今回も中村天風さんの著書『運命を開く』をご紹介します。
不安や病気に悩む私たちは、どのような心持ちで人生を生き抜けばよいのでしょうか。本書を通じて、その疑問を解消していきたいと思います。
前回は「生命は霊魂に宿る」について解説しました。
今回は、
- 言葉が人生を左右する
- 運命には天命と宿命の2つがある
の2つについて解説していきます。
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言葉が人生を左右する
言葉が人生を左右する普通の人は、人生や生命に大きな影響を与えることはないだろうと思って、さほど大きな注意を払わない事柄があります。
それは言葉です。
天風さんはカリアッパに弟子入りした後、インドにあるカンチェンジュンガという山の麓で修業をしていました。そこでカリアッパは天風さんにこう聞きます。
「今日の調子はどうだい?」天風さんはそれに対して
「調子は良くないです」と答えました。
するとカリアッパは「そういうふうに答えて楽しいのか」と言いました。それに対して天風さんは「いや、楽しくはありません。けれども事実こういう病を持っていますから、目が覚めても快い気持ちではありません」と答えました。
人物像のところで紹介しましたが、この当時天風さんは結核を患っており、このような返答になるのは当然のことと思われます。
しかし、カリアッパは天風さんの返答に対し、こう意見をぶつけます。「お前は自分の使っている言葉によって自分の気持ちが駄目にされたり、あるいは非常に鼓舞されたりすることを考えていないのだな」と。
カリアッパはさらに続けます。「言葉は積極的に表現された時と消極的に表現された時で、実際の人間が受ける影響には大きな相違があるのだ。調子が悪いといえば愉快ではなくなる。しかし、調子がいいといえば何とも言えない心地よさを感じるはずだ。そして、その感じたものがそのまま潜在意識に影響して神経系統の生活機能にも同じように良くなったり悪くなったりするのではないか。
つまり、結局はお前の言葉の良し悪しがお前の生き方そのものになるのだ」と。
ここまでの言葉を聞くと、ネガティブな感覚を否定しているような気がしますが、そうではありません。痛いとか調子が悪いと思うことは誰にでもありますから、そういうことを思うこと自体は問題ありません。問題なのは表現方法です。
言葉が人生を左右する例
例えば、熱がある時に「熱があって不愉快だ」と表現するのはよくありません。熱があるのは事実ですから「熱がある」というのはいいのですが、その事実を不愉快と言う必要はありません。
では、ここで言葉が人の生き死にを左右した例をご紹介します。天風さんは日露戦争中にある拠点でこんな光景を目にします。拠点に伝令が馬で来て、報告と言った瞬間にどこからともなく弾が飛んできて伝令の太ももを打ち抜きました。
その伝令は「痛い、痛い」と叫びながら倒れました。次に違う伝令が馬に乗って来たのですが、その伝令はなんと胸を打たれ、すぐに運ばれていきました。その後、二人の伝令のことが気になった天風さんは病院へ行って看護兵に安否を確認します。すると看護兵は「一人の伝令は亡くなりました」と言いました。天風さんが「胸を打たれた方か」と尋ねると、看護兵は「いいえ、太ももを打たれた方です」と答えたのです。
なぜ太ももを打たれた伝令が亡くなったのかと天風さんが尋ねると、「彼は弱い兵隊でして、『痛い、痛い』と叫び続けて出血多量で亡くなりました」と言われたそうです。
では胸を打たれた方は、と天風さんが尋ねると、「あれは元気ですよ」という返答がありました。実際にその伝令を訪ね、「調子はどうだ」と聞いたところ、「これくらいのことでは死にませんよ」と力強く答えたのです。結果として、胸を撃たれた伝令は本当に回復しました。このように、言葉一つが人の運命を決定づけることもあるのです。
さらに、消極的な発言をする人は悪人であると天風さんは言います。なぜなら、消極的な発言をする人は悪意なく他人に迷惑をかけるからです。
消極的な言葉は自分自身に悪影響を与えるのみならず、周りにいる人々にも影響を与えます。従って、善良な言葉、勇気ある言葉、お互いの気持ちを傷つけない言葉、お互いに喜びを多く与える言葉を使うことが望ましいのです
。最初は意識して積極的な言葉を使うことになりますが、次第にそれは習慣となります。そして習慣になってしまえば、その後は大した努力をしなくても積極的な言葉を発するようになるのです。天風さんは以下のように断言します。
「お互いに勇気づける言葉、喜びを与えるといった積極的な言葉を使う人が多くなれば、この世はもっともっと美しい世界になる。一切を作り変える宇宙霊の力を生命の中に受け入れ、その人々が立派な人間の集まりをつくってこそ、国家社会は如実に改善されるのだ」と。
ここまでのお話を簡単にまとめると、言葉の力が肉体を良くも悪くも左右するから、いい言葉を意識して使いましょうね、ということです。この主張は納得できる人が多いと思いますが、普段から実践できている人は少ないと思います。僕も油断すればつい消極的な言葉を吐いてしまいますが、それは何のメリットもありません。むしろ苦しい状況の時こそ積極的な言葉を使って力強く生き抜いていきたいと感じました。
では、ここで言葉の章句を紹介しますので、ぜひ胸に刻んでほしいと思います。
言葉の章句
「私は今後、かりそめにも我が舌に悪を語らせません。
我が言葉に注意し、同時に今後私はもはや自分の境遇や仕事を消極的な言語や悲観的な言葉で批判するような言葉は使うまい
。終始楽観と歓喜と輝く希望と活力ある勇気と栄光に満ちた言葉をのみ使おう。
そして、宇宙霊の有する無限の力を我が生命に受け入れて、その無限の力で自分の人生を建設しよう。」
