世界で人口の多い国と言えば、どの国を思い浮かべますか?多くの人が中国やインドを挙げるでしょう。実際に、これらの国の人口はそれぞれ14億人を超え、世界全体の人口約80億人の約35%をこの二国が占めています。しかし、なぜ中国とインドだけが特に人口が多いのでしょうか?
単に広大な領土を持っているからという理由だけでは説明がつきません。人口が多いことにはメリットもあれば、デメリットも存在します。本ブログでは、中国とインドがなぜ人口が多いのか、その背景にある歴史的、社会的要因と共に、それによって引き起こされる問題点についても詳しく解説していきます。
この記事を通じて、世界の人口問題についての理解を深め、あなたの国際リテラシーも高まることでしょう。最後までご覧いただき、より深い洞察を得てください。
人口増加の歴史的理由
日本の人口は約1億2600万人です。日本ではよく少子高齢化で人口が減っていると耳にすることがありますが、世界全体で見ると人口は増え続けています。国連の2022年の発表によると、11月時点で世界の人口は80億人を突破しています。
国別に見ると、2022年末の時点で第1位はインドで約14億1700万人、第2位が中国で約14億1200万人です。第3位のアメリカは約3億3300万人と、数字が大きく跳ね上がります。その差はなんと10億人以上です。
データからも中国とインドが際立って人口が多いことが分かります。そもそも世界全体で人口が増え始めたのは19世紀以降のことです。産業革命によって食料の大量生産が可能となり、人口は急速に伸び始めました。
元々人口大国だった中国とインドは近代化の遅れがあり、最初は緩やかに人口が増えていましたが、20世紀に入り近代化が進んだことで爆発的に伸び始めたのです。では、元々人口が多かったというのはなぜでしょうか。
その理由は地理にあります。
紀元前3000年頃、世界では中華、インダス、メソポタミア、エジプトといった大きな文明が栄えていました。これらに共通するのは大きな川の近くということです。川沿いの地域は豊かな水と栄養豊富な土に恵まれており、農業に適しています。つまり、人が生きるために必須の水と食料に困らないということです。そのため、人がたくさん集まり、どんどんと数を増やしたのです。
ただし、この中でもメソポタミアとエジプトは気候が乾燥している地域です。そのため、雨が少なく農業ができるエリアも限られています。食料を作るのにも限界があるため、人口増加には歯止めがかかりました。一方、中国とインドは高温多湿という環境ですので、より農業、特に水田で作るお米の生産に適していました。
お米は麦よりも収穫できる量が多い作物です。同じ面積で比べると約1.4倍の差が出ます。また、畑と水田の違いもあります。畑の場合は連作障害と言って、同じ作物を作り続けると前に作った野菜や使用した肥料によって土壌中の成分バランスが崩れたり害虫が発生することで収穫できる量が減ってしまうという問題があります。畑の栄養がだんだんなくなっていくのが原因です。その点、水田は異なります。
川の水が次々と栄養を運んでくれるので、同じ場所であってもずっと作り続けられるのです。連作障害がない上、取れる量も多いため、お米の生産効率が高く、人口が増えやすいということです。また、中国やインドは作物だけではなく動物にとっても過ごしやすい環境なので畜産も盛んです。
このように、アジアは食料生産に適しており、人口が増えやすい条件が整っています。実際、世界地図で見ると、世界人口の約6割がアジアに集中しています。中でも中国とインドは面積が広く、栄養を運んでくれる大きな川まで利用できるため、絶好の条件が整っているのです
そのため、この2カ国だけが人口が急増するわけです。しかもインドは1970年代に「緑の革命」と呼ばれる食料の増産を実現しました。新品種の導入や近代農業の技術を取り入れたことで、食料を海外に輸出するほど豊かになり、人口はさらに増えました。同様に、中国も食料の生産に力を入れています。
さて、2019年の日本のお米の生産量は約1052トンでしたが、対する中国はなんと2億トン、インドは1億7000万トンとなっています。この差は顕著で、世界人口でトップ2を占める中国とインドの生産力の規模の違いが明らかになります。
ただし、それぞれの国が抱える事情には大きな違いがあります。まず、人口密度の違いが挙げられます。総人口が近いながらも、インドの国土面積は中国の約1/3程度です。つまり、国全体で見るとインドの方がより密集した状態となっています。
しかし、中国にも住宅地が過密なイメージがありますが、実は中国の面積が広い割には、ほとんどが高原や砂漠といった住みにくい地形で占められています。
