「ギルガメシュ叙事詩」とはなんでしょう?この言葉はかっこ良く聞こえるかもしれませんが、その内容を理解するのは少し複雑かもしれません。まず、「叙事詩」は神話や伝説、歴史上の出来事などを長編の詩形で描いた文学の一種を指します。つまり、「ギルガメシュ叙事詩」とは、ギルガメシュという英雄の冒険と挑戦を描いた長編の物語です。
このギルガメシュ叙事詩は、古代メソポタミア(現在のイラク周辺)で紀元前2000年頃に成立したとされており、それゆえに「最古の物語」とも呼ばれます。実はこの物語は世界的に有名で、多くの映画やアニメ、ゲームにインスピレーションを与えています。しかし、その歴史的な背景や地理的な位置から、日本ではあまり知られていないかもしれません。
このギルガメシュ叙事詩は、強大な力を持つ半神半人の王、ギルガメシュの生涯とその人間性の変遷を描いています。彼の冒険、友情、勇気、そして最終的には死と無常への理解についての深深な考察が含まれています。
このような文脈を理解すると、ギルガメシュ叙事詩は単なる古代の物語ではなく、人間の挑戦と成長、そして生と死についての普遍的な問いを投げかける一種の哲学的な文学作品であると言えます。私たちが日常的に目にする映画やアニメなどにおける多くのテーマやプロットは、このような古典から影響を受けているのです。
では、そんな「ギルガメッシュ叙事詩」をアニメやゲームのキャラクターを思い浮かべながら進めて行きましょう!
初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。より深くギルガメッシュ叙事詩を知りたい人はどうぞ!
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ギルガメシュ叙事詩の背景
「ギルガメシュ叙事詩」は、4000年以上前、現在のイラクの地に存在した古代メソポタミアの時代に書かれた世界最古の文学作品です。この物語は、人類が最初に作り出したとされる楔形文字を用いてシュメール人によって記述されました。シュメール語版だけでなく、アッカド語版など、異なる言語での翻訳も確認されています。これは、叙事詩が当時非常に広範囲にわたって愛されていたことを示しています。
しかし、オリジナルの叙事詩がそのまま現在まで残っているわけではありません。発見されたものの中で最も古いものは、紀元前2000年初頭のもので、それは学校で役人を養成するための教材として生徒たちによって作成されたものです。その後、イラク周辺で見つかった粘土版の断片をつなぎ合わせて解読する試みが行われ、これが「標準版」と呼ばれる12枚の粘土板の解読に繋がりました。その結果、物語の全体像が徐々に明らかになっていきました。
物語は、自然と文明、善と悪の対立、さらには不老不死といった普遍的なテーマを扱っています。主人公はギルガメッシュという名の半神半人の王で、彼は神々の力と人間の感情を併せ持ち、人間の全てを経験し、知恵を得て深淵を見つめるという描写がされています。彼以外にも、彼の親友であるエンキドゥ、森の番人であるフンババ、巨大な獣の具が卵、大洪水を生き延びて不老不死の実を得たウトナピシュティムなど、様々なキャラクターが登場します。
物語は主に5つのエピソードに分けることができます。第一はギルガメシュとエンキドゥの出会い、第二はフンババとの戦い、第三は女神イシュタルの誘惑、第四はエンキドゥの死とギルガメシュの喪失感、そして第五は不老不死の探求です。これら
のエピソードは12枚の粘土板に記録されており、12枚目の粘土板は他の11枚とは独立したストーリーを描いています。これらのエピソードを順に追っていくことで、叙事詩の全体像を理解することが可能です。
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ギルガメッシュとエンキドゥー フンババ討伐
物語は、力強いギルガメシュがその都市に壮麗な城壁を築き、その地を治める王としての舞台から始まります。ギルガメシュは、その勇気と力から英雄的な王として認知されていました。しかしながら、彼の振る舞いは時として国民を苦しめ、その為彼は横暴な王として恐れられていました。
