
インドとパキスタン──同じ南アジアにあり、かつてはひとつの国だったこの2つの国が、なぜ今「戦争寸前」とまで言われるほど険悪な関係に陥っているのでしょうか?
2025年4月、インド支配下のカシミール地方で起きた観光客襲撃事件により、両国の緊張は一気に高まりました。多数のインド人が犠牲になり、その直後にはパキスタンが先に攻撃を行ったとされ、これに対してインドも軍事報復に踏み切る構えを見せています。
カギとなっているのは、「カシミール地方の領有権争い」「核兵器の保有」「水資源をめぐるインダス川問題」など、複雑に絡み合った歴史と利害です。しかも両国はすでに3度の戦争を経験し、どちらも核兵器を持つ“世界でもっとも危険な隣国同士”と言われています。
本記事では、インドとパキスタンの関係がなぜここまでこじれてしまったのかを、1947年の独立から現在の軍事衝突まで、学生にもわかるやさしい言葉で、時系列に沿ってわかりやすく解説します。
「遠い国の争い」として無関心ではいられない今、私たちがこの対立から学ぶべきことは何か──
世界情勢の裏側を理解するきっかけとして、ぜひ読んでみてください。

インドとパキスタンは、もともと「同じ国」だった?
インドとパキスタンは、昔から別々の国だったわけではありません。実は、もともとは「イギリスの植民地=英領インド」の一部で、ひとつの大きな国としてまとめられていました。
1800年代から1947年までの長い間、インドはイギリスに支配されていて、政治や経済の中心はすべてイギリスが握っていました。この時代、多くのインド人たちは「自分たちの国を取り戻したい」と願い、独立運動を展開していきます。
宗教の違いが大きな壁に
インドの中にはいろいろな民族や宗教の人が住んでいました。特に多かったのが、**ヒンドゥー教を信じる人たち(ヒンドゥー教徒)**と、**イスラム教を信じる人たち(イスラム教徒)**です。
本来なら「一緒に独立して、みんなで国を作ろう」となればよかったのですが、宗教の違いから「自分たちの宗教だけの国を作りたい」という声が強くなってしまいました。特にイスラム教徒は「ヒンドゥー教徒が多い国で少数派として生きていくのは不安だ」と考え、イスラム教徒の国=パキスタンを作ることを望むようになったのです。
突然すぎる「分離独立」が悲劇を生んだ
こうしてイギリスは、1947年にインドを「ヒンドゥー教徒の多いインド」と「イスラム教徒の多いパキスタン」に分けて独立させました。しかし、この独立は準備不足のまま、たった2ヶ月ほどの短期間で決行されたのです。
国境線はぎりぎりまで発表されず、どちらの国になるのか住民たちはほとんど知らされないまま。これによって、人々は「自分の住んでいる地域がインドになったのか、パキスタンになったのか」もわからない状態で混乱しました。
結果として、ヒンドゥー教徒はインドへ、イスラム教徒はパキスタンへとお互いの国へ移動する“大移動”が起こります。その数はなんと約1,500万人。この移動の中で、略奪、虐殺、女性への暴行、強制的な宗教の改宗など、あらゆる暴力が広がり、100万人以上が命を落としたといわれています。
このように、インドとパキスタンの分裂は、ただ国が分かれただけではなく、「たくさんの人の命と生活を奪った、大きな悲劇」だったのです。そしてその痛みや怒りは、今も両国の間に深く残り続けています。

2. なぜケンカが続く?「カシミール問題」ってなに?
