
「続けることは美徳」「すぐに諦めるのはダサい」——そんな思い込みに縛られていませんか?
ピューリッツァー賞受賞のジャーナリストであり小説家でもあるジュリア・ケラーが著した『QUITTING やめる力 最良の人生戦略』は、「やめること」の価値を再定義する一冊です。
本書は、仕事、人間関係、習慣など、自分に合わないものを手放すことで、より良い人生を切り拓く方法を教えてくれます。
この記事では、本書のエッセンスをわかりやすく解説しながら、「なぜ私たちはやめられないのか」「やめるべきサインとは何か」「本当に大切にすべきものは何か」について深掘りしていきます。
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1. やめることは「自分を守るための行動」
私たちはつい「もう少し頑張ろう」「ここでやめたら逃げだ」と考えて、限界ギリギリまで物事を続けてしまうことがあります。でも、実はやめることは「逃げ」ではなく、自分を守るための大切な選択肢なのです。
無理して続けることで、心や体に大きな負担がかかり、うつ状態や体調不良、最悪の場合には命を落とすことさえあるという現実があります。特に日本では、真面目で責任感の強い人ほど「我慢は美徳」と思い込み、限界を超えてしまうケースが少なくありません。
一方、**動物たちは生き残るために環境を見極め、「ダメだ」と判断したらすぐにその場を離れます。**たとえば、クマがある場所で食べ物が手に入らなければ、粘らずに他の場所へ移動します。無駄な努力を続けて飢えるリスクを取るよりも、結果が出そうな別の選択肢にすぐ切り替えるのです。
私たち人間も本来はそうするべきです。苦しい状況にしがみつくのではなく、「これはもう限界だ」と感じたら、一度立ち止まり、やめる勇気を持つことこそが、自分の命や健康を守る「自己防衛」になるのです。

2. 「やめたほうがいい」というサインに気づこう
私たちの心と体は、合わないことを続けているとちゃんと「サイン」を出してくれます。それは「そろそろ限界だよ」「もうやめたほうがいいよ」という、いわば身体と心からのSOSです。
たとえば――
- 夜なかなか眠れない(不眠)
- 原因不明の体調不良が続く
- 気分が沈んでやる気が出ない(憂うつ)
- 食べすぎる、あるいは食欲が止まらない(過食)
- 胸がドキドキしたり息苦しくなる(動悸)
こうした変化は、「無理をしている」「自分に合わないことを続けている」サインかもしれません。
しかし多くの人は、こうしたサインに気づいても無視してしまったり、「気のせいだ」「もう少し頑張れば大丈夫」と見て見ぬふりをしてしまいます。けれど、それを放っておくと、ストレスがどんどん蓄積され、心身に深刻なダメージを与えることになります。
本当に大切なのは、小さな不調のうちに立ち止まり、「これは続けるべきか?」「やめたほうがいいのでは?」と自分に問い直すことです。
心や体の異変は、無理を続けているサイン。無視せず、早めに対処することが、健康と人生の質を守る第一歩なのです。

3. なぜやめられないのか? ― 3つの心理的ハードル
本当は「もう限界」「やめたい」と感じているのに、なかなか行動に移せない――
そんなとき、私たちはいくつかの心理的ブレーキにとらわれています。特に以下の3つは、多くの人が直面する代表的なハードルです。
① 「やめたらダサい」という思い込み
私たちは子どもの頃から、「努力を続けることが美徳」「あきらめるのは弱い」と教えられてきました。
映画や漫画でも、どんなにつらくても最後まで頑張った人が成功する物語ばかり見てきたため、「やめる=負け」「すぐにやめる=根性なし」といったイメージが刷り込まれているのです。
この思い込みがあるせいで、自分に合わないとわかっていても、「やめたらかっこ悪い」と思い、惰性で続けてしまう人が少なくありません。
② 人間関係を失うことへの恐れ
仕事や学校、サークルなどをやめるということは、そこにある人間関係を手放すということでもあります。
「職場を辞めたら同僚と疎遠になるかもしれない」「親や配偶者に失望されるかもしれない」と考えると、不安になり、一歩が踏み出せなくなります。
孤独になるのが怖くて、自分の気持ちを後回しにしてしまうのです。
③ 「ここまで頑張ったのに」というサンクコストの罠
「今さらやめたら、今までの努力や時間が無駄になる」
――これは、経済学でいう**「サンクコスト(埋没費用)」の罠**です。
たとえば3年勤めた会社、4年間通った大学、10年続けた趣味など…
続けてきた期間が長いほど、「もったいない」「ここまで来たのにやめるのは損だ」と感じてしまい、結果として自分に合わないことでも、ズルズルと続けてしまうのです。
このように、「やめたい」と思っていても私たちがしがみついてしまう背景には、世間体・人間関係・過去の努力という強力な心理的なハードルが存在します。
でも、どれも“今の自分”を苦しめているだけの足かせになっているかもしれません。
大切なのは、「過去」や「他人」ではなく、これからの自分の幸せに目を向けることなのです。