この状況に絶望した国民たちは、神々に助けを求めました。その願いに応えて、神々は粘土から力強く、野生のような人間を創り出しました。その名はエンキドゥ、彼はギルガメシュと対抗できる存在として生まれました。エンキドゥはギルガメシュの横暴さを知り、それに対抗すべく、彼との直接対決を決意しました。
しかし、その戦いはなかなか決着がつかず、激しい闘いの末、二人は互いの力を認め合うことになります。そうして互いを尊敬する仲となり、ギルガメシュはエンキドゥとの出会いを通じて、以前の恐ろしい王から愛される英雄へと変貌を遂げました。エンキドゥもまた、最初の野獣のような姿から人間らしい姿へと変わり、彼らは常に一緒に行動し、様々な冒険を繰り広げました。
一つの冒険として、ギルガメシュはエンキドゥとともに美しい杉の木を手に入れるため、杉の森を支配する怪物フンババを討つことを提案します。なぜ杉の木を手に入れたいのかというと、古代メソポタミアでは、利用できる木材、特に美しい杉の木は非常に貴重な資源でした。しかし、フンババの存在が杉の木の入手を困難にしていました。フンババは森の守護者であり、人間にとっての脅威の象徴ともされていました。ギルガメシュは自然を征服し、フンババを討つことを決意しました。
彼らは通常45日かかる1500キロの距離をたった3日間で歩き、森の入口に到着します。最初にフンババの手下と戦い、彼らを倒すことで森の中へ進入することができました。美しい杉の木が立つその森で二人はフンババと対峙します。ギルガメシュとエンキドゥは力を結集し、策略を巧みに使いながらフンババとの壮絶な戦いを繰り広げます。神々の支援もあり、二人はついにフンババを倒すことに成功します。これはまさに人間が自然に勝利を収めた象徴的な瞬間でした。
その後、二人は目的の杉を切り、それを使って船を造ります。船には倒したフンババの頭と杉の木を積み、自分たちの国へと帰還します。しかし、フンババとの戦いが終わったばかりで、自国に戻ったところで新たな困難が二人を待ち構えていました。
イシュタルとエンキドゥーの死
ギルガメシュが彼の魅力的な容姿と彼の力強さで知られていました。これに惹かれたイシュタル、愛と美の女神、は自分の愛情をギルガメシュに対して明らかにします。しかし、驚くべきことに、彼女の告白はギルガメシュに拒否されます。これに怒りを感じたイシュタルは、他の神々に頼み、ギルガメシュを倒し、彼の国を滅ぼすために、グガランナと呼ばれる巨大な牛を地上へ送ります。
グガランナが地上に降りると、その力強い息吹により地面が割れ、人々がその穴に落ち、ユーフラテス川が深くえぐられるという大災害を引き起こします。この混乱の中、ギルガメシュとエンキドゥが立ち上がり、力を合わせてグガランナと戦います。彼らの団結した力は強く、結果としてグガランナを倒すことに成功します。これにより、国民は喜び、二人を英雄として称えます。
しかし、この平和な時期は長くは続きませんでした。杉の森の番人フンババとグガランナを倒した二人の力強さを見て、神々は彼らが一緒になると神に匹敵する力を持つことを恐れるようになります。そして神々は、彼らに罰を下すことを決定します。一つの神がエンキドゥの死を宣告し、他の神がこれを肯定します。これが、神々による死の宣告でした。
この宣告により、エンキドゥは重病に陥ります。彼は病の淵で、自分の運命に立ち向かうことのできない自分を悲しみます。その時、ギルガメシュが彼の元へ駆けつけ、彼らが一緒に過ごした日々、彼らが戦った敵たち、そして彼らが英雄として称えられるようになったことを思い出させます。ギルガメシュが見守る中、エンキドゥは静かに息を引き取ります。ギルガメシュは、エンキドゥが亡くなった後その体が腐るまで彼の側を離れません。
この出来事により、ギルガメシュは死という存在と直面し、その恐怖にとらわれます。友人を失ったギルガメシュがこれからどう生きていくのか、それが叙事詩ギルガメシュで最も重要なテーマとされています。
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永遠の命を求めて
友人エンキドゥの死とその後の埋葬を終えたギルガメシュは、死に対する恐怖を深く感じるようになりました。彼はこれを克服するため、永遠の命を探すための旅に出ることを決意します。その目的は、ウトナピシュティムという王に会い、彼がどのようにして永遠の命を手に入れたのかを尋ねることです。
