【要約】運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」

本要約
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今回は、作家の橘玲さんと行動遺伝学者の安藤寿康さんによる対談本「運は遺伝する」を解説します。この本は、一言で言うと「遺伝が私たちに与える影響の大きさ」を教えてくれる内容です。

私たちは子供の頃、「努力すれば何にでもなれる」「頑張ればなんとかなる」と言われて育ってきました。しかし、大人になると「何かおかしい」と感じる瞬間が増えてきます。例えば、一生懸命勉強しているのに、全然勉強していない人にテストで負けたり、自分よりも練習していない人がサッカーや歌で上手かったり。または、同じことをしているのに圧倒的に成果を上げる人とそうでない人がいることに気づきます。

最新の行動遺伝学によると、身長や顔立ち、運動神経、音楽のセンス、知能だけでなく、「頑張れるかどうか」や事故、犯罪、肥満、友人関係、外見、病気、さらにはモテ運までもが遺伝によって影響を受けることが分かってきています。

もし遺伝がこれほど大きな影響を与えるなら、努力する意味はあるのでしょうか。この本では、そんな残酷な現実の中で、豊かに生きる方法を学ぶことができます。ぜひ最後までお読みいただき、遺伝が私たちに与える影響の大きさについて理解を深めてください。

運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710 710) [ 橘 玲 ]

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遺伝が人生の全てに影響を及ぼしている

1つ目のポイントは、遺伝が人生の全てに影響を及ぼしているということです。行動遺伝学では、人間の特徴は「遺伝」「共有環境」「非共有環境」の3つの要素で形成されると考えられています。

まずは、遺伝の影響について説明しましょう。結論から言うと、性格や知能など、私たちのあらゆる特徴の30%から60%は遺伝の影響を受けています。例えば、アメリカの政治学者チャールズ・マレイが2020年に出版した「ヒューマン・ダイバーシティー」によると、認知能力の55%、学歴の50%、やる気の57%、アルコール依存の44%が遺伝による影響だとされています。

さらに、神経質さ、勤勉性、事故、犯罪、肥満、友人関係、外見、病気、モテ運、お金の問題、離婚までもが遺伝による影響を受けることが分かっています。例えば、事故は慎重さの欠如が原因で起こることが多く、これも遺伝の影響が考えられます。離婚についても、26%は遺伝で説明できるとされています。

こうしたことを考えると、アルコール依存症や借金をしてしまう人を責めることにはあまり意味がないかもしれません。遺伝が全てに影響を及ぼすとはいえ、その割合は30%から60%程度で、残りの環境要因も重要です。例えば、アルコール依存症の場合、遺伝の影響が44%でも、残りの56%の環境が良ければ依存症にならない可能性があります。

つまり、遺伝だけで全てが決まるわけではありませんが、全てのことは少なからず遺伝の影響を受けているということです。まずは、性格や病気、能力など、人生のあらゆる側面に遺伝が影響していることを理解しておきましょう。

環境が私たちに与える影響

次に、環境が私たちに与える影響について説明します。環境には「共有環境」と「非共有環境」の2つがあります。

共有環境とは、親や兄弟と一緒に過ごす環境のことです。例えば、親からのしつけ、子供への本の読み聞かせ、親からの教育や子育てがこれに当たります。つまり、親と共有する経験のことです。

非共有環境とは、家族以外の友達や異性、自分1人で過ごす環境のことを指します。例えば、どんな友達と付き合うか、1人で本を読んだり山を登ったり、異性と付き合ったりする経験がこれに含まれます。つまり、親以外の友達や彼女など他人と共有する経験のことです。

では、面白い点を紹介します。親と一緒に過ごす共有環境は、私たちに与える影響が0%から20%程度しかありません。それに対して、友達や異性、自分1人で過ごす非共有環境は、20%から60%の大きな影響を与えています。

つまり、親と一緒に過ごす時間よりも、友達や異性、自分1人で過ごす時間の方が影響が大きいのです。例えば、同じ家庭で育ち、同じ食事をし、同じ学校に通っている双子であっても、性格や考え方が違ってくるのは、付き合う友達や異性などの非共有環境が違うからです。

