渋沢栄一「論語と算盤」- 今に生きる私たちとして受け取るべきこと
渋沢栄一が説いた「論語と算盤」の精神を、ビジネスと人生の柱とするべきだという強い確信が彼の志に込められています。特に現代のコンプライアンス重視の時代において、ますます「論語と算盤」の精神を持つことの重要性が増しています。
今回は、斎藤隆さんが書かれた「声に出して読む 渋沢栄一『論語と算盤』」という本を解説します。この本は以下のような方におすすめです。
- 自分の精神的な支柱を作りたい
- 人生を自らの手で良くしたい
- 新1万円札の顔になる渋沢栄一について知りたい
本書の著者は明治大学文学部教授の斎藤隆さんで、「声に出して読みたい日本語」など数多くの本を出版されています。累計出版部数は1,000万部を超えるベストセラー作家です。そんな著者が愛読書として挙げているのが「論語と算盤」です。本書では、現代のビジネスや生き方に絡めて、この名著を解説しています。
それでは、早速紹介していきます。まず結論として、
結論
「論語」を精神文化として受け継ぎ、自分の精神的な支柱を作ること。『論語と算盤』によって、ビジネスと精神のバランスを整えることができる。論語は経済指南書ではないが、政治の戦略書とも言え、人格形成を根幹に据えることで、ビジネス全般に通じる教えを得ることができる。
ブログでは、以下の3つのテーマに沿って解説していきますので、ぜひお楽しみください。
- 自分の精神的支柱を作る
- 渋沢流「そろばん」について
- 渋沢流「論語」について
それでは早速、1つ目のテーマ、「自分の精神的支柱を作る」について解説していきます。
現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書 827) [ 渋沢 栄一 ] 価格:902円 |
1. 自分の精神的支柱を作る
この章では、自分の精神的支柱を作るというテーマについて、本書から3つのポイントをピックアップして解説します。
- 士魂商才
- 世界平和につながる論語の心
- なぜ論語と算盤が自分の精神的支柱になるのか
それでは、それぞれ見ていきます。
ポイント1: 士魂商才
まず、渋沢栄一の言葉を引用します。
「昔、菅原道真は ‘文武両道’ と言いましたが、私は常に ‘士魂商才’ ということを衝動します。人間が世に立つためには精神的な柱である士魂が無くてはならないが、それに加えて詳細(お金儲け)の才も必要です。経済を軽視すれば、やがて自滅に陥るでしょう。」
この言葉が示しているように、渋沢栄一は武士道精神を重んじつつも、経済的な才覚が重要であることを説いています。彼は、「武士道の精神と商才、どちらもバランスよく持つべきだ」と強調しています。人格形成のためには、論語がその根底を養う最も適した書物であるとも述べています。
ポイント2: 世界平和につながる論語の心
次に、渋沢の言葉を引用します。
「我々は己の欲せざるところを人にも施さず、東洋の道徳を守りつつ、平和を継続し、国際社会の幸福を進めていきたい。己の利益ばかりを追い求めるのではなく、国際的な道徳の中で調和を図るべきだ。」
ここで渋沢が強調しているのは、論語にある「己の欲せざるところを人に施すなかれ」という教えです。これは、現代にも通じる普遍的な真理であり、個人や国際社会における平和の基盤となるものです。
ポイント3: なぜ論語と算盤が自分の精神的支柱になるのか
渋沢栄一は言います。
「私は論語で一生を貫いてみせる。金銭を取り扱うことが卑しいと考えるのは間違っている。金銭を軽視すれば、国家も個人も立つことができない。私は論語の教訓を基に商売を続け、一生の支柱とすることを決めた。」
渋沢は30代で官僚を辞め、ビジネスの世界に入る際に、論語を自身の精神的支柱にしました。彼は、商売は日本を強くするための手段であり、その成功には人格形成が欠かせないと考えていました。そして、その人格を育むために最適なのが論語であると信じていました。
2. 渋沢流「そろばん」について
次に、「そろばん」に関する渋沢の考え方を、本書から3つのポイントで解説します。
- よく稼ぎ、よく使う
- 仁義道徳が築くWin-Winの関係
- 好調な時こそ気を引き締める
ポイント1: よく稼ぎ、よく使う
渋沢は言います。