インドとパキスタンがこれほどまでに長く対立している最大の理由は、「カシミール地方」という地域をめぐる争いです。
カシミールは、インドとパキスタン、そして中国にも隣接しているとても重要な場所で、美しい自然が広がる一方で、戦争やテロが繰り返されてきた「火薬庫」とも呼ばれる危険な地域です。
カシミールのややこしい状況
1947年にインドとパキスタンが分かれて独立したとき、カシミールはまだどちらの国にも属していませんでした。そこには「ジャンムー・カシミール王国」という小さな国があり、王様はヒンドゥー教徒、でも住民のほとんどはイスラム教徒という、ちょっと複雑な状況でした。
王様は最初、「インドにもパキスタンにも入らず、独立国家としてやっていきたい」と考えていました。ですが、そのときパキスタンから来た武装勢力がカシミールに侵入してきたのです。これに危機感をもった王様は、急きょ「インドに助けてください!」と頼みました。
インドは、「じゃあ、カシミールがインドに正式に加わるという書類を出してくれたら、軍隊を送りますよ」と言い、王様はそれに同意。こうしてカシミールはインドに編入されることになったのです。
これが「第一次印パ戦争」のきっかけに
パキスタンはこれに大激怒。「住民の大多数がイスラム教徒なのに、なぜインドに加わるんだ!」ということで、インドとパキスタンの間で戦争が勃発。これが1947年〜1948年に起きた「第一次印パ戦争」です。
その後もカシミールをめぐる争いは終わらず、
- 1965年に第二次印パ戦争
- 1971年に第三次印パ戦争
と、合計3度の大きな戦争が起こりました。
今も続く「終わらないケンカ」
これらの戦争は、一応「停戦」という形で終わりましたが、カシミールは今もインドが約60%、パキスタンが約35%、中国が一部を支配していて、正式な国境は決まっていません。
インド側のカシミールでは、今でも「パキスタンに入りたい」と思っているイスラム教徒が多く、テロや暴動がくり返されています。それに対してインドも武力で対応するため、ますます関係が悪化しているのです。
つまり、「どちらの国にカシミールが属するのか」という争いが、今も両国をにらみ合わせている最大の原因なのです。
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3. もし本気で戦ったら「世界が終わる」かも? 核兵器を持つインドとパキスタン
インドとパキスタンの対立は、ただの国同士のケンカではありません。とても危険なのは、どちらの国も「核兵器(かくへいき)」を持っているということです。
核兵器とは、一発で都市を消し飛ばすほどのすさまじい破壊力を持つ兵器で、使えば何十万人、何百万人という命が一瞬で失われるおそろしいものです。
1998年、「核保有国」に
1998年、まずインドが核実験を行い、「私たちはもう核兵器を持っていますよ」と世界に発表しました。すると、それに対抗してパキスタンもすぐに核実験を行い、「うちも持ってる!」と宣言します。
これでインドとパキスタンはそろって**核兵器を持つ国(核保有国)**になってしまったのです。
「戦争=人類の危機」に変わった
それまでは、もし戦争になっても、ある程度の被害で止めることができました。しかし核兵器を持ってしまったことで、次に戦争が起きたら“お互いに核を使うかもしれない”という最悪の未来が現実味を帯びてきました。
たとえば、もしインドが通常の攻撃でパキスタンを追い詰めたとしても、パキスタンが「負けるくらいなら核を使う」と決断してしまえば、何もかもが終わってしまうのです。
だからこそ、国際社会(アメリカや中国、国連など)も、この2国の争いにはとても慎重で、「絶対に戦争をさせない」ように注意深く見守っています。
今の状態は「ギリギリの平和」
インドとパキスタンの間では、戦争こそ起きていませんが、**「にらみ合ったまま、一触即発の状態」**がずっと続いています。これを「緊張の常態化」といいます。
つまり、「平和っぽく見えるけど、実はいつでも戦争になる危険がある状態」です。
核を持ってしまったことで、インドとパキスタンのケンカは「勝ち負けの問題」ではなく、「人類の存続に関わる問題」になってしまったのです。

4. 川の水がきっかけで戦争に!? インダス川と「水の争い」
インドとパキスタンの争いは、宗教や領土(カシミール)だけではありません。実は**「水」**も大きな火種になっています。
南アジアの大地を流れる「インダス川(かわ)」という大きな川が、その原因です。
インダス川は、パキスタンの命綱
インダス川は、ヒマラヤの山々から流れ出し、インド北部を通って、パキスタンの中心部を貫いてアラビア海にそそぐ長い川です。この川がなければ、パキスタンでは農業がほとんど成り立ちません。
実際、パキスタンの農業用水の約90%、発電の25%がインダス川に依存していると言われていて、まさに「パキスタンの生命線」と言える存在です。
水をめぐる争いを止めるための約束(1960年)