ちなみに、やる気に関しては、遺伝が約57%、友達や異性、自分1人で過ごす環境が43%、家族と過ごす環境が0%の影響を与えています。つまり、親が「勉強しろ」と言っても、子供のやる気に対する影響はほぼないということです。

意外ですが、親の育て方が子供に与える影響は小さく、むしろ生まれつきの性格や友達の方が影響を与えるのです。ただし、アルコール依存症などは、親と一緒に過ごす共有環境が19%も影響を与えていることもあります。遺伝によって影響を受ける度合いは、状況によって異なります。

ですから、子育てが意味がないと言っているわけでは決してありません。ここでは、家族と過ごす環境よりも、友達と過ごす環境の方が自分に与える影響が大きいということを覚えておいてください。

時間が経つにつれて遺伝の影響は大きくなる

ここまで、私たちの特徴の約30%から60%は遺伝の影響を受けると説明してきましたが、生まれたばかりの時からすぐにこれらの影響が強く現れるわけではありません。

特に幼少期は遺伝の影響が少なく、年齢が上がるにつれて徐々に遺伝の影響が大きくなっていきます。例えば、遺伝的に毛深かったり薄毛になりやすかったとしても、子供の頃からその特徴が現れるわけではありません。それと同じように、どんな遺伝的な素質があっても幼少期にはその影響を受けにくいのです。

そのため、幼少期には教育熱心な親の影響で一生懸命勉強して良い学校に入ることができたり、毎日スポーツをしたりピアノを習うことで周りの人よりも活躍することができます。しかし、中高生くらいになると遺伝の影響が顕著に現れ始めます。この時期になると、遺伝的な素質があるかないかの方が、ただ努力することよりも大きな影響を持つようになります。

最終的には、素質がない人がいくら努力しても、素質がある人に勝てなくなってしまうことがあるのです。例えば、中高生の頃に勉強についていけなくなる生徒が出てくるのは、この遺伝の影響が現れるからです。

自分の適性に逆らわず、それを生かす

さて、ここからは遺伝が思っているよりも大きな影響を及ぼすこの世界で、どう生きていくかについて説明します。最初に結論を言うと、生まれつき持っているものを知り、それに逆らわないことが大事です。

生まれつき持っているものを知ること

これまで説明してきたように、私たちの特徴の約30%から60%は遺伝の影響を受けています。そして、私たちにできるのは、その遺伝的な特徴を知り、それをどう生かしていくかを決めることです。遺伝は変えられませんが、それを知って適応することはできます。

いろんな経験をして自分の特性を知る

まずは、さまざまな経験をして自分が興味を持てることや得意なことを見つけることが重要です。例えば、勉強が苦手で嫌いなら、無理に努力するのではなく、他の興味のあることに挑戦してみましょう。興味を持つこと自体も遺伝の影響を受けているので、自分に合ったことを見つけることが大切です。

環境を変えることの重要性

自分の向いていることがわからない場合や、何にも興味が持てない場合は、環境を変えてみることが大切です。この本では、例えば山に登るなど、自分の視野の外にあることに挑戦することを勧めています。非共有環境を変えることで、新しい興味や特技を発見する可能性が高まりますし、自分の特性をより深く理解できるようになります。

悪い状態になっても再度環境を変える

もちろん、環境を変えることで一時的に悪い状態になることもありますが、その時は再び環境を変えてみましょう。さまざまな経験を通して、自分の遺伝的な特徴を知り、それに適応することが大切です。

自分の向いていることを生かせるニッチな場所に移動する

次に大事なことは、自分の向き不向きや興味が持てることが分かってきたら、それを生かせるニッチな環境に思い切って飛び込むことです。

ニッチとは何か

ニッチとは「隙間」という意味で、要するに大衆向けではなく、特定の人にだけ分かればいいという規模の小さな市場のことを指します。例えば、ペットの服を売るお店、鼻で笛を吹くYouTuber、格闘ゲームに特化したプロゲーマーなどがニッチの例です。

なぜニッチが重要か

ニッチな場所は、まるでコンクリートの割れ目に咲く植物のように、周りから見るとひどい場所に思えるかもしれません。また、大企業が参入するほど儲からない小さな市場かもしれませんが、自分にとっては心地よいと感じる場所になるのです。私たちは、そんなニッチな場所に移動して活躍することが重要です。

