なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?【加藤俊徳】

本要約

「なぜうまくいく人は『ひとり言』が多いのか?」というテーマで、今回は脳科学者であり加藤プラチナクリニックの院長でもある加藤俊徳さんの本をご紹介します。この本では、ひとり言のメリットについてわかりやすく解説されています。多くの人がひとり言に対してネガティブなイメージを抱きがちですが、著者はその効果を強くお勧めしています!

ペンシルベニア大学のダニエル・スウィング教授の実験では、ひとり言を使って探し物をすると、黙って探すよりも短時間で見つかることがわかりました。例えば、「鍵、鍵、どこにある?」とつぶやきながら探すことで、記憶や考えが整理されるのです。

加藤さんはこれまで1万人以上の脳をMRIで分析し、ひとり言が脳に与える影響を研究してきました。今回のブログでは、ひとり言のメリットとその効果を学んでいきましょう。

なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか? [ 加藤俊徳 ]

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脳が活発に働く

1つ目は、独り言を言うと脳が活発に働くという点です。これは非常に重要なポイントなので、最初にしっかりと説明します。まず、「ニルス法」と呼ばれる、脳の血流や酸素の使用量を計測する方法で調べてみると、人が口から単語や音声を発するだけで、脳が活発に働くことがわかりました。

実際に「あいうえお」の母音を発したときの脳の働きを調べたところ、「あ」と「お」を発言したときに血液量が明らかに上昇していることが確認されました。「ああ」「おお」と叫んでいると、頭に血が上ってくる感じがするのも納得できますね。対照的に「う」は少しだけ上昇し、「い」と「え」は血液量が下がることがわかりました。「下がるのは良くないんじゃ?」と思うかもしれませんが、それでいいんです。もしすべての言葉で血流が上がってしまったら、脳の血圧が上がりすぎて脳疲労を起こしやすくなるでしょう。呼吸のように脳はさまざまな言葉によって血流を調整し、バランスを取っているのです。

また、脳には思考系、記憶系、感情系、伝達系など8つの独自の機能を持つ領域があり、独り言を言うときにそれらすべての領域が使われていることもわかりました。つまり、独り言を言うことで思考力や記憶力が高まり、物事の理解が進んで感情が豊かになるということです。独り言は脳トレーニングとしても効果的なのですね。

余談ですが、脳の血流や酸素の使用量を測定できる「エフニルス法」は、著者が発見したもので、世界中の700以上の施設で利用されています。独り言を言うと脳が活発に働くことを、ぜひ覚えておいてください。

独り言のメリット

ここからは、独り言によって脳が活性化するメリットを3つに分けて説明していきます。

記憶力

1つ目は、独り言を言うことで記憶力が高まるということです。記憶力が高まる理由は、独り言を言って自分の声を聞くことで、脳の記憶を担当する領域が活性化されるからです。ウルバーハンプトン大学のアンディ・レーン教授が行った実験では、4つのグループを対象にオンラインゲームでの得点を比較しました。グループ1は独り言を言う、グループ2はできる自分をイメージする、グループ3はあらゆるケースを考える、そしてグループ4は何もしないという構成でしたが、最も高得点だったのは前向きな独り言をつぶやくグループでした。

「前向きな独り言」とは、「1番になりたい」「頑張るぞ」といった積極的な言葉です。2017年に開催された国際アルツハイマー病会議では、難聴の人は認知症になりやすいことが発表されました。まだ正確なメカニズムは解明されていませんが、難聴になると耳から脳へ伝わる情報が極端に少なくなり、徐々に脳の働きが弱くなると考えられています。

つまり、私たちの脳は想像以上に耳からの音で活性化されているわけです。正確に言うと、音よりも言語を聞くことによって脳が活性化されます。言語を聞き、それを理解するのは動物にはできない高度な知的行為ですからね。

ですので、独り言を積極的に言って自分の脳を活性化させましょう。周囲の反応に気を取られず、独り言を言うことで記憶力が高まるということを覚えておいてください。

理解力

独り言の2つ目のメリットは、理解力が高まることです。独り言を言うことで、脳の思考や物事を理解する領域が活性化されます。特に、自分が取り組んでいる問題に対して自問自答することが重要です。

たとえば、自分が「今の仕事が辛いから辞めたい」と言った場合、もう1人の自分が「どの部分が辛いの?」と聞き返すことになります。そして、「人間関係が大変かな」と答えたとしましょう。しかし、もう1人の自分が「人間関係は運だよね。急に悪くなることもあるし」と問い返す。そして、もし本当に人間関係が原因なら「フリーランスとして働くのがいいかもね」と考えが進んでいくわけです。

こうした自問自答のプロセスは、遊戯と闇遊戯のように自分で問いかけ、答えを見つけていくイメージです。自問自答のテーマは勉強中の内容、仕事のこと、自分の体調、最近気になっていることなど、何でもよいのです。

安川孝介さんの著書「最高の勉強法」には、人はアウトプットすることで記憶が定着し、何がわかっていて何がわかっていないかを理解できるようになると書かれています。そして、数あるアウトプットの中で、独り言は最も身近な方法です。