ギルガメシュは長い旅の果てにウトナピシュティムと対面し、彼の口から聞いたのは、大洪水という人類を滅ぼす危機を逃れ、その結果として神から永遠の命を授けられたという話でした。つまり、ウトナピシュティム自身は永遠の命を得る方法を知らなかった。それは神からの贈り物だったのです。
ギルガメシュは一部落胆しましたが、結局は永遠の命を諦めることにします。しかし、彼が帰る直前、ウトナピシュティムから若返りの力があるとされる海底の植物について教えてもらいます。ギルガメシュはその植物を求めて海底へと潜ります。幸運にも彼はその植物を見つけ出すことができましたが、故郷に帰る途中で休憩している間に、蛇にその植物を盗まれてしまいます。
最終的に、ギルガメシュは不老不死を追求することを諦め、故郷へと帰還します。そして、彼の安全を守るため、城壁の建設に専念することにします。その後、ギルガメシュは神格化され、人々から神として崇められるようになります。彼は高位の神ではなく、より身近で、人々の個別の願いを叶える神として親しまれました。
その存在と物語は、ギルガメシュ叙事詩として後世に伝えられ、ギルガメシュは人々から愛され続けました。
ギルガメッシュ叙事詩とノアの方舟
19世紀に入ると、ギルガメシュ叙事詩が記された楔形文字の粘土板の解読が進められ始めます。その数はなんと2万数千点もあり、その解読作業はとても困難で地道なものでした。しかし、その地道な解読の結果、世界の歴史や常識を覆す発見がなされました。
その驚くべき発見とは、粘土板に記されていた物語の一部が、世界的に有名な伝説とほとんど同じ内容であったというものです。ギルガメシュ叙事詩には、先に述べた永遠の命を求める物語と同じく、大洪水がストーリーの中心となっています。この大洪水の話はユダヤ教やキリスト教の聖書にも記述されており、そこではノアの箱舟という物語として描かれています。
ノアの箱舟の物語によると、世界規模の大洪水により多くの生物が死滅しました。しかし主人公ノアは、神の指示に従い巨大な船を建造し、家族とさまざまな動物を乗せて大洪水を乗り越えました。洪水が終わると、生き残ったのは船に乗っていたノアの家族と動物たちだけでした。
ギルガメシュ叙事詩における大洪水の物語は、このノアの箱舟の物語とほぼ同じであり、主要な登場人物もノアに相当するウトナピシュティムとなっています。このことは、当時聖書が世界最古の書物だと考えられていた人々にとっては驚くべき事実でした。それはギルガメシュ叙事詩が旧約聖書に何らかの影響を与えた可能性を示していたからです。
さらに、ギルガメシュとエンキドゥの関係は、旧約聖書やギリシャ神話の友情物語に影響を与えたとも考えられています。2011年には新たな粘土板が発見され、その中には森の番人であった怪物フンババが実はエンキドゥの旧知の友であり、森の動物とともに音楽を楽しむ様子が描
かれていました。これは人間と自然が共存していることを示唆していると考えられています。
最古の物語と称されるギルガメシュ叙事詩は、世界各国の神話に大きな影響を与えています。そのため現在でも世界中でその研究が進行中であり、新たな発見が期待されています。
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終わりに
今日は古代の叙事詩、ギルガメシュについてご紹介しました。友情の価値、人間と自然との繋がり、死への恐怖と永遠の命への渇望など、この物語は時代を超えた普遍的なテーマを取り扱っています。これらのテーマは何千年もの時間を経て、様々な形で我々に受け継がれてきました。
興味深いことに、最近では新たな粘土板が発見されることもあり、既に知られている物語はまだ断片的で全体像が明らかになっていません。研究が進めば、新たな粘土板の発見により物語に新たな章が加えられる可能性もあります。このように、ギルガメシュ叙事詩はまだまだ未解明な部分を多く含んでおり、それゆえに神秘的で、世界中から注目を集めているのです。
次回の発見がどんな新たな展開をもたらすのか、とても楽しみですね。この古代の物語がこれからも私たちの心を魅了し、そして私たちから次の世代へと受け継がれていくことでしょう。これからもギルガメシュ叙事詩の旅を共にしていきましょう。それではまたよろしくお願いします!
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