『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』を要約してみた

本要約

今回は長崎一期さんが書かれた『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』という本を解説します。今回の目次は以下の通りです。

  1. 寿司から学ぶ魚ビジネスの世界
  2. サバ缶から学ぶ水産加工の世界
  3. バイオ魚肉から学ぶこれからの魚ビジネスの世界

という順番で解説していきます。

近年、世界のセレブたちが続々と日本に来て魚を食べています。豊洲市場や築地市場には多くの外国人が訪れ、賑わっています。世界のセレブたちをはじめとする外国人は、なぜ日本に魚を食べに来るのでしょうか?それは一言で言うと、世界が魚の良さに気づいたからです。

本書は、魚ビジネスの世界にこれから足を踏み入れる方、もしくは教養として知識を身につけたいという方に向けて書かれました。モラル的かつ中立の立場から魚ビジネスについて解説してくれています。楽しく魚ビジネスの世界をのぞくことができるので、おすすめの本です。

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1. 寿司から学ぶ魚ビジネスの世界

この章では3つのポイント

  • 「なぜ日本の寿司は世界に広まったのか」
  • 「寿司はなぜ寿司なのか」
  • 「高級寿司と回転寿司は何が違うのか」というポイントについて解説していきます。

なぜ日本の寿司は世界に広まったのか

まず1つ目のポイント、「なぜ日本の寿司は世界に広まったのか」。寿司は日本で人気が高いです。味の良さや様々な魚を楽しめるという魅力があります。それが今や世界に伝わって各国に寿司店が立つ状況を生み出しています。ただ、世界各国の寿司は日本の寿司とは違う形をしているものも多く存在します。例えば、アメリカで開発されたカリフォルニアロールはとても有名ですよね。他にも、タイの屋台では甘く味付けされたカラフルな寿司が常温で販売されています。世界各地の寿司はとにかく個性豊かです。それらを寿司と呼ぶのかは一旦置いておきましょう。どんな形であれ、なぜ寿司は世界中に広まったのでしょうか。

2011年にキッコーマン国際食文化研究センターによって行われた企画展示「五大陸を美味しさと健康で結ぶ寿司ロード」の資料によれば、寿司が世界に広まった要因は次の4つにまとめられています。

  1. 健康に良いから
  2. 世界中で寿司の食材調達が容易だから
  3. 安価で美味しい寿司米が世界中に広まったから
  4. 回転寿司と寿司ロボットの影響

これらの4つです。これに加えて、著者はさらに「許容範囲の広さ」が寿司が世界に広まった要因ではないかと考えているそうです。例えば、サーモンの寿司は海外でも人気です。しかし、元々の日本には存在していませんでした。実はノルウェーが自国のサーモンを日本に売り込む手段として開発されたんです。寿司には決まりがなく、文化を許容して取り組みやすいことになっています。

寿司はなぜ寿司なのか

では続いて、2つ目のポイント「寿司はなぜ寿司なのか」。刺身と寿司は両方とも生魚が使われます。その違いを簡単に言うと、刺身は魚単体、寿司は魚プラスシャリです。単純明快な話に聞こえますが、実はこの点が魚と寿司の世界観の違いを作り出しています。

まず、刺身は小さく切られた魚の身をそのまま食べる料理です。シンプルで素材の味をそのまま楽しむことができます。魚の味にとって重要な要素となるのが鮮度です。鮮度は魚が取れてからどんどん落ちていきます。産地と流通先では魚の味に差が出てくるのも当然です。この差は手の凝った料理になる際にはそこまで気になりませんが、素材の味をそのまま味わう刺身ではかなり気になる要素になります。刺身は産地で食べた方が絶対に美味しいんです。

一方で、寿司は魚の肉を平たく切って酢飯であるシャリと合わせて食べます。シャリは酸性のため生臭さの成分を中和し、抑えてくれる役目を果たしています。そのため、産地と流通先での鮮度による味の差は刺身よりも少ないです。つまり、寿司は刺身と比べると流通先でも魚を美味しく食べられる方法だと言えます。また、取れてから時間が経つと鮮度が低下して生臭さは増えるものの、熟成して旨味成分が増えます。つまり、シャリは悪い部分を消し去って良い部分を残してくれるんです。寿司は産地よりむしろ流通先で食べることに適した料理と言えます。

「高級寿司と回転寿司は何が違うのか」

では続いて、3つ目のポイント「高級寿司と回転寿司は何が違うのか」。1食何万円もする高級なお寿司もあれば、1食1000円以内で済む回転寿司のような安い寿司もあります。同じ寿司でもここまで差が生じる理由は何でしょうか?

高級寿司の場合、まずネタはその日の入荷状況によって最高のネタが仕入れられます。それを職人が処理して、場合によっては何日もかけて最高の味を引き出します。シャリや海苔、わさびにもこだわるため、日常からは想像もできないくらいに高価な場合もあるくらいです。食材をその日その人の状況に合わせて最高の状態で提供してくれるのが高級寿司になります。すべてにおいて突き詰めているからこそ高い値段なんです。

一方で、回転寿司の場合はその日の入荷状況に極力左右されないように仕入れを行います。そして調理は機械やマニュアルを使って誰でもできるようにし、いつも同じ味を出せるようにします。なるべく同じ品質の寿司を広範囲に提供して、量でビジネスを成り立たせているのが回転寿司です。