確かに、他人と会話をしながら答えを導くことも良い方法ですが、他の人と相談しても、自分にとっての幸せや大切なこと、したいことや就きたい職業は、自分にしかわかりません。自分の恥ずかしい部分や秘密をすべてさらけ出して相談できる相手は少ないですし、みんな忙しいものです。

仮に相談したとしても、相手が配慮して必要なアドバイスをストレートに言えないこともあるでしょう。大事なことは自分で気づくしかないのです。著者はそのため、自分自身との対話の重要性を指摘しています。

ここでは、独り言の2つ目のメリットとして、物事や自分自身への理解力が高まることを覚えておいてください。

目標を達成できる

独り言の3つ目のメリットは、目的を達成しやすくなることです。目的を達成しやすくなる理由は、自分の希望や目的を口に出すことで、脳をその目的に向かって働かせることができるからです。

「脳をその目的に向けて働かせる」とはどういうことか、ピンとこないかもしれませんが、たとえば「引っ越しをしたい」と思っていると、新築のマンションが目に入ってきたり、「筋肉をつけたい」と思っていると、近くのジムや他人の筋肉に目が向くことがありますよね。それと同じように、「必ず東大に合格する」「今年こそ絶対に良いパートナーを見つける」といった自分の目的を口に出して脳に記憶させておくことで、その目的に必要な情報にアンテナを張ることができるようになるのです。

頭の中で考えるだけでは、アウトプットしていないために目的を忘れやすくなります。そして、楽な方に流されてしまいやすいですよね。だからこそ、目的を忘れないために、日々自分の目的を思い出せるように紙に書いて見える場所に貼ったり、口に出してつぶやいたりするのが効果的です。

興味深いことに、著者によると、脳自体は最初から目的達成のために作られた器官だと言います。脳は目的達成のための器官なので、人生には何かしら目的があったほうが、脳はよりよく働きます。老人になって目的を失うと、脳があまり働かなくなるため、何かしらの目的を持っていたほうがよいのです。

ただし、どんなに高尚な目的があっても、欲望に流されてしまうことはあります。そこで、この本では「自分を律する言葉をつくる」ことが欲望に流されるのを防ぎ、正しい方向に進むために有効だと書かれています。

私の場合、モットーは「目の前の小さな得ではなく、将来の大きな得を取り続ける」です。面倒なことに直面したとき、この言葉を思い出すと、「だるいけど、できるだけ今すぐやろう」と体が動きやすくなります。

一旦ここまでをまとめると、独り言を言うことで記憶力が高まり、物事や自分自身への理解力や思考力も向上します。さらには、目的を達成しやすくなるというメリットがあるのです。デメリットといえば、周りから白い目で見られることくらいでしょう。日々自分の目的を言葉にして、目的を達成しやすくするということを覚えておいてください。

肯定的になる

ここまでは独り言のメリットについて説明してきましたが、ここからはどういう内容の独り言が特に効果的かについて説明します。

まず結論から言うと、ポジティブで肯定的な独り言がオススメです。ポジティブな独り言を言う理由は、誰でも「今日の私はいけてる」「頑張ってる」といった肯定的な言葉を聞くと気分が良くなり、気分が良くなると脳が活発に働いて良いアウトプットができるようになるからです。

「他人から言われた場合は効果があるけど、自分で自分に言うのとは違うのでは?」と思うかもしれませんが、自分自身に対してのポジティブな言葉も同じように効果があることがわかっています。

具体的には、「きっとできる」「うまくいく」「俺、頑張ってるな」といった言葉が該当します。もちろん、気分が良くなる言葉は人それぞれ違うので、自分が一番気分が良くなる言葉を見つけるのが良いでしょう。

著者の場合は、「やれるんじゃないか」「行けるんじゃないか」という言葉で自分を鼓舞することが多いようです。研究の世界では、黙々と研究をしている時は誰も注目してくれないし、褒めてもくれません。会社員や副業でも、誰も褒めてくれない孤独な環境だからこそ、自分で自分を褒めることが重要だと著者は指摘しています。

私の場合は、「よし」とつぶやくことが多いですね。この本を読んでいて気がつきましたが、物事が一区切りつくたびに「よし」と言っていることが多いです。ぜひ真似してみてくださいね。

ネガティブな独り言はダメ!

