今回はベストセラー犬塚壮志さんの「頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術」についてブログを書いていこうと思います。
ビジネスの世界は、競争が厳しく、相手に見下されることは避けなければならない環境です。今回は、そのようなビジネスの現場で尊敬され、自己主張を通すための3つの重要なポイントについて解説します。ビジネスという言葉は広範にわたりますが、ここでは主に、上司へのアイデアの提案、同僚や部下への指示、あるいはクライアントへの営業活動など、職場での交渉全般を意味します。
一般的に、ビジネスの世界は「弱肉強食」の法則が働く場所です。これは、強者が弱者を支配し、競争が激しいことを示しています。皆さんが友好的で、微笑みながらコミュニケーションを取っているように見えるかもしれませんが、これは仕事の一部であり、各々の利害関係が絡んでいます。それゆえ、無邪気で理解が浅いと思われると、すぐに相手に利用されてしまう可能性があります。これは避けるべき状況です。
だからこそ、交渉の場で尊敬を集め、無視されない人々が実践している3つの戦略を紹介します。これらの戦略を学び、活用することで、ビジネスの現場で食べられることなく、自分の主張をしっかりと通すことができるでしょう。では、その詳細について説明しましょう。
撤退ラインを決めておく
相手に舐められないための最初の極意は、「撤退ラインを決めておく」ことです。これは交渉において最も大きな失敗を避けるための方法です。交渉が上手くいかない時、中途半端な結果に甘んじるのではなく、いつ交渉を止めるか、その「ライン」を決めておくことが重要です。
たとえば、あなたが新しい仕事を探していて、年収について交渉しているとします。現在の年収が500万円だとしたら、それ以下の額を提示されたら内定を受け入れず、違う仕事を探すと決めておきます。これが撤退ラインです。このラインがしっかりとある人は、交渉が得意な人と言えます。
しかし、相手に「撤退ラインが定まっていない」とバレてしまったら、それは問題です。相手があなたをうまく説得して、「450万円でもいいんじゃない?」と思わせ、条件を受け入れさせようとするでしょう。しかし、この場合でも重要なのは、あなたが自分でしっかりと理由を持って撤退ラインを設定していることです。
例えば、特定のスキルや経験を得るために一時的に年収を下げるという戦略を立てている場合など、その決定が最適であると考えているなら、それは構いません。大切なのは、「なぜそのラインを設定したのか」をはっきりと理解していることです。
これは交渉における基本的な戦略ですが、実は多くの人ができていないポイントです。だからこそ、最初はその「撤退ライン」をメモして目に見えるところに置いておき、交渉するときにそれを見返すことをおすすめします。
話し上手に頼らない
2つ目のポイントは、「話し上手に頼らない」ことです。交渉には、話し上手でなくても大丈夫です。たしかに、滑らかに話す人は交渉が上手いことが多いですが、それは間違った理解です。
スムーズに話す人が本当に素晴らしい点は、相手の情報を事前にしっかりと集めているところです。例えば、営業マンが客の会社のウェブサイトを詳しくチェックして、クライアントの情報と自分の商品情報を頭の中で一致させているために、自信を持って話すことができます。
さらに、ただ情報を集めるだけでなく、その情報から「仮説」を立てる能力があると最高です。相手が何に困っていて、何に興味があるのかを予測し、その仮説に対して自分の商品が最適だと提案することができるなら、それは本当の交渉上手です。
彼らは情報を十分に持っているため、後から出てくる事情にも対応できるようになっています。その自信が滑らかな話し方につながるのです。つまり、実際に交渉のテーブルにつく前に、既に交渉は始まっているのです。
公式ウェブサイトやIR資料、SNSなど、相手の情報をしっかり調べ上げて、交渉のテーブルにつく時には、自分の提案を聞かないのは相手が損だと思わせるレベルまで準備をしておくことが最も重要です。
つまり、大げさな話し方よりも、コツコツと情報を集めることが交渉の鍵なのです。
相手を敵と見なさない
3つ目のポイントは、「相手を敵と見なさない」ことです。交渉の強者は、決して交渉相手を敵とは思わないんです。一方、交渉の弱者は相手をなんとなく攻略しなければならない目標とみなし、自分の立場を守らなければならないと思ってしまいます。そうなると、相手も自分を敵だと思い、結果的に悲しい結果になることが多いんです。
