私たちの生活は、予測可能で安定したものだと思っているとき、突如として大きな変動や困難が訪れることがあります。2020年の東京オリンピックが新型コロナウイルスの影響で計画どおりに進まなかったこと、過去の東日本大震災など、私たちの想像を超える出来事に私たち自身はどう立ち向かうべきなのでしょうか。これは単に意志の力だけで乗り越えることができる問題ではありません。では、どのようにすれば、どんな困難も乗り越える「メンタルモンスター」になれるのでしょうか。
そこで注目したいのが、脳科学者・茂木健一郎さんの最新刊「最強メンタルをつくる前頭葉トレーニング」です。この本は、私たちの心の強さを決定する脳の領域、前頭葉を鍛えることで、ストレスやネガティブな出来事に負けないメンタルを育てる方法を解説しています。私たちが真に頼りになるのは、意志の力ではなく、しっかりと鍛え上げられた脳と、その中の前頭葉の力。このブログでは、茂木さんの提唱する「前頭葉トレーニング」を通じて、強いメンタルを手に入れる方法を詳しく、3回に分けて解説していきます。一緒に、未来への不安や困難な状況に打ち勝つ「最強のメンタル」を育てていきましょう。
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前頭葉がメンタルを極める
「前頭葉がメンタルを極める」ということについて解説していきましょう
まず、脳の基本的な仕組みから理解していきます。特に注目すべきは、扁桃体と前頭葉の2つの部位です。私たちが日常で感じる「怖い」「嬉しい」「不安」といった感情は、脳の側頭葉にある扁桃体から発生します。この扁桃体は、原始的で直感的な感情を産み出す部位として知られています。
一方、前頭葉は私たちの意識的な思考や意思決定、さらには感情のコントロールなどを担当しています。もし比喩するならば、扁桃体は車のアクセルの役割を果たし、前頭葉はブレーキやハンドルの役割を果たす部位と言えるでしょう。
驚くべきことに、前頭葉は年齢を重ねても発達し続けることが知られています。つまり、「私はもう年だから」という理由で前頭葉のトレーニングを諦める必要はないのです。年齢に関係なく、前頭葉を訓練し続けることができます。
話は変わりますが、ニュースなどで「怒りっぽい若者」というトピックを耳にすることがあります。その背景には、前頭葉の発達段階が関与しています。若者は前頭葉が未熟であるため、感情のコントロールが難しくなることがあるのです。また、高齢者での怒りの増加は、前頭葉の機能低下が原因とされています。
要するに、感情のコントロールや、外部からの評価に影響されずに自分の意志を保持するためには、前頭葉の機能を高めることが鍵となります。これが「前頭葉がメンタルを極める」という考え方の根幹です。
自制心
自制心は、目標を達成するための基本的な要素として認識されています。簡潔に言えば、目標に向かって取り組む際に、短期的な欲求や誘惑に負けない心の持ち主であることが、長期的な成功への鍵とされています。例えば、現在の楽しさや快楽を我慢して努力することで、将来のより良い成果や報酬を手に入れることができるとされています。
健康やダイエットの観点からも、短期的な欲求に負けず、健康的な選択を続ける自制心が必要です。このような自制心をサポートしているのが、私たちの脳の部位、前頭葉です。近年の研究では、IQ以外の非認知能力、例えば目標達成のための持続力や自制心、人間関係の協調性など、数値で表せない能力が注目されています。この非認知能力は、個人の学業や仕事、さらには犯罪歴や健康状態にも影響を及ぼすことが明らかにされています。
非認知力について書いときます。
1. 非認知能力とは?