4. 「自分の気持ち」を基準にする
やめるべきか、続けるべきか――
迷ったときに最も大切なのは、周りの意見ではなく、自分の本音です。
「親が反対するかもしれない」「周囲からどう思われるか不安」「せっかく就職したのにやめるなんてもったいない」といった、外部の声や評価に振り回されて、自分の気持ちを押し殺していませんか?
けれど本当に必要なのは、「自分はどうしたいのか?」「本心では続けたいのか、やめたいのか?」という内なる声に耳を傾けることです。
どんなに他人のアドバイスが立派でも、それはその人の人生観。最終的にその選択の結果を背負うのは、あなた自身です。
人は、自分で選んだ道ならたとえ失敗しても納得できます。でも、誰かに言われて選んだ道でつまずくと、「あの人のせいだ」と後悔することになります。
だからこそ、決め手にすべきなのは他人の言葉ではなく、**「自分がどう生きたいのか」**なのです。

5. 向いていないことには執着しない
「最近うまくいかない」「ちょっと落ち込む出来事があった」――
そんな一時的な不調が原因で「やめたい」と思うことは、誰にでもあります。
たとえばミスが続いた、理不尽な上司に怒られた、モチベーションが落ちた……。
こうしたことが続くと「もう無理かも」と感じがちですが、一時的なスランプであれば、少し休めば回復することもあります。
しかし、もっと深刻なのは、最初から今までずっと「うまくいかない」「つらい」「イライラする」と感じ続けている場合です。
- 始めてからずっと成果が出ない
- 何をしても苦痛に感じる
- 周囲にも馴染めず、やる気も湧かない
そんな状態が続いているなら、それは**「そもそもその道が自分に向いていない」サイン**です。
無理して努力を重ねても、向いていないことにエネルギーを使い続けるのは、自分をすり減らすだけ。
だからこそ、向いていないと感じたら、無理に執着せずに手放す勇気が必要です。
やめることでしか見つからない、自分らしい場所や得意な分野がきっとあるはずです。
6. 選択肢は常に「自分の手の中」にある
「やめたいけど、仕方なく続けている」「自分にはどうしようもないから我慢するしかない」
――そんなふうに思い込んで、苦しい状況を続けてはいませんか?
でも実はそれ、ただの“幻想”かもしれません。
どんなに厳しい環境であっても、どんなに逃げられないように感じても、
「やめる」「続ける」「別の道を探す」という選択肢は、いつでもあなた自身の手の中にあります。
もちろん、やめることで一時的に不安や不自由が生じることもあるでしょう。
家族やお金の問題、世間体……さまざまな事情があるかもしれません。
それでも、「自分には他に選択肢がない」と思い込んでしまうことは、自分の人生のハンドルを手放してしまうことなのです。
人生はゲームと似ています。途中でやめることも、やり直すことも可能。
「始めたからには最後までやり抜かなければいけない」なんてルールは、本当はどこにもありません。
大切なのは、自分の意志で決めたかどうかです。
- 自分で「やめる」と決めたなら、その選択に意味がある
- 自分で「続ける」と決めたなら、そこに覚悟が宿る
他人の期待や、義務感や、惰性ではなく、「これは自分で選んだ」と胸を張って言える選択をすること。
その積み重ねが、後悔の少ない人生につながるのです。
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✅ まとめ:やめることは“逃げ”ではない。人生を変える“戦略”である。
私たちはつい、「続けることが正しい」「あきらめるのは悪いこと」と思い込みがちです。
でも実際は、やめること=逃げではなく、時に最善の選択であり、自分を守り、前に進むための大切な戦略です。
無理して向いていないことにしがみつくより、
「これは合わない」と見切って、エネルギーを自分に合った場所に注ぐこと――
それこそが、人生の質を劇的に高めるカギなのです。
大切なのは「続けるか・やめるか」ではなく、
「その選択が、自分にとって本当に納得できるものかどうか」。
やめることに罪悪感を持つのではなく、
自分に正直に、しなやかに選びなおせる力を育てていきましょう。
やめることは、終わりではなく始まりです。
その選択が、新たな可能性の扉を開いてくれるかもしれません。
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