むことが期待されます。

終わりに:幸福とは

今回のブログでは幸福度を追求するだけでは自殺問題を根本的に解決するわけではないということを言いたいわけです。日本もフィンランドも、高い自殺率に直面していますが、対策が十分でないのが現状です。悩み相談所などの支援施設も存在しますが、一人ひとりが自身のメンタル状態を俯瞰して把握することが何よりも重要です。

また、今回お話ししたように、環境が私たちの心理に与える影響は非常に大きいものです。これは、環境を選ぶことによって心理状態をある程度コントロールできるということでもあります。住む場所、働く環境、付き合う人々を選ぶことは勇気が必要ですが、自分の意思で変えることができるのも事実です。時には、毎日が辛いと感じたときには、仕事や人間関係を思い切って手放すことで、新たなものが得られることもあります。

生き延びることが当たり前の今、私たちは一般的な幸福論に惑わされず、自分にとって本当に幸せな生き方とは何かを考える必要があるのではないでしょうか。

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