そのため、多くの人々が海に近い地域に集中して住んでいます。テレビでよく見る中国の過密な住宅地の風景は、こうした地形的な事情も影響しているのです。
もう一つの大きな違いは、人口の増減です。人口が増え続けるインドに対し、中国は減少傾向にあります。実際に2022年末にはインドが中国の人口を追い越しました。
この逆転現象の原因を探ると、中国で長年施行された一人っ子政策が大きく影響しています。これにより出生率が抑制され、高齢化が進む中で人口減少へと繋がっています。一方、インドでは若年層の割合が高く、出生率も比較的高いため、人口が増加し続けているのです。
人口増加の原因
1949年に建国された中国は、経済発展を促進するために人口の増加を国民に奨励しました。この結果、人口は順調に増加し、経済も発展しました。しかし、人口が増加しすぎた結果、食料不足が生じ、自然災害も重なり、1959年から1961年にかけて大飢饉が発生しました。この大飢饉は人類史上最大の人為的な災害の一つとされ、数千万人が死亡しました。食料不足が解消されたのは1970年代に入ってからです。
この経験を踏まえ、中国は再び人口が増加し始めると、同じ事態が再発することを懸念し、人口増加を抑制する政策を導入しました。その政策が1979年に開始された一人っ子政策です。この政策は、一組の夫婦につき子供を1人に限定するというもので、約36年間続けられました。
政策の適用には罰則が伴い、例えば1人目の子供を産んだ夫婦が2人目を産まないことを宣言すれば、金銭的な報酬や住宅、農地が支給されるなどのインセンティブがありました。しかし、宣言しなかった場合は高額の罰金が課されました。この政策の結果、中国では出生率が低下し、現在は高齢化が大きな問題となっています。
一方、インドでは状況が異なります。貧困が人口増加の主な要因の一つです。一般的には、貧困が人口減少をもたらすと考えがちですが、実際は逆です。貧しい家庭では、働き手としての子供が必要になるため、多くの子供を産むことが多いです。
さらに、医療アクセスの制限や栄養不足により子供の死亡率が高いため、より多くの子供を産むという習慣が根付いています。現代では医療サービスが改善され、助かる命も増えていますが、一人っ子政策がなく、以前のように多くの子供を生み続ける文化があるため、人口は増加しています。
インドの人口予想
国連の調査によれば、インドでは毎日6万人以上の子供が生まれているとされ、これは世界で1日に生まれる赤ちゃんのうち6人に1人がインド人ということを意味します。また、近隣の貧しい国から多くの移民がインドへと流入しています。これらの理由が重なり、インドの人口は増え続けています。
国連の2022年の世界人口予想によると、世界の人口は80億人を超え、2030年には85億人、2100年には100億人を突破すると予想されており、その多くが発展途上にあるインドに集中する見込みです。
この人口の増加にはメリットも多く、現在インドの経済規模は世界で第5位ですが、2027年には日本を抜いて世界第3位になると予想されています。これは、人口が増える国では経済も発展しやすいということを示しています。そのため、今多くの企業がインドの市場に可能性を感じ、注目しています。これは、大きな人口がもたらす潜在的な消費市場や労働力としての資源を活用しようという動きです。
中国の経済発展による問題
中国はこれまで目覚ましい経済発展を遂げ、2010年頃には日本を追い抜き、現在は世界第2位の経済規模を誇ります。しかし、この急速な発展の裏で、中国では社会的な格差が拡大しており、特に大卒エリート層でも就職が難しいという問題が顕著になっています。これらの若者は「有族」と呼ばれ、経済的な制約から安価なアパートでルームシェアを余儀なくされています。さらに、より厳しい状況にある若者たちは「地下の家」しか借りられないことから「地族」と呼ばれ、地下室での生活を強いられています。
これらの現象は、中国の経済成長に伴う影の部分を示しており、教育を受けた若者たちが安定した雇用を得ることが困難であるという深刻な社会問題を浮き彫りにしています。このような問題は、中国政府が今後直面する大きな課題の一つであり、経済成長だけではなく、その成長を支える社会システムの改善が急務とされています。
人口増加による環境問題
中国とインドの状況には、経済面で大きな違いがあります。人口が増加すると、それだけ多くの人々を養うために必要な食料、水、住宅、仕事、エネルギーなどが増えます。しかし、土地や資源は限られており、物資を生産するにも限界があります。そのため、人口が多い国では、一人一人に必要な資源が不足し、さらに貧困層を増やすことに繋がります。例えば、インドでは大都市への人口集中により、スラム化が進んでいます。人口の急増により、住宅、上下水道、ゴミ処理といった都市基盤が追いつかず、アジア最大規模のスラムや、住民の約40%がスラムで暮らす町が出現しました。
