地政学で見る世界と日本

歴史

【地理/地学】地政学×歴史で見る!世界を制覇する鍵

世界の動脈と地政学の精妙

我々が慣れ親しんでいる常識や日常の中にも、実は多くの奥深い知識や背後に流れる理論が隠されております。地政学という学問がその一つでございます。地政学とは、単純に言えば、地理学と政治学が結びついたものであり、国々や地域の政治的動きと、その土地の地理的特性との関係を研究するものです。

古き良きヨーロッパの1890年代、この学問が発祥したと言われています。その原動力となったのは、どの地域を制すれば戦争に有利になるのかという問いからでした。そして、この理論を活用し、成功を収めたのは、後のドイツの礎となるプロイセン王国でありました。彼らは、地政学の原理を活かし、1870年に勃発したフランスとの戦争において、驚くべき戦術を駆使して大国フランスを打ち破り、ドイツ帝国の誕生の礎を築きました。

地政学の中心的な理念は、世界の特定の地点、通称「チョークポイント」を制することです。これは、海上物流や交通の要所となる地点を指し、スエズ運河やパナマ運河など、狭隘ながらも多くの船舶が通行する地点を示すものであります。これらの場所は、一つの事故や紛争が発生すれば、世界経済に大きな影響を及ぼすことができるほどの要所となっています。

例として、2021年のスエズ運河での事故が挙げられます。一隻の日本のコンテナ船が座礁し、狭い運河を封鎖する事態が発生しました。これにより、多数の船が通行できず、世界の物流に大きな影響が出ました。このように、チョークポイントは非常に戦略的な重要性を持っており、覇権国家であるアメリカは、これらの要所を含む世界中に軍事基地を設置して、物流や他国の動きを監視しているのです。

日本にも、米軍基地があります。これは、アメリカが物流を支配し、また他国の動きを牽制するための戦略的な配置であることが理解されるでしょう。このように、地政学は、国々の動きや世界の構造を理解する鍵となります。

サクッとわかる ビジネス教養 地政学 [ 奥山 真司 ]

価格:1320円
(2023/10/23 12:57時点)
感想(22件)

日本における地政学と世界の衝突地

我々は日常の中で「遠い世界での出来事は関係ない」というのは間違っています。それは、日本が長らく平和な島国として存在してきたための錯覚かもしれません。しかしながら、実際には日本も複雑な歴史的背景や地政学的課題を抱えています。

世界三大衝突地と呼ばれる地域は、確かに日本から地理的には離れているように感じられるかもしれません。

世界3大衝突地について

地政学における世界三大衝突地とは、多くの研究者や地政学者が指摘する、戦略的に重要で、同時に紛争が繰り返し発生する傾向のある地域を指します。以下はその代表的な3つの地域について詳しく説明します。

中東:

  • この地域は、イスラム教の宗派間の対立(シーア派とスンニ派)、イスラエルとアラブ諸国との対立、さらには地域の覇権をめぐるイランとサウジアラビアの対立など、多くの紛争要因が絡み合っています。
  • 石油という世界経済にとって極めて重要な資源が豊富に埋蔵されているため、多くの大国がこの地域の影響を受けやすいです。
  • 近年では、米国とイランの対立やシリア内戦などがこの地域の紛争を象徴しています。

南シナ海:

  • 南シナ海は、中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾などが領有権を主張する地域で、複数のスプラトリー諸島やパラセル諸島を巡る紛争が続いています。
  • 資源の豊富さや、世界の主要な航路が通る戦略的な位置にあるため、大国間の緊張が高まる要因となっています。
  • とりわけ、中国の人工島建設や軍事的な活動がこの地域の緊張を高めています。

ウクライナとロシアの境界地域:

  • 2014年のウクライナのクリミア半島のロシアによる編入や、ドンバス地域での戦闘が続くなど、この地域は東西の大国間の緊張の焦点となっています。
  • これは、旧ソ連の構成国であるウクライナが西側との関係を強化する一方で、ロシアがその影響圏内での地盤を確保しようとする動きとの間での対立が背景にあります。
  • NATOの東方拡大や、ヨーロッパとのエネルギー供給ルートの確保など、戦略的な要因がこの地域の紛争を複雑化しています。

これらの地域は、地政学的な要因だけでなく、歴史的、文化的、宗教的な背景も複雑に絡み合っており、解決が難しい問題を抱えています。

世界3大衝突地とアメリカ・ヨーロッパ・中東・ロシアとの関係

世界の三大衝突地の中で、中東は特に多くの外部勢力が関与しており、その中でアメリカ、ヨーロッパ、そしてロシアとの関係は非常に重要です。以下、中東とこれらの地域との関係について概説します。