たとえば、自分が営業マンで、高く売りたい自分と安く買いたいお客さんは、立場が全く反対だから、敵ではないかと思うかもしれません。しかし、実際にはそうではなく、相手と対立する立場ではなく、共通の利益を見つけることが大切なんです。
営業マンとお客さんの例で言えば、確かに「高く売りたい」と「安く買いたい」は対立するように見えます。でも、もう少し深く見てみると、両者ともに会社で評価されたい、出世したいという共通の目標があったりします。また、逆に「これだけは絶対避けなければならない」という共通の問題点もあるかもしれません。
それらの共通の利害関係を自分から探し出すことが大切なんです。例えば、そのお客さんが、安く買いたいよりも、自分の上司である田中部長の評価を気にしていることに気づいたら、田中部長に認めてもらうためには本当に安く買うことが必要なのか、それとも納期のスピードや田中部長への接待が必要なのかなど、他の方法が見つかるかもしれません。
そうすれば、そのお客さんはもはや敵ではなく、田中部長を満足させるための共通の目標を持つパートナーとして、交渉を進めることができるんです。
実践テクニックを7つ
では実際にビジネスシーンで使える実践テクニックを7つ紹介します。
危険な人物に対して小さな借りを作る
実践テクニックの1つは、「危険な人物に対して小さな借りを作る」ことです。これは、自分が進めたいプロジェクトが途中で崩れる可能性がある「危険人物」がいる場合、積極的にその人に近づき、小さな頼み事をするという戦略です。
多くの人は、小さな借りを作るのではなく、大きな恩を売ろうと思いがちです。つまり、危険人物を説得するために、大きな利益を提供しようとします。しかし、これは困難なことです。なぜなら、危険人物はしばしば自分に対して一定の考えを持っているため、その人に大きな恩を売るほどの貢献をすることは難しいからです。実際にはほぼ不可能とも言えます。
そこで役立つのが、小さな頼み事をすることで借りを作るというアプローチです。これは心理学における「認知的不協和」の原理を利用したテクニックです。つまり、相手に「自分が嫌いなはずのこの人の頼みを受け入れた。これはおかしい」と思わせることで、相手の考え方を変えるのです。この認知的不協和を感じると、人間の脳はその矛盾を解消したくなり、結果的に相手の敵意が薄れていくのです。
つまり、危険人物に対しては大きな恩を売るのではなく、小さな借りを作ることが重要なんです。
満腹を狙う
次のテクニックは「満腹を狙う」です。これはとてもシンプルな考え方で、交渉相手から「はい」という返事をたくさん引き出したい時には、相手が満足感を得ているタイミングを狙うというものです。
人間は、食事で満腹になった時や、快楽を感じている時など、満足感を得ている状態だと、通常よりも肯定的な判断をしやすい傾向にあります。これは、脳内の快楽物質であるドーパミンが活発に分泌されているからです。つまり、このドーパミンが活発に分泌されているタイミングを狙って交渉を行うと良いのです。
例えば、相手から「はい」という返事を引き出したいなら、満腹になったタイミングを狙うか、あるいは食事をしながら提案するなどがおすすめです。
決定前提で詳細を聞く
次のテクニックは「決定前提で詳細を聞く」です。これは、「アサンプティブクローズ法」という手法とも言われています。アサンプティブは、前提という意味で、クローズは合意に至るという意味です。つまり、自分の希望を前提として、それに関する詳細を聞くという方法です。
ここで、具体的な例を挙げてみましょう。仮に上司に対して2日連続の有給休暇を取得したいとお願いする場合を考えてみます。
普通のやり方では、「すみません、課長。実は来月2日連続でお休みを頂きたいと思っているんですが」と頼むことが一般的です。しかし、アサンプティブクローズ法を使うと、こう言います。「すみません、課長。来月の13日と14日はお休みをいただく予定なのですが、その間の私の仕事を藤原さんにお願いしようと考えています。それは大丈夫でしょうか?」。
この方法のポイントは、2日連続で休むことを前提にした上で、その詳細について上司の判断を求めるという点です。これにより、上司も拒否しにくくなるため、有給休暇を取得しやすくなります。
ただし、このテクニックは注意が必要です。自分が有利な場面で使うべきであり、日常的に使いすぎると、自分が強引な人と見られ、周りから警戒されてしまう可能性があるからです。ですので、自分が有利な状況、つまり「勝負どころ」で使うのが最適です。
1回持たせる