「金銭に対して吝嗇(ケチ)になることなく、また浪費もしないことが重要である。よく稼ぎ、よく使うことを知らなければ、守銭奴となり、自らを滅ぼしてしまう。」
お金は天下の回りもの。稼いだお金を自分だけのために溜め込んではならない。適切にお金を使い、経済を回すことが大切だと述べています。
ポイント2: 仁義道徳が築くWin-Winの関係
渋沢はまた、こう言います。
「利を追求することと、仁義道徳を重んじることは並び立たせるべきものであり、それによって国家も個人も健全に発展する。」
自分だけが儲けようとしても長続きしない。仁義や道徳に基づいて富を得なければ、それは一時的なものであり、永続しないと渋沢は説いています。
ポイント3: 好調な時こそ気を引き締める
渋沢は言います。
「好調時にこそ、調子に乗ることなく、常に冷静に判断することが大切である。小さなことをおろそかにせず、着実に進むべきだ。」
成功に浮かれることなく、小さな失敗を積み重ねないことが重要だと渋沢は警告しています。
3. 渋沢流「論語」について
この章では、渋沢流「論語」について、本書から3つのポイントをピックアップして解説します。
- 常識人か否かを「智・仁・勇」でチェック
- 習慣と人格は一心同体
- 人生はチームプレーでうまくいく
ポイント1: 常識人か否かを「智・仁・勇」でチェック
渋沢栄一は、常識について以下のように述べています。
「人が行うことすべてにおいて、常識は不可欠である。常識とは、極端に走ることなく、バランスを保ちながら判断する能力を指す。特に『智・仁・勇』のバランスが大切である。」
ここで言う「智・仁・勇」は、智(知恵・判断力)、仁(感情・思いやり)、勇(行動力・勇気)のことです。渋沢は、これらのバランスが取れた人が常識人であり、どんな場面でも成功する人物であるとしています。
たとえば、知恵や行動力があっても思いやりがない人、判断力があるが勇気がない人など、どれか一つでも欠けていると「常識のある人」とは言えないと述べています。
ポイント2: 習慣と人格は一心同体
渋沢は、習慣が人格にどれだけ影響するかについてこう述べています。
「習慣とは、日常の行いが積み重なって一つの固有の性質となり、やがて人格に影響を及ぼすものである。良い習慣を持てば善人となり、悪い習慣を持てば悪人となる。日々、良い習慣を養うことが、人生において非常に大切だ。」
つまり、日々の小さな行動が積み重なり、その人の性格や人格を形成するのです。渋沢は、良い習慣を持つことが人生を豊かにし、逆に悪い習慣が積み重なれば悪い結果を招くと警告しています。
まずは、自分に合った良い習慣を一つ選び、少なくとも2週間続けてみることが大切だと述べています。そして、それが自分に合っているかどうか見極め、もし合っていなければ新しい良い習慣を探すことも大切です。
ポイント3: 人生はチームプレーでうまくいく
最後に、渋沢は人生を「チームプレー」として捉えることの重要性について述べています。
「孔子は『己を立てんと欲すれば、まず人を立てよ』と説いた。自分だけが成功しようとしても、結局はうまくいかない。まず他者を立て、他者を助けることで、自分も成功に近づくのだ。」
例えば、改札口で我先にと通ろうとすると混雑して通れなくなりますが、他者を先に通すことでスムーズに進めることができます。渋沢は、このように他者との協力があってこそ、個人も成功できると教えています。
まとめ
ここまで、3つのテーマについて解説しました。
- 自分の精神的支柱を作る
- 士魂商才
- 世界平和につながる論語の心
- なぜ論語と算盤が自分の精神的支柱になるのか
- 渋沢流「そろばん」について
- よく稼ぎ、よく使う
- 仁義道徳が築くWin-Winの関係
- 好調な時こそ気を引き締める
- 渋沢流「論語」について
- 常識人か否かを「智・仁・勇」でチェック
- 習慣と人格は一心同体
- 人生はチームプレーでうまくいく
今回紹介した本「声に出して読む 渋沢栄一『論語と算盤』」には、まだまだ紹介できていない部分がたくさんあります。ぜひ本書を読んでみてください。リンクは概要欄に貼っていますので、気になった方はご確認ください。
このブログが少しでもあなたの人生に役立つことを願っています。
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