「最近なんとなく気分が晴れない」
「やる気が出ない」
「過去の嫌な出来事ばかり思い出してしまう」
そんな経験はありませんか?
多くの人は、気分が落ち込む原因を仕事や人間関係、将来への不安など「心の問題」と考えます。しかし近年の心理学や神経科学の研究では、私たちが思っている以上に「身体の状態」が心に大きな影響を与えていることが分かってきました。
特に注目されているのが「姿勢」です。
実は、猫背になっているだけでネガティブな記憶が思い出されやすくなり、逆に背筋を伸ばすだけでポジティブな記憶にアクセスしやすくなるという驚くべき研究結果があります。
今回は、「姿勢とメンタルヘルスの関係」について分かりやすく解説します。
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気分が落ち込むと猫背になる?それとも猫背だから落ち込む?
私たちは昔から、
「元気がないから猫背になる」
と思ってきました。
確かに落ち込んでいる人を見ると、
- 肩が落ちている
- 視線が下を向いている
- 背中が丸まっている
ことが多いでしょう。
しかし近年の研究では、
「気分が姿勢を作るだけでなく、姿勢も気分を作る」
ということが分かってきています。
つまり、
- 落ち込む → 猫背になる
だけでなく、
- 猫背になる → 落ち込む
という逆方向の影響も存在するのです。
これは非常に重要な発見です。
なぜなら、気分を変えたければ「心」だけでなく「体」からもアプローチできることを意味するからです。
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スマホ時代に急増する「現代型猫背」
今の私たちは1日の大半を画面と向き合って過ごしています。
スマートフォンを見るときの姿勢を思い出してください。
- 首が前に出る
- 背中が丸くなる
- 肩が内側に入る
- 視線が下を向く
この状態が何時間も続きます。
研究者の中には、この姿勢を
「iNeck(アイネック)」
と呼ぶ人もいます。
現代人特有の前傾姿勢です。
多くの人は、
「肩こりや首こりの原因」
くらいにしか考えていません。
しかし実際には、
- エネルギー低下
- ストレス増加
- 気分の落ち込み
- 集中力低下
にも関係している可能性があるのです。
216人を対象に行われた興味深い実験
研究チームは216人の大学生を対象に実験を行いました。
参加者には2種類の姿勢を取ってもらいました。
猫背姿勢
- 背中を丸める
- 肩を落とす
- 視線を下げる
直立姿勢
- 背筋を伸ばす
- 胸を開く
- 少し上を見る
その状態で、
- 過去の失敗
- 無力感
- 絶望感
などのネガティブな記憶と、
- 成功体験
- 嬉しかった出来事
- 自信を感じた経験
などのポジティブな記憶を思い出してもらいました。
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86%が「猫背の方が嫌な記憶を思い出しやすい」
結果は非常に明確でした。
なんと、
86%の参加者が猫背の時の方がネガティブな記憶を思い出しやすい
と回答したのです。
猫背になった瞬間、
- 失敗した出来事
- 恥ずかしかった経験
- 傷ついた記憶
が自然と浮かびやすくなりました。
つまり姿勢は単なる身体の形ではなく、
脳の記憶検索システムにまで影響している
ことが示されたのです。
背筋を伸ばすとポジティブな記憶が蘇る
さらに驚くべきことに、
87%の参加者が直立姿勢の方がポジティブな記憶を思い出しやすい
と答えました。
背筋を伸ばした状態では、
- うまくいった経験
- 誰かに褒められた思い出
- 達成感を味わった出来事
などが思い出しやすくなったのです。
たった数秒姿勢を変えただけで、
脳がアクセスする記憶の種類まで変化してしまう。
これは非常に興味深い結果です。
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なぜ姿勢で記憶が変わるのか?