ニッチに飛び込む勇気

この本でも、「避ける場所に動きなさい」と書かれています。自分が得意で興味を持てることが見つかったら、その分野に特化したニッチな市場に思い切って飛び込みましょう。それが自分の遺伝的な特徴を生かして、充実した人生を送る方法です。

遺伝を考慮しない方が残酷

遺伝を理由に諦めるのは良くないと言う人もいるかもしれませんが、この本では「頑張れ」と言い続ける方がよっぽど残酷だと指摘しています。

頑張れというプレッシャーの問題

例えば、遺伝的に勉強が向いていない生徒に対して、「勉強ができないのは頑張っていないからだ」と励まし続けると、その生徒は一時的に必死に努力するかもしれません。しかし、結局向いていないことは長く続けられず、結果も出にくいため、「根性なしだ」「ダメな奴だ」と評価されてしまい、精神的に大きな打撃を受けます。

遺伝の影響を無視することの弊害

遺伝の影響を無視して、全てを努力不足で片付けるのは現実を見ていないし、人を追い詰めることにもなります。そもそも、努力できるかどうかを示す勤勉性も遺伝の影響を受けるのです。それならば、遺伝の影響を素直に認めて、自分に向いていることに集中し、向いていないことは諦める方が賢明です。

現実的な対応の難しさ

もちろん、塾の先生や親が子供に向かって「君は才能がないから他のことをやった方がいい」と言うのは難しいでしょう。ビジネスとしても成り立ちませんし、言いにくいです。そのため、大人たちは「頑張ればなんとかなる」と言い続け、多くの子供たちはそれを信じてしまうのです。

遺伝を考慮する社会の提案

とはいえ、遺伝の影響は確実に存在します。この本では、遺伝を見て見ぬふりをするのではなく、遺伝を考慮して自分の向き不向きに気づき、それぞれが自分の向いていることを生かすことで、豊かな社会になるのではないかと指摘しています。

自分の向いていることを生かせる環境は広がっている

今では、ネットやSNSの普及によって、YouTubeやゲーム実況など、自分の特定のスキルを生かせる場所が増えてきています。

テクノロジーの進歩が環境を広げる

少し前までは、いい大学やいい会社に入ることが成功の証とされていたため、遺伝的に勉強が得意な人が有利で、勉強が苦手な人は不利でした。しかし、今ではテクノロジーの進歩によって、人との交流が苦手な人や勉強が得意でない人でも活躍できる場所が広がっています。

新たな活躍の場

たとえば、様々なジャンルのYouTuberが人気を集めています。以前は考えられなかったようなニッチなスキルでも、多くの人に見てもらい、評価される時代になっています。これにより、自分の得意なことや好きなことを生かして成功するチャンスが広がっています。

医療の進歩も環境を広げる

また、医療の進歩も大きな役割を果たしています。たとえば、潰瘍性大腸炎という治ることのない難病も、最新の医療技術であるFMT(糞便微生物移植)によって治る可能性が出てきています。このように、遺伝的な特徴を変えることはできませんが、それを生かせる環境を探し続けることが重要です。

まとめ

遺伝は人生の全てに大きな影響を及ぼします。知能や性格など、あらゆることに30%から60%の影響を与えています。環境については、親と一緒に過ごす「共有環境」が0%から20%の影響に対し、友達や異性、自分1人で過ごす「非共有環境」は20%から60%の影響を与えます。さらに、時間が経つにつれて遺伝の影響は大きくなります。

では、どう生きていけば良いのでしょうか?

  1. いろんな経験を通して、自分の遺伝的に向いていることや興味を持てるものを知る。
  2. 自分の適性に逆らわず、それを生かす。
  3. 自分の向いていることを生かせるニッチな場所に移動する。

「頑張れ」と綺麗事を言い続けることは、遺伝を考慮しないために、かえって残酷かもしれません。しかし今は、SNSやYouTubeなど、自分の向いていることを生かせる環境が広がっています。

最後に、個人的な話をすると、この本は非常に難しいです。読む場合は心してかかる必要があります。遺伝学はまだ分かっていないことも多く、遺伝や教育、環境、運など様々な要素が複雑に絡み合って今の私たちが出来上がっているからです。もちろん、個人差もありますが、私たちが思っている以上に遺伝の影響は大きいということだけ理解してもらえれば十分です。

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