「褒めて育てる」は危険!?脳科学者の見解

哲学

脳科学者が語る「褒めて育てる」危険性

「褒めて育てる」という教育のアプローチは、脳科学者たちから見ると一体どのような印象を持つのでしょうか。

現代では、子供を褒めて育てる教育が主流となり、それに疑問を感じながらも子供を厳しく叱ることや苦言を呈することに難しさを感じている親は少なくないようです。

しかし、「褒めすぎ」は本当に子供の成長を促すのか、それとも意図しない結果を招く危険性はないのか。これは、私たち全ての親や教育関係者が共有すべき重要な問題です。

このブログでは、脳科学者が指摘する「褒めて育てる」教育の危険性と、どのように褒めるべきかについての理想的な方法を探求していきたいと思います。

脳科学者が指摘する「褒めて育てる」教育の危険性

1990年代、コロンビア大学の研究者であるミラーとデュエックは、子供の挑戦心や態度が褒め方によってどう影響を受けるのかを調査するための興味深い実験を行いました。実験の対象は12歳から20歳までの約400人の子供たちで、彼らに知能テストを受けてもらった後、実際の点数は伏せて、全員に「あなたの新たな成績は100点満点中80点だった」と伝えました。

次に、子供たちは3つのグループに分けられ、各グループに対して以下のような異なるコメントが伝えられました。グループ1は、「本当に頭がいいね」と褒められた。グループ2は、「努力が見えたね」と褒められた。そして、グループ3には特にコメントはされませんでした。

その後、各グループの子供たちに対して、誰でも解けるような易しい問題と、より難易度の高い問題を選んでチャレンジするように求められました。そしてここで驚くべき結果が出ました。「頭がいいね」と褒められたグループ1の子供たちは、約60%が難しい問題を避け、易しい問題を選びました。一方、「努力が見えたね」と褒められたグループ2の子供たちは、約90%が難しい問題に挑戦しました。何もコメントされなかったグループ3では、難易度を選ぶ子供たちは半々でした。

さらに、難易度の高い問題での成績を全員の前で発表させたところ、「頭がいいね」と褒められたグループ1の子供たちの約40%が、実際の成績よりも良い成績を報告しました。つまり、グループ1の4割の子供たちは、自分をより良く見せるために嘘をついていたのです。一方、何も言われなかったグループ3では、嘘をついた子供の割合はわずか10%でした。

この実験結果は、「褒めて育てる」ことの可能な問題点を示しています。それは、子供たちが自分の評判を守るために、難しい問題を避け、時には嘘をつくことさえ厭わない、ということです。

さらに、ミラーとデュエックによると、「頭がいいね」と褒められた子供たちは、自分は努力しなくても良い成績を得られるべきだと信じ、周囲に頭がいいと思わせ続けなければならないと考え、自身の評価を維持するために嘘をつくことに抵抗を感じなくなる傾向があるという。

この実験結果を考えると、日本で「頭がいい」と褒められ続けて教育を受けてきた優秀な子供たちは、今、どのような立場にいるのでしょうか。それを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

結果ではなくプロセスを褒める:より効果的な自己評価と肯定の方法

記憶違いや捏造、そして結果の錯覚は、大人も子供も関係なく私たち全員に影響を及ぼします。これが示すのは、褒める際のアプローチには一定の工夫が求められるということです。なぜなら、結果を褒めることで、私たちは結果を簡単に生み出す方向へと思考を向けてしまう傾向にあるからです。我々人間は、結果には直接関与できないため、この現象が起こります。

例えば、オリンピックの選手がどれだけ練習しても、大会で自己ベストを更新することは極めて難しいです。同様に、どれだけ一生懸命に受験勉強をしたとしても、テストの結果がどのようになるかは予測できません。これらの事例から、私たちは努力には関与できますが、結果には直接影響を及ぼすことはできないことが理解できます。そのため、結果を褒めることはあまり好ましい行為ではないと言えます。

子供たちに対しても、この原則は同様に適用されます。結果は、子供の本質的な性質を反映しているわけではありません。むしろ、子供たちの努力や時間の使い方、そして創造的な工夫など、そのプロセスに焦点を当てて評価することが、チャレンジ精神を育て、望ましい結果を引き出すためのキーとなります。

私たち自身も、自己評価を行う際には、つい結果に目を向けがちですが、その結果を自分で褒めてしまうと、結果が出ないときに自己を偽装する傾向が生まれます。もし長期的に良い結果を続けて得たいのであれば、自己評価を行う際には努力やプロセスに焦点を当てることを強く推奨します。

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