今回のブログでは、森永卓郎さんによって書かれた『書いてはいけない』という本の解説に焦点を当てます。本書は、日本のメディアが決して触れてはいけない、言わばタブーとされる題材に光を当てた作品です。特に、2023年に大きな話題となったジャニーズ事務所の問題、財務と心理を結びつけた独自の視点で語られる「財務心理教」、そして日本経済の深刻な問題を掘り下げる「日本経済の墜落の深層」について、それぞれ詳細に解説していきます。これらのテーマは、社会的にも大きな影響を与えているにも関わらず、メディアではあまり報じられていない重要な問題です。著者はこれらのタブーに対して、真実を明らかにしようという使命感を持ってこの本を書かれました。それでは、この興味深い本の内容を一緒に探っていきましょう。
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ジャニーズ問題
本書では、ジャニーズ事務所に関連する2つの重要なポイントを解説しています。まず、1つ目のポイントとして「無視された東京高裁の判決」について紹介します。2003年7月、東京高裁は、1999年10月から週刊文春が14週にわたって報じたジャニー喜多川氏による不適切な行為を追及したキャンペーン記事に対して、ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所が発行元の文藝春秋を名誉毀損で訴えた裁判の判決を下しました。
裁判所はジャニー氏の不適切な行為を認め、被害を受けた少年たちが、ステージの立ち位置を後ろにされたり、デビューできなくなることを恐れ、ジャニー氏の行為を拒絶することができず、また自分たちが被害を受けている事実を捜査機関や保護者に打ち明けることもできなかったと指摘しました。この判決は、ジャニーズ事務所も事実を認め、広く世間に知られるようになったジャニー氏による不適切な行為が、実は20年以上も前に判決で明らかにされていたものです。しかし、この判決は主要な新聞やテレビ局で適切に報道されませんでした。著者は、これがジャニーズ事務所の圧力があったからだと考えています。
報道のタブー
続いて、2つ目の重要なポイントとして、ジャニーズ問題と構造的に類似している他の2つのタブーについて触れます。2023年10月17日、TBSの報道特集でキャスターの村瀬賢介氏は、イギリスのBBCがジャニーズの不適切な行為を報じるまで、TBS内でこの問題を積極的に取材する動きが見られなかったことを明かしました。村瀬氏によれば、この長年にわたる沈黙の背後には、TBSとジャニーズ事務所との間の複雑な関係が存在し、それが報道に対する高いハードルとなっていたと指摘します。しかし、記者としての姿勢は、タブー視されるほど、権力者への追及心が強くなるべきだとも述べています。
にもかかわらず、この問題に対して十分な取材を行わなかったことは、記者としての能力不足や人権への鈍感さが原因であり、被害者に対して申し訳ないと感じていると村瀬氏は述べています。今後、TBSを含む報道機関は、利害関係が絡む有力な人物や組織の不正に対して、しっかりと取材し、報じる役割を果たすために取材力を磨いていく必要があるといっています。
さらに、著者はジャニーズ問題と同構造のタブーとして、財務省のカルト教団化や日本航空123便の墜落事故について触れ、これらの問題に関して報道が長年沈黙を続けている理由を問うています。これらの事件や問題における被害者の数は計り知れず、被害は今もなお拡大しているにも関わらず、報道部門はなぜこれらの問題に対して声を大にしてこなかったのか、と著者は問題提起しています。
日本航空123便墜落事故
日本航空123便墜落事故は、1985年8月12日に発生した航空事故で、日本の航空史上最悪の事故とされています。この事故で、乗員乗客520名のうち、生存者はわずか4名でした。
事故の原因は、以前に受けた尾部圧力隔壁の修理不備により、飛行中に圧力隔壁が破損し、それに伴う急減圧が起こったことにあります。この破損によって機体の尾部が損傷し、操縦系統の一部が使用不能となりました。パイロットは制御を取り戻そうと奮闘しましたが、最終的には山梨県の高見山に墜落しました。
日本航空123便墜落事故にまつわる疑惑や隠ぺいされた出来事というのがたびたび話題になります。事故発生以来、多くの憶測、説、そして陰謀論が存在します。これらは、公式の事故調査報告やメディア報道を超えた情報や、事故調査過程での矛盾点、未解決の出来事があり以下のようなことがあります。
- 事故原因に関する疑問: 公式には、尾部圧力隔壁の修復不備が事故の直接的な原因とされていますが、これに対して技術的な誤りや、より深刻な機体の設計欠陥が隠されているのではないかという疑問が持たれています。
- 救助活動の遅れ: 事故発生後、救助隊が墜落現場に到着するまでに時間がかかったこと、また、夜間での救助活動が行われなかったことについて、様々な憶測や批判があります。この遅れが生存者数に影響を与えたのではないかという指摘もあります。