脳は意外にも身体から送られる情報を重視しています。
例えば、
笑顔を作るだけで気分が少し良くなることがあります。
これは脳が、
「笑顔を作っているということは楽しい状態なのだろう」
と判断するからです。
姿勢も同じです。
猫背になると脳は、
- 自信がない
- 元気がない
- 危険を感じている
というサインとして受け取ります。
一方で胸を張ると、
- 安全である
- 自信がある
- 活動的である
という情報として認識します。
脳は身体からの情報をもとに感情を調整しているのです。
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うつ傾向が強い人ほど姿勢が悪かった
研究では、参加者のうつ傾向についても調査しました。
その結果、
うつ傾向が低い人の猫背スコアは平均4.6だったのに対し、
うつ傾向が高い人は平均6.4でした。
つまり、
気分の落ち込みが強い人ほど日常的に猫背になっていた
のです。
もちろん猫背だけが原因ではありません。
しかし、
姿勢の悪さがうつ状態を維持する一因になっている可能性は十分考えられます。
恐ろしい「負のスパイラル」
ここで問題なのは悪循環です。
ステップ1
スマホやパソコンを見る
↓
ステップ2
猫背になる
↓
ステップ3
ネガティブな記憶が浮かびやすくなる
↓
ステップ4
気分が落ち込む
↓
ステップ5
エネルギーが低下する
↓
ステップ6
さらに猫背になる
↓
ステップ1へ戻る
このループが繰り返されます。
気づかないうちに心も体も下向きになってしまうのです。
姿勢が自律神経に与える影響
姿勢がメンタルに影響する理由は記憶だけではありません。
呼吸にも大きく関係しています。
猫背になると、
- 胸郭が圧迫される
- 肺が広がりにくい
- 呼吸が浅くなる
という状態になります。
すると交感神経が優位になり、
身体はストレス状態に近づきます。
一方で胸を開くと、
- 呼吸が深くなる
- 酸素摂取量が増える
- 心拍が安定する
ため、副交感神経が働きやすくなります。
つまり、
良い姿勢は自律神経を整える天然のメンタルケア
でもあるのです。
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気分が落ちたら「考える前に姿勢を変える」
私たちは落ち込むと、
「どうしてこんな気分なんだろう」
「もっと前向きにならなければ」
と頭の中で解決しようとします。
しかし研究が示しているのは、
まず体を変えた方が早いということです。
気分が沈んだ時は次のことを試してみてください。
1分間だけ胸を張る
- 背筋を伸ばす
- 肩を後ろへ引く
- 視線を少し上げる
- ゆっくり深呼吸する
たったこれだけです。
多くの人が経験したことがあると思いますが、落ち込んだ状態で空を見上げると少し気持ちが変わります。
それは気のせいではありません。
身体が脳へ送る情報が変わった結果なのです。
デスクワークの人におすすめの習慣
特にデスクワーク中心の人は次の習慣がおすすめです。
毎時間1回立ち上がる
30秒〜1分で十分です。
天井を見る
首を軽く伸ばします。
胸を開く
肩甲骨を寄せる意識です。
深呼吸を5回
ゆっくり息を吐くことを意識します。
これだけでも猫背による悪循環を断ち切りやすくなります。
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まとめ|姿勢は「心のリモコン」である
私たちは感情を脳だけの問題として考えがちです。
しかし実際には、
心と体は想像以上に密接につながっています。
今回の研究では、
- 86%の人が猫背でネガティブな記憶を思い出しやすかった
- 87%の人が良い姿勢でポジティブな記憶を思い出しやすかった
- うつ傾向が強い人ほど猫背が強かった
ことが示されました。
もちろん姿勢だけでうつ病が治るわけではありません。
しかし、姿勢は私たちが今すぐ変えられる数少ない要素の一つです。
もし今、気分が落ち込んでいたり、不安やストレスに飲み込まれそうになっているなら、まずはスマホから顔を上げてみてください。
胸を開き、背筋を伸ばし、ゆっくり深呼吸する。
その小さな動作が、あなたの脳に「大丈夫だ」というメッセージを送り、心を少しずつ前向きな方向へ導いてくれるかもしれません。
姿勢は単なる見た目ではありません。姿勢は、あなたの心の状態を変える強力なスイッチなのです。
参考文献
Peper, E., Lin, I.M., Harvey, R., & Perez, J. (2017). How Posture Affects Memory Recall and Mood. Biofeedback, 45(2), 36-41. DOI:10.5298/1081-5937-45.2.01.
さらに信頼性を高めるなら、
- 「Upright posture improves affect and fatigue in people with depressive symptoms」(2017)
- 「Embodied mood regulation: the impact of body posture on mood recovery, negative thoughts, and mood-congruent recall」(2017)

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