ネガティブな独り言を言うと脳の働きが悪くなります。これは先ほど説明したポジティブな独り言の真逆で、「自分は社会のゴミだ」「何もできない」といったネガティブな言葉を自分に投げかけると、脳がフリーズ状態になってしまうからです。脳がフリーズするというのは、ストレスや辛い状況が長く続くと何も感じなくなり、生き残るために防御反応として感情をシャットダウンすることです。この本によると、うつ病患者の脳はまさにそのような状態に陥っているそうです。

特に「どうせ自分は」という言葉は非常に危険で、著者によればこの言葉ほど自分を損なうものはありません。こういったマイナスな言葉を友人や親が発している場合には距離を置くことが推奨されますが、自分自身に対してネガティブな言葉を投げかけるのも可能な限り避けるべきです。自分から自分を攻撃すると、逃げ場がないため精神的に大きなダメージを受けてしまいます。

ただし、現実的にネガティブな感情を完全に避けるのは難しいことも理解できます。そのため、ネガティブなことを言ってしまったときには「なぜ、なぜ」と自問自答して解決の糸口を探るのが良いでしょう。

例えば、「なぜ自分はこんなにお金がないのか」と悩んだ場合、その原因を自分なりに見つけるようにします。家計簿アプリを使って家計を把握したり、家賃が高すぎるのか、収入が足りないのかなど、原因を特定し、それに対する解決策を考えましょう。そうすることで、絶望から少しずつ希望を見出し、「これをすれば改善できるのでは」「うまくいくのでは」と考えられるようになります。

重要なのは、ネガティブな独り言に流されず、それを糧にする態度を持つことです。ここでは、ネガティブな独り言が脳の働きを悪くすることと、その対処法を覚えておいてください。

発見ができる

大きな発見をしたければ、無意識の独り言に意識を向ける必要があります。無意識に口をついて出てくる独り言は、本音や知恵、感情の表れであることが多いです。著者も、カフェで無意識に呟いた独り言がヒントとなり、脳の機能を計測する技術を思いついたと述べています。

無意識の独り言はすぐに忘れてしまいがちですが、その背後には大切なメッセージが隠れているかもしれません。そこで著者は無意識の独り言をメモに書き留め、後でそれらの意味や背景を読み解くことをすすめています。ただ、これはやや難しいので、録音を活用するのも良い方法です。

たとえば、iPhoneの録音機能を使えば、自分の独り言を簡単に録音し、あとから聞き返すことができます。歩きながらの復習やアイデアの整理などを録音しておけば、後でそれを聞き返すことで「こんなことを言っていたのか」と気づくことができます。

また、他人の独り言も大事です。接客中のお客さんが思わず呟いた言葉には、本当の気持ちが詰まっていることが多いので、録音して聞き返せば発見や成長につながるでしょう。また、自分自身が無意識にNGワードを言ってしまっていることにも気づくかもしれません。

独り言は声を出そう

声を出さないと、感情や記憶が弱くなり、元気もなくなってしまう可能性があります。声を出さないと脳の感情や記憶を担当する領域の活動が弱まってしまうためです。

著者が普段あまり人と話さない人たちの脳を調べた結果、脳の活動が低下していて、特に感情や記憶に関わる部分が大きく衰えていることがわかりました。そのため、過去に感動した経験について質問されても、思い出すことが難しい人が多かったそうです。

最近ではスマホで調べることができ、無人レジの普及や結婚しない人の増加、孤独な老人が増えていることで、人と会話する機会が減っています。しかし、独り言ならいつでもできます。積極的に独り言を言うことで、脳の感情や記憶を担当する領域を活性化し、元気を取り戻しましょう。

独り言を言うシチュエーション

独り言をつぶやくのにおすすめのシチュエーションは、特に散歩中やドライブ中です。スマホを使える環境にいると、独り言をつぶやくよりもスマホをいじる方が楽しいため、独り言を言うのが難しくなりがちです。そのため、スマホやパソコンから距離を置ける散歩中やドライブ中が適しています。

また、仕事中に独り言を言っても問題ない職場であれば、仕事中に言うのも効果的です。他にも、テレビを見ながらツッコミを入れたり、ペットや植物に話しかけるのも良い方法です。

さらに、静かすぎる環境よりもカフェのように適度なざわめきがある場所の方が集中しやすいという特徴もあります。脳は微かな声が聞こえる環境で最も活性化しやすいため、勉強する際も図書館よりカフェのような場所が適していると言えます

まとめ

独り言は、脳を活性化させる効果的な手段です。独り言を言うと、1. 記憶力が高まり、2. 物事や自分自身への理解力が向上し、3. 目的を達成しやすくなるという3つのメリットがあります。特にポジティブで肯定的な独り言を言うことで、気分が良くなり、脳の働きも向上します。

一方、ネガティブな独り言は脳の働きを悪くし、「どうせ自分は」といった言葉が特に危険です。ネガティブな独り言を言ってしまいそうな時は「なぜ」と質問し、解決の糸口を見つけるのが良いでしょう。

無意識の独り言にも大きな発見が隠れていることがあります。無意識の独り言を逃さずメモや録音で記録し、その意味を分析することで、新たな視点や気づきを得られます。

さらに、声を出さないと感情や記憶力も低下してしまうため、積極的に独り言を活用しましょう。特に、散歩中やドライブ中、仕事中など、独り言に適したシチュエーションを見つけることが重要です。

最後に、私たちが学んだことをアウトプットすることで、記憶が定着し、自分が何を理解し、何を理解していないかがわかります。独り言は一番身近で手軽なアウトプット方法です。学んだことを声に出して復習することで、自分の知識を深める効果があります。

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