2. サバ缶から学ぶ水産加工の世界

では続いて、2. サバ缶から学ぶ水産加工の世界。この章では3つのポイント

  • 「サバ缶ブームはなぜ起きたのか」、
  • 「サバ缶を作る意味」、
  • 「サバ缶の良し悪しは原料で決まる」について解説します。

サバ缶ブームはなぜ起きたのか

まず1つ目のポイント、「サバ缶ブームはなぜ起きたのか」。近年人気が高まったサバ缶ですが、実はサバ缶ブームはこれまでに3度あったと言われています。まず第一次サバ缶ブームと言われる現象が起きたのは2013年です。テレビでサバ缶がダイエットに良いと紹介されたことで需要が一気に高まりました。その人気は一時期売場からサバ缶が消えたほどです。この第一次サバ缶ブームをマーケティング的に分析するなら、女性という新たな顧客層の心を掴んだのがポイントでしょう。以前はどちらかというと酒のおつまみとして年配男性の食べ物となっていました。

そして第2次サバ缶ブームと言われるのが2016年から2018年です。2016年にはサバ缶の生産量がツナ缶を超えて魚缶ナンバーワンとなりました。2018年にはユーキャンの新語・流行語大賞で「サバ」が選ばれ、サバ缶の利便性の高さや健康効果が謳われました。

さらに、2020年からは第3次サバ缶ブームが起きます。コロナ禍で飲食店が自粛し、自宅に引きこもる需要が増え、比較的安価で調理も簡単なサバ缶の人気が確固たるものとなったんです。

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サバ缶を作る意味

では続いて、2つ目のポイント「サバ缶を作る意味」。サバは缶詰にしなくても食べられます。ではなぜ缶詰にするのでしょうか?魚を加工する意味は主に5つです。

  1. 保存できるようにする
  2. 流通しやすくする
  3. 使いやすくする
  4. 味を良くする
  5. 機能性を上げる

まず、サバは足の早い魚です。生を冷蔵で保管した場合、持つのはせいぜい3日ですが、缶詰にすれば少なくとも3年は保存が効きます。また、生のサバは冷蔵しないと流通が難しいですが、缶詰にすれば常温でも流通させることが可能です。そして缶詰の良いところと言えば、開封すればすぐに食べられることでしょう。調理をするにしても、入れるだけのことがほとんどで、あまり手間がかかりません。

味に関しては個人の好みもありますが、生のサバを何もつけずに食べるより、缶詰の方が食べやすい味になっていることがほとんどです。また、サバ缶は製造工程の中で加工されます。それによってタンパク質の消化がされやすくなったり、体に良いけど酸化しやすいとされる不飽和脂肪酸のEPAが減らなくなります。このように魚は加工することで性質が変わるとともに、良いことがたくさん生じるわけです。

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サバ缶の良し悪しは原料で決まる

では続いて、3つ目のポイント「サバ缶の良し悪しは原料で決まる」。サバ缶にはバリエーションがあり、中には1個3000円以上する高級なものもあります。一体何が違うのでしょうか?

サバ缶の製造方法はシンプルです。水煮缶に関しては、サバと塩水を入れて加熱するだけ。ということは、差を生む要因の大きい方はサバそのものにあると言えます。元々サバ缶は生産者からすると、鮮魚ではまともな値段がつかないサバに付加価値をつける意味合いでも製造されていました。ですので、100円台のサバ缶はどちらかと言えば価格重視で原料が選ばれます。一方で1缶3000円のサバ缶は一定の基準を設けて原料が仕入れられています。油のりが良く、鮮度の良いものだけに厳選されているんです。つまり、それなりの寿司屋で出されてもおかしくないサバを原料にしているということになります。

このように従来の安いサバ缶は、安いサバに少しでも価値をつけることを第一に作られ、高いサバ缶は良質なサバを使うことを第一に作られています。そのため、価格や品質の差が生まれるわけです。

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3. バイオ魚肉から学ぶこれからの魚ビジネスの世界

この章では2つのポイント「新しい生産技術:細胞培養」「細胞水産業がもたらす新しいシーフード」について解説していきます。

新しい生産技術:細胞培養

まず1つ目のポイント「新しい生産技術:細胞培養」。これから訪れる未来の魚ビジネスについて考える上で外せないのが、細胞培養による生産技術です。細胞培養とは簡単に言うと、生きた魚の細胞を培養して増やすことで、食べられる部分を得る方法です。

人は魚肉を獲得するために天然から魚を取ってくる漁業をしています。近年ではこれらに加えて、魚を育てた上で魚肉を獲得する養殖という方法も取られています。これらに対して、1匹の魚ではなく、魚の肉の部分だけを増やすという方法で魚肉が生成されるのが細胞培養です。このような魚肉の生産は2023年3月ですでに一部の魚種では技術が確立されてきました。アメリカやシンガポールのベンチャー企業を中心に試食会も開催されています。

ただ、現在課題となっているのはそのコストが高いことです。今は量産できる体制を確立するため、コスト低減のための技術開発が競い合っています。

細胞水産業がもたらす新しいシーフード

では続いて、2つ目のポイント「細胞水産業がもたらす新しいシーフード」。細胞水産業とも言えるバイオ魚肉の生産技術は、私たちの魚食をどのように変えていくのでしょうか?現段階での細胞水産業の可能性としては、ブランド魚肉の量産、希少魚種の魚肉生産、全く新しい魚肉の生産が考えられます。

これらが実現するなら、何も現実に存在する魚の味にする必要はありません。例えば、筋肉はヒメダイで脂はマグロという組み合わせも出てくるかもしれません。このような組み合わせは無限に考えられます。もしかしたら、その中に自然界の魚肉よりも人が美味しいと感じられるものが出てくるかもしれません。

まとめ

今回は

  1. 寿司から学ぶ魚ビジネスの世界
  2. サバ缶から学ぶ水産加工の世界
  3. バイオ魚肉から学ぶこれからの魚ビジネスの世界

について解説しました。

今回紹介した本『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですので、ぜひ読んでみてください。

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