あまりにも大事な川なので、インドとパキスタンは1960年、**「インダス水条約(すいじょうやく)」**という取り決めを結びました。これは、国際社会(特に世界銀行)の仲介によって作られた約束で、内容はこうです:
- 川の東側の3本(ビーアス川など) → インドが自由に使っていい
- 川の西側の3本(インダス川本流など) → パキスタンがほぼ独占して使っていい
この取り決めがあったおかげで、インドとパキスタンはその後、どれだけ対立しても「水の争い」だけは起こさないようにしてきました。水に関してはお互いに約束を守ってきたのです。
ところが…2025年、インドが条約の効力を「停止」
2025年4月、カシミール地方でのテロ事件をきっかけに、インドとパキスタンの緊張が高まりました。そしてついに、インド政府が「インダス水条約の効力を停止する」と発表します。
これはつまり、「パキスタンへの水の供給を止めるかもしれない」と脅したことを意味します。川の“蛇口”はインドにあるので、インドが水を止めたらパキスタンは干上がってしまいます。
水が「外交カード」に
インドが水を止めるとパキスタンの農業も経済も大きなダメージを受けるため、これは「戦争を起こさずに相手を追い詰める手段」でもあります。こうしたやり方を**「外交カード」**といいます。
でもこれは、**相手にとっては“無言の攻撃”**でもあり、実際にパキスタンは激しく反発しています。
水は人間にとって生きるために欠かせないもの。だからこそ、水を武器として使い始めると、**「戦争よりも危険な争い」**になる可能性すらあるのです。
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5. 戦力ではインドが強い。でも「核」があるから話は別──
もしインドとパキスタンが本格的に戦争したら、どちらが勝つのでしょうか?
数字だけ見れば、インドのほうが圧倒的に強いです。
インドの方が「通常戦力」で大きくリード
- 人口:インド 約14億人 vs パキスタン 約2.4億人(およそ6倍)
- 経済力(GDP):インドのほうが約10倍も大きい
- 軍事予算:インド 約810億ドル vs パキスタン 約100億ドル
- 装備:インドは戦車・戦闘機・潜水艦・空母などを多く保有し、技術も高い
これだけを見ると、「インドが戦争をすればすぐに勝てるんじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
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でも…パキスタンには「核兵器」という最後の切り札がある
ここで忘れてはいけないのが、パキスタンも「核兵器」を持っているということです。核兵器は、たとえ一発でも使われたら、その地域に住む人たちはもちろん、周辺の国や世界中にまで影響が広がる**「最終兵器」**です。
つまり、インドが軍事的にどれだけ優れていても、パキスタンが「もうこれ以上やられたら国が終わる」と判断した瞬間に核を使ってしまうかもしれない。そうなると、勝ち負けどころではなく、人類全体が危機に陥る可能性すらあるのです。
勝てばいい、という話じゃない
インドとパキスタンの対立は、**「どちらが強いか」ではなく「どちらが先にブレーキを踏めるか」**が重要です。どちらかが感情に任せて行動すれば、世界中の人の命や未来が危険にさらされることになります。
実際、過去の戦争ではインドが優勢でしたが、1998年に両国が核実験をして以来、「次に戦争になったら核戦争になるかもしれない」と言われ続けています。
世界がこの対立に注目し続けているのは、「インドとパキスタンのケンカ」が世界全体にとってのリスクになっているからなのです。

6. ついに起きた「報復攻撃」──2025年、緊張が爆発した瞬間
長年にわたって危険な関係が続いてきたインドとパキスタンですが、2025年春、ついに事態が動きました。きっかけは、カシミール地方で起きた残酷なテロ事件でした。
カシミールで観光客が襲撃される
2025年4月、インドが支配するカシミール地方の観光地で、インド人観光客のグループが武装集団に襲撃され、26人が死亡する事件が起きました。
武装集団は観光客の名前と宗教を尋ね、イスラム教徒ではないと分かると、その場で銃撃するという冷酷な犯行だったと伝えられています。
この事件により、インド国内では怒りが爆発。「この背後にはパキスタンがいる」という世論が強まりました。
インドが報復に動く
事件の数日後、パキスタンの情報大臣が「インドが24~36時間以内に軍事行動を開始するという信頼できる情報がある」と発表。そしてその言葉どおり、インドはパキスタン側にあるテロ拠点への空爆を実施しました。
これは、事実上の軍事報復=武力衝突です。両国は公式には「戦争開始」とは言っていませんが、実質的な交戦状態に突入した形です。
なぜこの事件が「特別に危険」なのか?