- 政府や航空会社による情報の隠ぺい: 事故調査における政府や日本航空の対応について、事実の隠蔽や情報の操作があったとする主張があります。具体的には、事故原因の究明を妨げるような行動や、事故に関する重要な情報が公表されなかったというものです。
財務真理教とは
財務心理教とは、財務省が持つ、財政緊縮政策を神聖化するかのような信念体系を指します。ここで述べられている「財務心理教」は、経済成長を阻害しているとされる緊縮財政の継続を非難しています。著者は、この30年間、先進国の中で日本だけが経済成長を遂げていない主要な原因の一つとして、緊縮財政を挙げています。多くの経済学者が緊縮路線を批判する中、財務省が財政緊縮を止め、適切な財政出動、特に減税を行えば、経済は大きく成長し、結果的に税収の増加を通じて財政収支が改善されると主張しています。
にも関わらず、財務省は増税や社会保険料の負担増、さらには社会保障や公共事業の削減を続けています。著者はこの理由を、財務省が宗教的な信念を超えて、カルトに似た存在になっているからだと分析しています。カルトとは、教祖や幹部の幸福を最終目的とし、それを実現するために信者の生活を犠牲にする組織です。この考え方を財務省に適用し、財政緊縮という信念が国民の負担増や生活の質の低下を招いているにもかかわらず、その路線が継続されていると批判しています。
著者はさらに、財務省がカルトと同様に、「継続性」「組織性」「悪質性」の三つの要件を満たしていると指摘します。特に1980年代からの増税路線は、その継続性において、財務省の方針が変わらないことを示しています。国民負担率が高まり続け、2022年度には約47.5%に達していることが、
「継続性」「組織性」「悪質性」
この「継続性」の一例として挙げられています。著者は、このような状況が、財務省の政策がカルト的な信念に基づいていることを示していると批判しています。
「組織性」の問題に関して、著者は財務省が日本が世界最大の借金を抱えており、その結果として財政破綻が国民生活を破壊するという恐怖心を国民に植え付けることで、増税や社会保険の負担増を正当化していると指摘します。しかし、これは誤解に基づくものであると著者は主張しています。2020年度末の時点で、日本国は約1,661兆円の負債を抱えているものの、同時に約1,121兆円の資産も持っています。これを考慮すると、実際の日本政府が抱える借金は約540兆円となり、これは2020年度の名目GDPにほぼ等しい額で、先進国の中では普通の水準です。
さらに、著者は日本政府が通貨発行益を含めた巨大な財源を持っており、これを考慮すれば日本は実質的に借金ゼロの状況にあると主張します。にも関わらず、財務省が経済拡大と税収増を目指さず、増税や負担増に固執する理由には、財務省内での人事評価が大きく影響していると著者は言います。財務省では増税を成功と見なし、減税を失敗とする文化が根強く、増税を実現した官僚は高く評価され、その後の出世や豪華な天下り先が保証されるのに対し、財政出動による経済成長や税収増を達成しても、それが財務官僚にとっての評価ポイントにはならないと指摘します。
「悪質性」に触れると、1980年度の国民負担率は30.5%でしたが、2020年度にはこれが47.5%に上昇し、もし1980年度の国民負担率が維持されていれば、現在の国民負担は年間で約7兆円も少なかったことになります。著者は、統一協会が信者からのみ献金を集めるのに対し、財務省は国民全体から無理やり資金を徴収している点で、その悪質性はさらに重いと述べています。この分析は、財務省の政策がいかに国民にとって不利益であるか、そしてその政策の根底にある問題点を浮き彫りにしています。
財務心理教問題の解決策
著者は、財務心理教問題の解決策として、財務省に対する根本的な対策を提案しています。安倍晋三元総理が指摘したように、財務省の影響力は極めて強力で、自らの方針に従わない政権を転覆させる力を持っているとされています。この状況は、民主主義の根幹に関わる問題です。国民が選挙で選んだ代表が形成する政府が、実質的には財務省という選ばれていない機関の意向に左右される構造は、民主主義の原則に反すると指摘されています。
財務省が総理大臣や政策決定プロセスの上に立つような現状は、国民主権や民主的なガバナンスの観点から見ても、明らかに問題があります。国民に選ばれていない人々が国の最高権力を握り、政策を左右するというのは、民主主義の原則に反しています。
この問題に対する解決策として、著者は極端ながらも財務省に対する「解散命令」を出すことを提案しています。これは、財務省の現在の構造と機能を根本から見直し、その強大な権力を分散させることで、政策決定プロセスにおける民主主義的な透明性と責任を回復させるための措置と考えられています。財務省の再編や機能の分割を含む根本的な改革によって、政府内の権力バランスを正常化し、より公正で民主的な政策決定プロセスを実現することが目指されています。
