
2025年6月、韓国で新たな大統領にイ・ジェミオン氏が就任しました。
しかしその船出は順風満帆とはいかず、国を揺るがす「不正選挙疑惑」が再燃しています。
前大統領ユ・ニョル氏が戒厳令を発動し、憲法裁判所によって罷免されたという異例の政変の直後に行われた今回の大統領選。
疑惑を信じる人々と否定する政府・裁判所、そしてSNSで拡散される陰謀論――
この混乱の背後には、深まる政治的分断とメディア不信、そして民主主義そのものへの問いかけが潜んでいます。
なぜ韓国社会はここまで揺れているのか?
本記事では、不正選挙疑惑の構造と韓国社会の分断、そして日本にも通じる現代の情報リテラシーの課題について解説します。

🔍 不正選挙疑惑の構造とは?
今回の韓国大統領選(2025年)で浮上した不正選挙疑惑は、単なる「選挙ミス」や「誤解」ではなく、複数の要素が組み合わさった構造的な政治不信の現れです。以下の3点が特に重要なポイントです:
① 技術的な疑念:電子投票システムと偽の投票用紙
- 折り目のない投票用紙や印刷の異常がSNSで拡散され、「事前に偽造されたのではないか」と疑われました。
- 選挙管理委員会の電子システムに対する「ハッキングの可能性」や「脆弱性」が取り沙汰され、情報セキュリティへの信頼も揺らぎました。
- 実際には、投票用紙の事前印刷や電子管理は法に基づいて行われており合法であることが後に明らかになっています。
② 統計的異常の主張
- 特定政党(革新系)に対する事前投票の得票率が異常に高いという分析が、保守系の陣営から強く主張されました。
- しかし専門家や裁判所は、「政党支持者によって好まれる投票方法(早めの投票など)」が異なるため、統計的な偏りは不自然ではないと結論づけています。
③ 陰謀論と国際的干渉説
- 一部では、中国共産党や北朝鮮による「組織的な選挙介入」があったとする主張も見られました。
- 代表的な例が「99人の中国人スパイが逮捕され米軍基地に移送された」という噂ですが、これは完全な虚偽情報であり、選挙管理委員会と米軍が否定声明を出しています。
これらの主張はいずれも明確な証拠を欠いており、公的機関によって反論・否定されています。
しかしながら、SNSやYouTubeを通じて疑念が拡散し、「Stop the Steal(票を盗むな)」のようなアメリカ由来のフレーズまで使われる状況に。ここにこそ、単なる事実ではなく**感情と不信によって形作られた“構造的な不正選挙論”**があるのです。
このように、技術・統計・陰謀という複数のレイヤーが折り重なった「疑惑構造」は、政権交代後の国民的分断をより一層深める結果となっています。

🔍 社会の分断とエコチェンバー現象
韓国社会で不正選挙疑惑がここまで根強く信じられている背景には、政治的な分断と心理的な情報バイアスが密接に関わっています。
① 政治的分断の深刻化
韓国は保守と革新の対立が非常に激しい社会です。
- 2025年の世論調査では、国民全体の43%が不正選挙疑惑に「共感する」と回答。
- しかし保守系の政党支持者に限ればその割合は70%以上に跳ね上がり、逆に革新系(与党)の支持者では**「共感しない」が88%**を占めています。
つまり、同じ事象に対してまったく異なる現実認識が存在しており、事実の共有が成立していません。
② 確証バイアスとSNSの影響
このような対立の中で、人々は自分の信じたい情報だけを集め、反対の意見には耳をふさぐ「確証バイアス(confirmation bias)」に陥りやすくなります。
さらに、SNSやYouTubeなどのアルゴリズムはユーザーの好みに応じた情報を優先表示するため、似たような意見ばかりが目に入る「エコチェンバー現象」が加速。
これにより、
- 「自分と同じ意見を多く見る=自分の考えは正しい」
- 「反対意見は少数派か、嘘だ」
という誤解が強化されていきます。
③ 感情による動員と陰謀論の浸透
不正選挙疑惑は、単なる事実ではなく、「怒り」「不安」「被害者意識」といった強い感情を喚起します。
このような疑惑は、冷静な反論よりも感情的に訴える力が強く、拡散されやすいのが特徴です。
さらに、ディープフェイクなどのAI技術を悪用した**偽映像(候補者同士が殴り合う、囚人服姿など)**も登場し、疑惑や対立を煽る燃料となっています。
このように、現代社会では「情報が事実かどうか」よりも、「どんな感情を引き起こすか」「どの層に響くか」が重視されやすく、結果として分断と不信が制度そのものを脅かす状況を生み出しています。

🔍 ② イ・ジェミオン新大統領の今後の課題
2025年6月に就任したイ・ジェミオン大統領は、韓国政治の激しい分断と不信の中で政権運営をスタートしました。表面的には選挙で勝利したものの、社会には「不正選挙だったのではないか」という疑念が広がっており、政治的正統性に傷がある状態です。
では、彼の政権にはどのような課題があるのでしょうか。
① 国民の「信頼」をどう取り戻すか
イ・ジェミオン氏は「国民を一つにまとめる」と公言しましたが、実際には社会の分断は深刻化しています。
- 保守系の有権者の多くが彼の当選に「納得していない」状態。
- そのため、どんな政策を打ち出しても「どうせ不正選挙の政権だろ?」と正当に評価されにくいリスクがあります。
これは民主主義の根幹に関わる問題であり、政治の安定性と政策の実行力を著しく損なう要因になります。
② 国内政策:格差是正と福祉の強化
イ氏は貧しい家庭で育った経歴を背景に、経済格差の是正・社会的弱者の支援を最優先課題としています。
主な方針としては:
- 雇用創出と最低賃金の引き上げ
- 若年層・高齢者向けの住宅支援
- 公共医療・教育への投資
これらは多くの国民に歓迎される政策である一方、財源の確保や保守系企業の反発が予想され、スムーズな実行には障壁も多いと見られています。
③ 外交方針:実利重視だがリスクも
外交では「現実的な国益重視」の立場を掲げ、以下のようなスタンスを示しています:
- 米韓同盟は維持しつつ、日本・中国とも実用的に関係を築く
- 歴史問題ではこれまで日本に対して強硬姿勢を見せてきたが、選挙中は比較的穏健なトーンに変更
しかし、この「二枚舌」に対しては日本国内でも警戒感があり、
- 支持率が下がれば再び反日カードを切る可能性
- 対中国では「融和的すぎる」との批判も国内に存在
つまり、外交姿勢は「柔軟」でもあり「揺らぎやすい」とも言えます。
④ 与党優位の国会と今後の展望
イ・ジェミオン氏が所属する「共に民主党」は現在、国会で過半数を占めているため、法案の通過や政策実行には有利な状況です。
ただし、
- 不正選挙疑惑による世論の分断
- インターネットやYouTubeによる草の根レベルでの反発運動
が根強く続けば、政権の「レガティマシー(正統性)」が問われ続け、長期的には政治的安定を損なう恐れもあります。
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✅試される“統合のリーダーシップ”
イ・ジェミオン新大統領にとって最大の試練は、**政策そのものより「分断された国民の信頼をどう回復するか」**です。
選挙に勝ったとしても、国民の半分が信じていない政権には、持続的な力は宿りません。
どんなに優れた政策も、「不正の上にある」と見なされれば、人々の心には届かないのです。
その意味で、韓国の現状は私たち日本人にとっても無関係ではありません。「信じられる政治」とは何かを改めて考える必要がある時代が、私たちの目の前にも迫ってきています。

✅ 私たちが学ぶべきこと
韓国で続く不正選挙疑惑と政治的分断は、単なる一国の混乱ではありません。
SNSによる情報拡散、陰謀論の浸透、そして社会の“現実認識の分断”は、私たち日本人にも決して他人事とは言えない課題です。
選挙という民主主義の根幹が信じられなくなれば、どんな政策も、どんな指導者も正当に評価されなくなり、国家の土台そのものが揺らぎます。
私たち一人ひとりが今問われているのは、
- 感情的な言葉に流されず、
- SNSの「いいね」だけで真実を判断せず、
- 冷静に、確かな情報と向き合うメディアリテラシーと内省の力です。
今年、日本でも選挙が控えています。
誰かを非難する前に、自分自身が「どんな情報に触れ、何を信じているのか」を見つめ直すこと――
それが、混乱の時代を生きる私たちにできる最初の一歩なのかもしれません。
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