非認知能力は、認知能力や知識とは別の領域の能力や特質の集合体として捉えられます。これには、感情の制御、動機付け、持続性、自制心、社会的認識、コミュニケーションスキルなどが含まれます。非認知能力は、時に「ソフトスキル」とも呼ばれ、日常生活や職場での成功を助ける能力として評価されます。
2. 主要な非認知能力:
自制心: 衝動や欲求を抑制し、適切な行動をとる能力。
持続性: 目標に向かって努力を続ける能力。
感情の調整: 自らの感情を適切に理解し、コントロールする能力。
注意力: 特定のタスクや情報に集中する能力。
動機付け: 目標に向かって努力する動機を持つ能力。
問題解決: 複雑な状況で効果的な戦略を用いて課題を解決する能力。
社会的認識: 他者の感情や視点を理解し、共感する能力。
3. 非認知能力の重要性:
学業の成功: 学業成績やテストのスコアだけでなく、非認知能力は学校での成功や継続的な学習の意欲に大きく関与します。
社会的成功: 良好な人間関係の構築や、他者との協力といった社会的なスキルは、非認知能力の一部として捉えられます。
職場での成功: チームワーク、コミュニケーション、リーダーシップなど、職場で求められる多くのスキルは非認知能力に基づいています。
生涯の成功: 非認知能力は、健康的な生活習慣の形成やストレスの管理、そして全体的な生活の質の向上にも寄与します。
非認知能力は、知的能力や専門的なスキルだけでは得られない、生涯を通じての成功や満足を助ける要素を提供します。このため、教育や職場研修などの環境で、非認知能力の育成や強化が重要視されています。
非認知能力を評価するための著名な実験として、マシュマロテストが知られています。この実験では、子供たちが短期的な欲求に負けるか、長期的な報酬のために自制するかを評価しました。結果として、自制心の強い子供たちは、大人になった際にも多くの成功を収めていました。
マシュマロテストは、自制心や遅延報酬の概念を調査するために行われた心理学の実験です。以下に、その詳細をまとめてみます。
実験の背景:
1960年代に、スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルによって始められました。この実験は、子供たちの遅延報酬の能力、つまり「即座の報酬を放棄し、将来の大きな報酬のために待つ能力」を調べるものでした。
実験の手順:
4~6歳の子供たちを一人ずつ部屋に入れる。
子供の前に、マシュマロまたは類似の甘いおやつを1つ置く。
実験者は子供に対して、以下の選択を与える:
すぐにマシュマロを食べることができる。
あるいは、実験者が部屋を出て、後で戻ってきた時に2つのマシュマロを得るために待つことができる。
実験者は部屋を15分間離れる。
子供の選択とその待つ時間を記録する。
実験の結果:
一部の子供たちは待つことなくすぐにマシュマロを食べてしまった。
他の子供たちは様々な自制の方法(マシュマロを見ないようにする、歌を歌うなど)を使用して、2つの報酬を得るために待った。
追跡調査:
実験後の年月が経過した後、ミシェルと彼のチームは実験に参加した子供たちを追跡調査しました。その結果、マシュマロを待つことができた子供たちは、成績が良い、自己報告によると自制心が高い、社会的な成功があるなど、さまざまな生活の側面でより良い結果を示していることがわかった。
考察:
マシュマロテストは、自制心や遅延報酬の概念を示すものとして広く知られています。この実験は、子供の若い時期の自制心が、成人時代の成功の指標となることを示唆しています。ただし、後の研究では、結果は必ずしも単純ではないこと、背景や環境などの他の要因も影響することが示されています。
以上がマシュマロテストの概要です。自制心や遅延報酬に関する研究は、現在も進行中であり、このテストはその基盤として広く参照されています。
私たち自身の経験を振り返っても、短期的な誘惑に負けずに努力することで、後での大きな報酬や成功を手に入れることができることが分かります。そして、このような自制心や判断力をサポートしているのが前頭葉の働きです
まとめ
まとめとして、今日のブログの要点を再確認しましょう。
- 人間の強烈な感情や喜びは、脳の側頭葉に存在する扁桃体で生まれます。これは脳の感情システムで、感情のアクセルの役割を果たしています。
- 一方、これらの感情をコントロールしたり、高度な判断を下す前頭葉は、感情のブレーキとしての役割を果たしています。
結論として、安定した心の持ち主になるため、また、強固なメンタルや自制心を持つためには、前頭葉の鍛練が鍵となります。感情を適切に制御し、自分自身を成熟させるためには、前頭葉をしっかりと鍛える努力が不可欠です。
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