中東とアメリカ:

  • 石油: アメリカは長らく中東の石油に依存しており、この関係からサウジアラビアなどの湾岸諸国との強固な同盟関係が形成されてきました。
  • イスラエル: アメリカはイスラエルの最大の同盟国として、軍事・経済援助を行っており、イスラエルとアラブ諸国との対立にも影響を与えてきました。
  • 対テロ戦争: 9/11テロ事件以後、アメリカはアフガニスタンやイラクに軍事介入。特にイラク戦争は地域の勢力均衡を大きく変える結果となった。

中東とヨーロッパ:

  • 植民地時代の遺産: フランスやイギリスなどのヨーロッパ諸国が19~20世紀に中東地域を植民地として統治していた。この時期の境界線や政策が現在の中東の紛争の一因となっている。
  • 難民問題: シリア内戦をはじめとする中東の紛争から多くの難民がヨーロッパに流入。これがヨーロッパの内政や移民政策に大きな影響を与えている。
  • エネルギー: ヨーロッパは中東からの石油やガスの輸入に依存しているため、地域の安定に大きな関心を持っている。

中東とロシア:

  • 武器輸出: ロシアは中東の多くの国々に武器を輸出しており、これが外交の要因の一つとなっている。
  • シリア内戦: ロシアはアサド政権の最大の後援国として、シリア内戦に軍事的に介入している。この介入はロシアの中東での影響力を増大させる結果となっている。
  • 対テロ戦争: ロシアもまた、テロリズムとの戦いを公言しており、中東のテロ組織との関わりを持っている。

これらの関係は、中東地域の複雑な歴史や宗教的・文化的背景、そして経済的・戦略的利益が絡み合ったものとなっており、紛争の解決を難しくしています。

日本における地政学リスク

私たちの身近な日本の周囲にも、数々の地政学的リスクが潜んでいます。

例えば、過去には日本が大陸への侵攻を試みた歴史が存在します。具体的には、663年の白村江の戦いや1274年の元寇、そして1592年の文禄・慶長の役といった出来事が挙げられます。しかしその後、日本は江戸時代を迎え、約260年の鎖国政策を採用しました。この期間中、日本は外国との接触を極限まで制限していました。この鎖国は、1853年のペリー提督の来航によって終わりを告げ、日本は再び国際社会との交流を開始しました。

現代の日本は、過去のような侵略政策を採用していません。それ故、平和な国との印象が強いでしょう。しかし、北方領土や尖閣諸島の問題など、未解決のテリトリアルな課題が存在しています。例として、北海道の北に位置する択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4つの島は、第二次世界大戦後にロシアによって占拠されました。ロシアは既に広大な領土を有していますが、これらの島々は地政学的に重要な位置にあります。ロシアの主要な航路や、太平洋へのアクセスポイントとしての役割があります。

また、過去に安倍晋三元首相とロシアのプーチン大統領の間で北方領土問題についての交渉が行われていましたが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻により、その交渉は頓挫しました。

尖閣諸島問題

尖閣諸島尖閣諸島は東アジアの南西部、具体的には日本の石垣島の北に位置しています。この島々は日本と台湾の間で近いため、地政学的な意味合いも持っています。台湾との距離の近さから、中国が台湾を侵攻する場合、尖閣諸島の位置が戦略的に重要になる可能性が示唆されています。

この地域は豊かな漁場としても知られており、その資源が領有権を巡る要因の一つとなっていることが明らかにされています。また、尖閣諸島の領有権が変わると、地域の魚資源へのアクセスが変わる可能性があることも示唆されています。

日本には米軍基地があり、特に沖縄や横須賀が米国にとって戦略的に重要な拠点であることが指摘されています。沖縄はアジアの各国への距離が近く、横須賀には大型艦船のドックがあり、艦船のメンテナンスや修理のための重要な拠点としての役割を果たしています。

まとめ

世界を見渡すと、ユーラシア大陸の巨大な力を持つロシアや中国の動向は日本にとって重要で、太平洋へのアクセスを制限するような位置にある日本は、特にアメリカの地政学戦略上、非常に重要な役割を果たしている。

そして、この戦略の中で、朝鮮半島は日本にとっての緩衝地帯としての価値があるし、台湾の位置も無視できない。現在、台湾との関係は良好だが、韓国との関係はまだ完全には修復されていない。

しかしながら、新しい世代間での文化や言語の交流、さらには困難な状況下での協力など、若者たちの中には互いの国との絆を深めたいという意識が育っている。この若い世代が持つ開かれた視点と共感は、未来の国際関係において明るい希望を秘めているのではないかと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました