
「もっと稼げば幸せになれる」
「高いものを買えば満たされる」
私たちは、いつの間にかそんな考えを当たり前のように信じています。
しかし実際には、高い買い物をした直後は嬉しくても、数ヶ月後には後悔したり、
逆にそれほどお金を使っていないのに「これは本当に買ってよかった」と感じるものもあります。
では、お金の使い方に“正解”はあるのでしょうか?
『サイコロジー・オブ・マネー』で世界的に知られる投資家・作家の
モーガン・ハウセルが本書
『アート・オブ・スペンディングマネー(1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?)』
で提示する答えは、とてもシンプルです。
お金の使い方に正解はない。
だが、賢い使い方は存在する。
本書では、
・なぜ「見栄のための消費」は幸福を奪うのか
・実用性のある支出が、なぜ満足を長続きさせるのか
・期待しすぎると、なぜ高いお金を払っても不幸になるのか
・お金で買える“最高のもの”とは何か
といったテーマを通じて、
お金と幸福の関係を、心理学と現実的な視点から解き明かしていきます。
特別な投資知識も、莫大な資産も必要ありません。
むしろ本書が問いかけてくるのは、
「あなたは何にお金を使ったとき、後悔しやすいのか」
「将来、どんな人生だったら満足できるのか」
という、ごく個人的で本質的な問いです。
この記事では、本書の内容をもとに
**一度きりの人生で後悔しないための“お金の使い方の原則”**を、
わかりやすく整理して解説していきます。
「お金はあるのに満たされない」
「使っているはずなのに、なぜか幸福感が続かない」
そんな違和感を感じたことがある方にこそ、
ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
「お金の使い方に正解はないが、後悔しにくい使い方はある」とはどういう意味か
モーガン・ハウセルが本書で最初に強調しているのは、
「この使い方が正しい」「この使い方が間違っている」という絶対的な基準は存在しないという点です。
例えば、
- 旅行にお金を使って幸せになる人
- 高級車にお金を使って満足する人
- 貯金が増えることで安心できる人
これらはすべて価値観が違うため、外から見て「正解・不正解」を判断することはできません。
一方で、人間の心理には共通点があります。
そのため、
- 後で「なんであれに使ったんだろう」と感じやすい使い方
- 長期的に満足が残りやすい使い方
には明確な傾向があると、ハウセルは指摘します。
本書が教えているのは
「正解の使い方」ではなく、
**「後悔を生みにくい使い方のパターン」**なのです。
お金は幸福そのものではなく「満足度を高める道具」
ハウセルは、お金をゴールとして扱う考え方を否定します。
なぜなら、お金そのものは感情を持たないからです。
例えば、
- 豪邸を買っても、家族関係が壊れていれば幸福ではない
- 高収入でも、時間がなく常に追われていれば満たされない
- 贅沢な生活でも、健康を失えば楽しめない
このように、幸福を決めているのは
人間関係・健康・自由・やりがいであり、
お金はそれらを支える「手段」に過ぎません。
お金を「幸福そのもの」と勘違いすると、
いくら稼いでも、いくら使っても、満足の基準が上がり続けてしまいます。
だからこそハウセルは、
「お金は人生の満足度を調整するツール」
という位置づけで考えることを勧めています。
見栄のためにお金を使わない理由
見栄の消費とは、
自分のためではなく、他人の評価を得るための支出です。
典型的なのは、
- 「すごいと思われたい」から高級ブランドを買う
- 「成功している人」に見られたいから高級車に乗る
- SNSで映えるからという理由で無理な旅行をする
こうした消費の問題点は、
満足の基準が自分の外側にあることです。
他人の評価はコントロールできませんし、
常に「もっと上」が存在します。
- 100万円の時計を買っても、300万円の時計をした人が現れる
- 流行の服を買っても、翌年には古くなる
- 一時的に注目されても、すぐ忘れられる
その結果、満足は短命で、
次の消費をし続けないと満たされない状態になります。
ハウセルがこれを「勝ち目のないゲーム」と呼ぶ理由は、
他人の評価を基準にした時点で、
自分が勝者になれる条件を手放してしまっているからです。
実用性を重視すると幸福が長続きする理由
実用性の高い支出とは、
使うたびに生活のストレスを減らしてくれるものです。
例えば、
- 座り心地の良い椅子
- 軽くて使いやすいバッグ
- 体に合った靴
- 毎日使う家電や寝具
これらは他人から褒められることは少ないかもしれません。
しかし、使うたびに
- 「楽だな」
- 「快適だな」
- 「これにしてよかったな」
という小さな満足を繰り返し与えてくれます。
心理学的にも、
派手な喜びはすぐ慣れるが、ストレスの軽減は慣れにくい
ことが分かっています。
見栄の消費は「一瞬の高揚感」、
実用性への投資は「長期的な快適さ」。
ハウセルは、
幸福を長く感じたいなら、
人に見せる価値よりも、自分の生活を楽にする価値を優先すべきだと述べています。
期待しすぎると満足できなくなる理由
ハウセルは、幸福を次の式で説明します。
幸福 = 現実 − 期待
期待が低ければ、
同じ体験でも「思ったより良かった」と感じやすくなります。
逆に、
- 高いお金を払った
- 一生に一度だと思っている
- 最高であるはずだと信じている
こうした状態で体験すると、
少しの欠点でも強い不満に変わります。
高級ホテルでのわずかな不手際、
話題のサービスでの些細な不便、
期待が高いほど「この値段でこれはない」という感情が生まれやすくなります。
問題は、
お金を多く使ったから期待が膨らむという点です。
結果として、
- お金を使ったのに満足できない
- 期待した自分を裏切られた気分になる
という逆転現象が起きます。
ハウセルは、
お金を使うときほど、
意識的に期待値を下げることが、満足度を守る行為だと説明しています。
新しい使い方を試す「実験」という考え方
多くの人は、
- 「無駄遣いが怖い」
- 「失敗したくない」
という理由で、
お金の使い方が固定化されがちです。
しかしハウセルは、
自分にとって価値のある使い方は、試さないと分からないと断言します。
ここで重要なのが「実験」という発想です。
- 完璧な正解を求めない
- 合わなければやめる前提で使う
- 経験そのものをデータとして扱う
例えば、
- 高めのジムに通ってみる
- 少し高い香水や服を試してみる
- 一人旅に出てみる
これらは成功でも失敗でも構いません。
合わなければ「自分には不要だ」と分かるだけでも、大きな収穫です。
ハウセルが重視しているのは、
何を買ったかではなく、何が自分に合わないと分かったか。
使ってみて違和感を覚えたら、
惰性で続けずにすぐやめる。
この「撤退の速さ」も、賢いお金の使い方の一部として語られています。
お金で「自由な時間」を買うとはどういうことか
― 貯蓄は選択肢を増やし、嫌な人生から抜け出す力になる ―
モーガン・ハウセルが「お金で買える最高のものは何か」と問われたときに挙げるのが、
**モノではなく「時間」と「選択の自由」**です。
多くの人は、
「お金がない=欲しいものが買えない状態」
だと思いがちですが、ハウセルはそれ以上に深刻な問題があると指摘します。
それは、
お金がないと、人生の選択肢が消えていくということです。
例えば、
- 嫌な職場でも辞められない
- 合わない人間関係から距離を取れない
- 体調が悪くても休めない
- やりたくない仕事を断れない
こうした状況は、「忙しい」や「大変」という言葉で片づけられがちですが、
本質的には選べない状態です。
貯蓄があるということは、
- 数ヶ月〜数年、収入がなくても生きられる
- 「NO」と言える余裕がある
- 環境を変える時間を買える
ということを意味します。
重要なのは、
この自由は「何億円もあって初めて得られるもの」ではないという点です。
数万円、数十万円、数百万円と貯まるたびに、
- 少し休める
- 少し距離を取れる
- 少し考える時間を持てる
という小さな自由のチケットが増えていきます。
ハウセルは、
お金がないことで人生を流され続ける状態を
**「一種の貧困」**とまで表現しています。
贅沢は「たまに」がベストな理由
― 毎日の贅沢は慣れて価値を失う ―
人間の脳には、
どんな刺激にも慣れてしまうという性質があります。
これは「快楽順応」と呼ばれる心理現象です。
どれだけ高級でも、
- 毎日高級ホテルに泊まれば当たり前になる
- 毎日高級レストランに行けば感動しなくなる
- 毎日ブランド品を身につけても特別感は消える
最初は感動だったものが、
やがて「普通」に変わってしまいます。
問題は、
贅沢が当たり前になると、
満足するために、さらに強い刺激が必要になることです。
その結果、
- お金を使っているのに幸福感が上がらない
- 支出は増えているのに満たされない
という状態に陥ります。
ハウセルが勧めているのは、
贅沢をやめることではありません。
むしろ、
- 普段は質素に
- たまに意識的に贅沢する
という使い分けです。
例えば、
- 月に1回だけ特別な外食をする
- 年に1回、少し背伸びした旅行をする
- 毎日は我慢して、週末だけ楽しむ
こうすることで、
贅沢は「日常」ではなく「ご褒美」になり、
毎回きちんと幸福を感じられます。
ハウセル自身がシンプルな生活を選んでいるのも、
感動を感じる力を失わないためだと語っています。
未来の後悔を減らす使い方を考える
― 「やっておけばよかった」を減らす投資 ―
この考え方は、
短期的な損得ではなく、
時間軸を未来に伸ばす視点です。
行動経済学者ダニエル・カーネマンが指摘しているように、
人は「得をした記憶」よりも
「やらなかった後悔」を長く引きずる傾向があります。
例えば、
- 若いうちに挑戦しなかった
- 健康を後回しにした
- 大切な人との時間を削った
- 本当はやりたかったことを先延ばしにした
こうした後悔は、
あとからお金を積んでも取り戻せません。
だからこそハウセルは、
- どんな人生を送りたいのか
- 将来、何を後悔しそうか
を一度言語化することを勧めています。
人によって正解はまったく違います。
- 学びにお金を使う人
- 経験(旅・挑戦)に使う人
- 安心(保険・投資)に使う人
重要なのは、
今の自分ではなく、未来の自分がどう感じるかを基準に考えることです。
目先の節約が、
将来の大きな後悔につながることもあります。
健康・人間関係・やりがいを守るために使う
― 幸せの中心はお金ではない ―
心理学者カール・ユングは、
人が幸せを感じる条件として次のような要素を挙げています。
- 心と体の健康
- 良好な人間関係
- 美や自然に触れる体験
- やりがいのある仕事
- 人生の浮き沈みに耐える考え方
このリストの中に、
お金そのものは登場しません。
なぜなら、お金は幸福の「材料」にはなっても、
幸福そのものではないからです。
例えば、
- 健康を失えば、どんな贅沢も楽しめない
- 人間関係が壊れれば、豪邸に住んでも孤独になる
- やりがいがなければ、自由な時間も虚無になる
だからこそハウセルは、
- 健康診断や良い食事
- 人との時間を守るための支出
- 心を動かす体験や学び
こうした支出を、
最もリターンの大きいお金の使い方だと位置づけています。
お金は主役ではなく、
人生の本当に大切なものを支える「裏方」。
この認識を持てるかどうかで、
お金との付き合い方は大きく変わっていきます。
一言まとめ
お金は「誇示」ではなく、「自由・快適・後悔の少ない人生」のために使え。

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