日本経済の「墜落の深層」について
日本経済の「墜落の深層」についての解説では、バブル崩壊からその後に続く「逆バブル」現象と、その背景にある珍妙な経済理論に焦点を当てています。最初のポイントでは、1989年12月末に日経平均株価が史上最高値の3万8617円を記録した後、急速に下落し、バブル崩壊が明らかになった状況を振り返っています。通常、こうしたバブル崩壊は財政金融政策で緩和するべきですが、実際には逆の措置が取られました。
特に指摘されているのは、1990年3月27日に導入された総量規制です。これは不動産向け融資の伸び率を金融機関の総融資の伸び率以下に抑えるためのもので、バブル抑制策としては時すでに遅しで、むしろバブル崩壊後の経済の停滞を深める結果となりました。不動産価格、特に大都市の商業地価格はバブル解消を通り越して、いわば「逆バブル」の状況に陥りました。
日本銀行も同様に、バブル崩壊後に資金供給の面から見て少なくとも5年間金融引き締め政策を続けました。この時期の金融引き締めは、バブル崩壊後の経済をさらに冷え込ませる原因となったと指摘されています。大蔵省(現・財務省)と日本銀行がなぜこのような非常識とも言える引き締め政策を続けたのかについては、著者にも明確な理由は分からないとしています。可能性としては、引き締め病にかかっていたのか、アメリカからの圧力に屈したのかなどが考えられますが、はっきりとした証拠は見つかっていないとのことです。
この結果、1990年から2000年にかけての10年間で、6大都市圏の商業地の価格は約55%も暴落しました。そして、戦後日本経済を支えてきた株式の持ち合いシステムや不動産担保金融が崩壊に向かってしまったと結論付けています。この分析からは、バブル崩壊後の日本経済の「深層」にある問題点と、その長期にわたる影響について深く考察されています。
構造改革の誤り
著者は小泉純一郎元総理の構造改革について、アメリカの意向に沿った日本経済の改造計画だったと指摘しています。構造改革の核心にあるのが「珍妙な経済理論」で、その一例として郵政民営化が挙げられます。著者によれば、郵政民営化が日本経済の復活をもたらすという理論は、実際には逆効果だったことが明らかになっています。例えば、郵政民営化から20年が経過し、郵便料金の大幅な値上げやサービスの縮小(例:普通郵便の土曜配達廃止)が現実のものとなっています。
著者は、郵便局のビジネスモデルが郵便事業のコストを郵便貯金や簡易保険の収益で補填する構造にあったため、これらのサービスを分離する民営化は郵便事業を圧迫する結果になったと分析しています。民営化によって各事業間の資金の横流しができなくなり、郵便事業の経済的基盤が弱体化したのです。
さらに、小泉構造改革に関連するもう一つの「珍妙な経済理論」は、流通、建設、不動産の大手30社を不良債権処理の対象とすることで日本経済が復活するというものでした。しかし、これら大手30社の負債が全体の不良融資のわずか1/6に過ぎなかったため、その処理が経済全体に与える効果は限定的であることが予想されます。実際、これら企業の多くは貴重な都心部の不動産を保有しており、その資産が外資系ファンドなどに安価で売り払われることになりました。このプロセスは、日本が長年にわたって築いてきた企業資産が外資によって叩き売られる結果を招いたと著者は指摘しています。
これらの分析から、小泉構造改革がもたらした経済的影響には深刻な問題があったと著者は結論づけています。日本経済の長期停滞の背後には、こうした政策選択があったと指摘することで、単なる経済的な失策ではなく、より深い構造的な問題を浮き彫りにしています。
まとめ
このブログで取り上げた内容を簡潔にまとめてみましょう。まず、ジャニーズ事務所に関連する問題として、過去に無視されがちだった東京高裁の判決に触れ、ジャニーズ問題が持つより広範な社会構造的問題との類似点に光を当てました。次に、財務省の独自の信念体系である「財務心理教」について解説し、その問題点と解決策について考察しました。最後に、日本経済の長期にわたる停滞に関して、バブル崩壊後の「逆バブル」状況と小泉政権下での特異な経済政策に着目しました。
森永卓郎さんが著した『書いてはいけない』は、これらのテーマを深く掘り下げるとともに、日本社会の根底にある問題点を浮き彫りにしています。今回紹介した内容は本書のほんの一部に過ぎず、さらに多くの洞察と詳細な解説が本文中には詰まっています。ジャニーズ問題、財務心理教、そして日本経済の現状とその背後にある理由をより深く理解したい方には、本書の読書をお勧めします。
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