一方で、都市開発を無理に進めれば環境破壊や資源の枯渇といった問題が起き、不足する資源を巡って犯罪や紛争のリスクも高まります。中国とインドはこうした問題に無関心ではなく、例えば環境面ではCO2削減の取り組みが行われています。
中国は2020年にCO2削減を目的として石炭火力発電所の新設を中止しましたが、2021年の需要増加により石炭発電が再開されるなど、環境への悪影響が心配されています。インドでも石炭発電は大きな問題で、発電に使用される燃料の約33%が石炭です。石炭は安価であるため、高価な天然ガスへの転換が難しい状況です。
日本とは異なり、中国では少子化政策を進めた結果、人口の増加率が低下し、出生率も下がっています。これらの国々では、増え続ける人口に対して、適切な対策として人口を減らす政策も取られているのが現状です。このように、中国とインドは似ているようでいて、各国の事情や取り組む課題には大きな違いがあります。
中国の少子化問題
中国での少子化問題は深刻であり、国の統計によると、2022年の出生率は2021年から10%減少し、出生数が1000万人を下回ったとされています。これに対応するため、中国政府は2016年に二人っ子政策を導入し、2021年には一組の夫婦が最大3人の子供を持つことを許可する政策に拡大しました。しかし、これらの政策変更にもかかわらず、少子化の傾向に大きな変化は見られません。
少子化の原因は多岐にわたりますが、中国特有の問題として「戸籍制度」が挙げられます。中国には「都市戸籍」と「農村戸籍」があり、これにより住民の居住地が制限されています。この制度は元々、農民が大量に都市部へ流入するのを防ぐために設けられました。都市戸籍を持つ人々は都市部での生活が許可され、農村戸籍の人々は農村地域に留まることが一般的です。この戸籍は容易に変更できないため、農村から都市部へ出稼ぎに行ったとしても、子供が生まれた場合、その子供が当地の学校に通うことができないなどの問題が生じます。
最近になって、この制度に一部変更が加えられました。都市部の大学に入学し、卒業すると都市戸籍が与えられるようになったのです。これにより、より良い教育と生活環境を求めて都市部へ移住する人々が増え、結果的に生活コストが高まる都市での子育ての負担が増加し、少子化を加速させる一因となっています。このように、社会制度や経済的要因が複雑に絡み合い、中国の少子化問題を深刻化させています。
インドの人口削減政策
インドでは、1951年以来、不妊手術が推奨され、1970年代にはインディラ・ガンジー首相と彼女の次男サンジャイ・ガンジー氏によって主導された大規模な不妊手術キャンペーンが行われました。このキャンペーンでは、2人以上の子どもを持つ男性約600万人が手術を受けたとされ、女性を含めるとその数は800万人に達したと言われています。
この施策は警察による強制的な手術が貧困層を中心に横行し、国民からの激しい反発を招き、結果的に政策は中断されました。
現在、インドでは人口抑制政策に関する議論は活発でありながら、過去の強制的な不妊手術の記憶が社会に残っているため、直接的な抑制政策は軽減されています。しかし、2019年の独立記念日にモディ首相が家族を少なく保つことを愛国心の現れと述べたり、2021年7月にはウッタル・プラデーシュ州で子供を最大2人までとする法案が提出されるなど、人口減少を促す動きは見られます。
インドの人口抑制政策には特有の問題もあります。特に、性選択とダウリー(花嫁が花婿側に支払う持参金制度)の習慣が性別の偏りを生んでいます。インドでは、結婚の際に花嫁側が花婿側に多額の金銭や宝石を提供するダウリーがあり、その金額は年収の12年分にも及ぶことがあります。これは政府によって禁止されていますが、未だに根強く残っています。
男児を優遇する文化が残っているため、女児は教育や福祉サービスの機会においても不平等を経験しており、特に農村部でこの不平等は顕著です。性別を選んでの中絶も行われることがあり、これがさらなる問題を引き起こしています。
終わりに
このように、インドと中国は人口の増減といった表面的な問題だけでなく、環境問題や性別平等など、多角的に考慮すべき課題を抱えています。しかし、これを機に考えてみれば、人口減少が続く日本にも解決すべき多くの問題が存在します。
他国と日本を比較することで、あなた自身が感じることや考えることがあります。そして、それらはあなたの価値観を形成し、政治に対するスタンスや生き方にまで深く影響を与えるでしょう。
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