運命には天命と宿命の2つがある
実は運命には2種類あるのです。一つ目が天命です。天命とはどうあがいても絶対に変えられないことを意味しています。例えば、人として生まれたら鳥になりたいと思っても鳥になることは絶対にできません。二つ目が宿命です。宿命とは自分の力で切り開いていけることを意味しています。つまりここで言いたいのは、どうあがいても変えられないことはたくさんありますが、それが重要な要素である場合はごくわずかであるということです。
天命として決まっていることはものすごく極端な事柄ばかりです。僕たちは鳥になれないし、水の中で生活できないし、永遠に生きることもできません。しかし、そのような極端な事柄はそもそも変えようとすら思わないですよね。つまり、僕たちが悩んでいる事柄のほとんどが宿命であり、自分の力で切り開いていけるのです。
では、宿命を自分の力で切り開くためにどんなことを意識すればいいのか。それはこれまで何度も言ってきたように、積極的態度を保ち続けることです。宿命をどうしようもない運命と捉えてしまうのは、消極的な態度を持っているからと考えられています。
もちろん、人間ですから消極的な感情が湧いてくるのは仕方がないです。天風さん自身も悲しくなったり腹が立ったり苦しかったりする瞬間があると言います。大事なのはその消極的な感情を心から外そうと意識することなんです。感じるのがダメではなくて、外さないのがダメなのです。
消極的な態度を保ち続けることは、自ら宇宙霊の力を遠ざけてくだらぬ宿命を引き寄せる種をまいていることになります。
以上の話を踏まえた実践すべきことは、すべてのことを喜び、すべてのことに感謝するということです。おそらく、すべてを喜んだり感謝したりできるわけないという考えが浮かんだ方もいると思います。
ただ現状の暮らしを冷静に見つめれば、感謝することだらけであると気がつくはずです。昭和20年に生きていた人は、白いお米さえ容易に食べられませんでした。しかし今や、白いお米など誰でも簡単に食べることができます。だから僕たちは白いお米を食べる時に感謝することはありません。
つまりここで言いたいのは、感謝に値するものがないわけではなく、感謝に値するものに気がついていないだけということです。
極論をいえば、病になっても不幸になっても感謝しなさいと天風さんは主張します。この主張を聞いた多くの人は「何を馬鹿なことを言っているのだ」と思うでしょう。しかしここで必要なのは発想を転換させることです。
たとえば、何かしらの病を患った場合、宇宙霊がその人をもっと偉大にしたいから病を与えたと考えます。つまり、病を警告だと考えるのです。「お前の生き方は健康を大事にするような生き方ではない。第一に、お前の心の持ち方を考えてみなさい。消極的で不安な心を持っているじゃないか。そういう生き方をしていると、そんな具合に肉体に故障が起こる。」つまり裏を返せば、積極的な心を持てば肉体は回復するんだぞ、というふうに病を警告と考えてみることを天風さんは推奨しています。
何度も言うように、結局は何事もポジティブに捉えてみて、心を常に積極的な態度に保つことが本書の軸となるメッセージなんです。
人生を生きていれば誰でも一見不幸と思えることに遭遇することはありますし、失敗しない人はいませんし、怪我も病気もしない人もいません。大事なのはその事実の捉え方です。もちろん、一見不幸な事実をポジティブに捉えることは簡単ではないでしょう。
しかし、繰り返しポジティブに捉えてみることで、それは習慣化され、いつの間にか当たり前にできるようになります。結果として、宇宙霊の良いエネルギーを受け続けることができるのです。
では、ここまでの話を踏まえて、運命の章句を詠みますので、ぜひ胸に刻んでほしいと思います。
運命の章句
「人の心霊は人間の感謝と歓喜という感情でその通路を開かれると同時に、人の生命の上に良い影響を与えようと待ち構えている。
だから、常日頃から何事に対しても感謝と歓喜の感情をより多く持てば、宇宙霊の与えた最も最高のものを受け取ることができるのである。
故にどんなことがあっても私は喜びだ、感謝だ、笑だと心から楽しみ、健やかに生きることを誓おう。」
終わりに
これで運命を拓くの解説は以上になります。どんな状況でも心を積極的にすることで、人生をより良い方向に導いていける、そんな真理を熱く繰り返し語ってくれる本書に出会えて本当によかったと思います。僕はたくさん本を読んでいるから分かるのですが、本書は間違いなく魂を込めて書いた作品です。
なんとなくさっと書いた本からは魂を感じないのですが、本書からは魂の叫びが確実に聞こえてきました。また、今週のお話はスピリチュアルな部分も多く、すぐには受け入れられない人も多いと思います。
ただ、最初の方で説明したように、そもそも科学的に解説できない物事が世の中にはたくさんあります。したがって、スピリチュアルを科学的でないと全否定するのはちょっともったいないというか、違うんじゃないかなと僕は考えています。
ただ、よく見れば科学的に証明されているお話は所々に見られました。例えば、消極的な言葉を使うと健康を害するという話をしましたが、これは精神科医の加羽沢先生も同じような主張を『精神科医が教える病気を治す感情コントロール術』という本でされています。この加羽沢先生の本の解説動画もありますので、よろしければ参考として見てみてください。
今回お話しした内容は本書の一部分であり、まだまだ紹介できていないことがたくさんあります。また、本書は実際に読んでみることで感じられるエネルギーがあります。
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