あなたがダメだとわかっていても先延ばしにする理由

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あなたがため息をつきながらパソコンを開いたのは、先延ばしになっていた作業をついに手に取るためだった。しかしながら、画面を点灯させると自動的に手がスマホに伸び、気づけばニュースのチェック、お気に入りのYouTube動画視聴、ショート動画の無限ループに陥っていた。心の中で「もういいかげんにしなくては」と呟きながら、それでもやる気がどんどんと失せていく様子が見える。

「ダメだとわかっている、でもまだ時間はあるから、ちょっとだけ…」と、自分に甘い言葉を囁き、気づけば時間が過ぎ、やり残した作業はまた明日へと持ち越されてしまった。そして、次の日が昨日以上に困難に思える。これはあなただけではなく、私たち誰しもが経験したことのあるシーンではないでしょうか?

今日私が取り上げたいのは、こういった「先延ばし」の問題と、なぜわざわざ自分に苦痛をもたらす行動を選び続けるのかについての理由です。ただし、ここで混同してほしくないのは、効率的なタスク管理のための優先順位づけと、本来やるべき作業を適当な理由で避ける「先延ばし」は全く異なることです。

先延ばしの原因

興味深いことに、先延ばしという行動は、実は私たちの体が自己防衛の一環として行っているものなのです。以前にも触れたように、私たちの脳は、無意識のうちに「脅威」と判断した作業を避けようとするのです。

その仕組みはとてもシンプルです。何かをやらなければならないと脳が認識すると、その瞬間に脳は迫りくる恐怖に反応します。恐怖感は私たちの感情処理に関わる部分、扁桃体を刺激し、アドレナリンというホルモンを放出させます。このホルモンの放出はストレス反応を引き起こし、さらにパニックを招きます。そしてこのパニック状態が、前頭前野と呼ばれる領域の働きを乱し、長期的な思考や感情のコントロールを妨げます。結果として、脳はストレスが少ない作業を優先し、恐怖を回避する行動をとります。

では、なぜ「やらなければならない」という認識に恐怖を感じるのでしょうか。それは、やらなければならないという強い思いの背後に、自分自身に対する不信感があるからです。未知への恐怖、自分の能力に対する不信感など、否定的な感情がトリガーとなり、先延ばしという行動が選択されます。

教育機関で行ったある研究では、先延ばしをする大学生たちを対象に調査したところ、ストレスを感じやすい作業や困難と感じる作業が先延ばしにされる可能性が高いことが明らかになりました。さらに、その作業の困難さは、作業を先延ばしにしている間に増加する傾向にあることも分かりました。

エメットの法則

エメットの法則という法則があり、人々は一般的にギリギリの時間まで作業に取り掛からない傾向があります。そして驚くべきことに、これが先延ばしを行うと作業に要する時間とエネルギーが増加する主な理由となります。同様の結果は、多くの実験でも確認されています。

別の興味深い実験では、学生たちが一日中勉強することを強いられた場合について調査しました。勉強している間、実は多くの学生たちはそれほど苦痛を感じていないと報告しました。しかし、勉強を先延ばしにした場合、勉強を開始する時間が迫るほど、勉強するという考えが非常にストレスを感じるものとなる、という結果になりました。

これは、勉強という行為自体は実はそれほど困難ではないのですが、先延ばしという行為が、勉強を困難に感じさせる要素となっているということを示しています。

先延ばしは私たちのネガティブな感情と強くリンクしているため、感情の調節が困難な人や、悩みを抱えやすい人々は、時間管理が上手であろうとも、先延ばしになる傾向が強いです。したがって、全ての先延ばしをする人が単に怠け者だというのは大きな誤解です。実際には、先延ばしをする人々の多くは、過度に気を使ったり、失敗への強い恐怖を抱えたり、自分の仕事が高い水準を満たしていないことを恐れたりしています。

このような人々は、自分が行っている作業が完全でなければ満足できず、そうでなければ簡単に先延ばしにしてしまう傾向があります。

先延ばしを解決するには

皆さんに理解して頂きたいのは、何が先延ばしの原因であれ、その結果は大部分が同じであるという事実です。すなわち、先延ばしにより生じる結果は、先延ばしをしたか否かにかかわらず一致するということです。だからこそ、先延ばしの衝動が湧いたときには、即座にその作業に取り組むことが最善と言えます。

頻繁に先延ばしを行う人は、長期的な不安や抑うつ、持続的なストレス、それに伴う身体的疾患に苦しむ可能性が高まります。また、先延ばしは一時的にストレスを軽減すると感じさせますが、これが次にストレスの大きな仕事に遭遇したとき、体が再び先延ばしを推奨する原因となります。困ったことに、その先延ばしの衝動はドラッグのようにどんどん強くなってしまうのです。

では、この先延ばしのサイクルを断ち切るにはどうすればいいのでしょうか。過去の研究では、先延ばしを行う人は規律を持ち、時間管理を徹底する必要があると考えられてきました。しかし、現在では多くの研究者が反対の意見を持っています。自分自身に過度に厳しくすると、作業に対するストレス反応が積み重ねられ、結果的に問題がより一層深刻化する可能性があります。

そのため、このようなストレス反応を断ち切るためには、自分自身のネガティブな感情に対処するしかありません。ネガティブな感情と向き合い、それを乗り越えるための最も簡単で効果的な方法は、大きな作業をより小さな要素に分割し、何をすべきかを明確にすることです。そしてもう一つ、ストレスを感じる要素を日記に書き出すことです。

思考が混乱した状態で作業を進めると、手が止まってしまうことがあります。だからこそ、作業を始める前に、自分がストレスを感じている事項を書き出すのです。言葉遣いに気を使わず、直感的に感じていることを書き出すと、頭の中にあった混乱が浄化され、作業に集中することができます。この作業により頭がすっきりし、視野が広がります。

もし頭が混乱した状態になったら、一度頭を振ってみてください。これは単純な行動ですが、非常に即効性があります。思考が複雑に絡まってしまっているときに頭を振ると、脳がリセットされ、無意味な雑念が浮かんでこなくなります。

結論としては、先延ばしをするのが良くないと知りつつも、それを行ってしまうのは自分の脳がその作業に対して恐怖を感じているからです。この恐怖は、自分が何かを達成しなければならないという強い感情と、自分への不信感が絡み合って生じています。

しかし、それは単に過度に気を使っているだけで、実際には先延ばしをしたところで結果は変わらないのです。そのため、作業を細分化したり、日記をつけたり、頭を振ったりという具体的な方法を試すことで、先延ばしの衝動を抑制し、その場で作業に取り組むことが効果的であり、最良の解決策となります。

それでも先延ばしをしてしまうことがあるかもしれません。しかし、大切なことは、たとえ作業が達成できなかったとしても、それが人生全体を見ると大きな問題ではないということを認識することです。今見ると大きな問題に見えるものも、長期的な視点で見れば忘れられる記憶の一つに過ぎません。それ

を改善のための教訓と捉え、一度距離を置くことも重要な方法の一つと言えます。

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