- これまでにもテロや襲撃事件はありましたが、観光客を狙った大量殺害事件は特に衝撃的でした。
- インドはすでに過去にも「報復攻撃」の前例があり(2016年、2019年)、今回もその延長線上にあると言えます。
- 同時にインドは、パキスタンの命綱である「インダス川の水の供給」も止める動きを見せており、軍事と経済の両面で圧力を強めています。
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世界は今、固唾をのんで見守っている
インドとパキスタンの争いは、もはや2国間の問題ではありません。核兵器を持った両国が、本気で戦えば世界中に影響が及びます。
今回の事件と報復は、「次の戦争が本当に起きるかもしれない」と多くの国々が危機感を抱くきっかけとなりました。
以下に、インドとパキスタンの対立を理解するための年表をまとめました。、大事な出来事だけを時系列で整理しています。
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🗓 インドとパキスタン対立の流れ【年表】
年 | 出来事 | 内容・ポイント |
---|---|---|
1947年 | インドとパキスタンが独立 | 英領インドが、宗教(ヒンドゥー vs イスラム)を理由に2つの国に分割。大規模な民族移動と虐殺が発生。 |
1947~1948年 | 第一次印パ戦争 | カシミールの帰属をめぐり戦争に。インドが有利な形で停戦。国境が「実効支配線」に。 |
1965年 | 第二次印パ戦争 | 再びカシミールをめぐって衝突。国連の仲裁で停戦。 |
1971年 | 第三次印パ戦争 | パキスタン東部(今のバングラデシュ)で内戦。インドが介入しパキスタンに勝利、バングラデシュ独立。 |
1998年 | 両国が核実験 | インド→パキスタンの順に核実験。両国が「核保有国」に。戦争=人類の危機に変化。 |
2016年・2019年 | テロへの報復攻撃 | インド兵士や市民が殺された事件の報復として、インドがパキスタン領内を攻撃。 |
2025年4月 | カシミールで観光客襲撃 | インド人観光客26人が武装集団により殺害され、インド国内で怒りが爆発。 |
2025年5月 | インドが報復攻撃 | パキスタン側の武装勢力の拠点を空爆。さらにインダス川の水利条約も停止、戦争の危機が高まる。 |
✍️ 補足ポイント:
- 「カシミール問題」がずっと争いの火種になっている。
- 通常戦力ではインドが優位、しかしパキスタンは「核兵器」で対抗。
- 水(インダス川)も争いの道具になっている。
インドとパキスタンは、もともとは同じ国から始まりました。
しかし、宗教・領土・歴史のすれ違いによって、長い時間をかけて対立が深まり、ついには核兵器を持つ国同士としてにらみ合うようになってしまいました。
2025年、再び緊張が高まり、軍事衝突の一歩手前まで来ている今、この問題は決して「遠くの国の争い」ではありません。核や水資源をめぐる対立は、気候変動や国際政治と深く関わり、世界中の平和にも影響を与えるからです。
だからこそ、歴史を知り、背景を理解することがとても大切です。
どちらが正しい、間違っていると決める前に、なぜここまでこじれてしまったのか、その過程を知ることで、「争いを避ける知恵」を私たち自身が身につけることができるはずです。
この対立の先にある未来が、戦争ではなく対話と平和であってほしい──
そう願いながら、このブログを締めくくります。
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