次に説明するテクニックは、「1回持たせる」です。これは「試しに使ってみてください」といった試供品の考え方と同じです。
人間には、「授かり効果」という特性があります。これは、一度手にしたものを高く評価し、それを手放すことが難しくなるという傾向のことを指します。これをうまく活用することで、交渉がスムーズに進むことがあります。
例えば、商品の特性や魅力を口頭で説明するよりも、一度その商品を相手に触ってもらったり、使ってもらったりすることで、商品の良さを実感してもらう方が効果的です。例えば、あなたが車を売りたいときは、試乗してもらう。家を売りたいときは、モデルルームに来てもらう。これらは交渉成立への最短ルートなのです。
しかし、反対に、自分が何かを売り込まれる側になったときは、この「授かり効果」に気をつける必要があります。無料サンプルやお試し期間を提供されたとき、その商品やサービスを必要以上に高く評価してしまい、本当に必要ないにもかかわらず、手放したくないという感情で買ってしまうことがあります。そのような場合は、客観的に自分のニーズを考え直し、必要性を再評価することが重要です。それを怠ると、うまい交渉術に引っかかってしまい、結果として財布が軽くなってしまうこともあります。
反論せずに完璧かどうかを確認する
次のテクニックは「反論せずに完璧かどうかを確認する」というものです。これは、交渉がうまく進んでいない場合に有効な方法です。
大雑把に言えば、交渉相手の判断を否定するのではなく、「あなたの判断は完全に正しい、問題がない、ですよね?」と相手に確認を求めることで、相手にその意見を再評価させるテクニックです。
例をあげて説明します。営業先の担当者が、「御社のサービスは高すぎて、我々はそれを購入することができません。上司と相談した結果、そういう判断になりました」と言った場合、あなたが反論するのではなく、以下のように相手に考えてもらうのです。
「上司とのご相談の結果、我々のサービスが高すぎるとの判断になったとのこと、理解しました。しかし、その判断は、あなた、山崎さん自身も完全に同意している、というわけですよね?」
このように問いかけると、山崎さん自身が何か異なる意見を持っている可能性があります。例えば、「確かに金額は高いけれど、ライバルのA社やB社がこのサービスを使い始めたら困るな」というような感想を述べてくれるかもしれません。
そこであなたは、「その観点も大切ですね。では、ライバルのA社やB社が我々のサービスを先に導入した場合の懸念点について、資料をまとめて次回の会議でご説明させていただきましょう。その際にまた少しお時間をいただけますでしょうか?」と提案します。
つまり、自分で逆転の機会を必死に探すよりも、一度相手に考えてもらう方が効果的なのです。ビジネスの世界では、完全にリスクのない決定など存在しないので、その中に潜む懸念事項を探し出し、それに相手自身が気づかせることが重要なのです。
ただし、相手が大きな誤解をしている場合は、あなた自身がそれを指摘するべきです。しかし、小さな懸念事項については、あなたが指摘するのではなく、相手に気づいてもらい、それを口に出してもらう方が交渉を有利に進めることができます。
たとえば、あなたがあまりにも必死に小さな問題を指摘しすぎると、相手からは「小さいことにこだわっている」という印象を持たれてしまう可能性があります。一方、相手が自分で「ちょっと気になるな」と感じた問題を口にすると、それが交渉を逆転させるきっかけになることもあります。
ですので、大きな誤解がない限り、ちょっとした懸念事項については相手に気づかせ、相手自身に口にさせることを心がけましょう。このテクニックを覚えておくと、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。
あえて反論して揺さぶる
このテクニックは「あえて反論して揺さぶる」というもので、交渉があまりにもスムーズに進んでしまって、相手の意図が本当に真剣なのか、それともただの話題作りなのかが不明な時に使います。その方法は、あえて反論をすることで、相手がどのように反応するかを見るというものです。
例えば、あなたが現在営業部にいて、商品企画部に移動したいと思っているとしましょう。そんなあなたに商品企画部の部長が、「あなたを商品企画部に引き抜くよ」と言ってくれたとします。しかし、このような話は突然起こるもので、実際には実現しないことが多いです。これは、部長がただ自慢したいだけで、実際にはあなたを引き抜くつもりがない可能性があるからです。
そこで、「本当に商品企画部に引き抜くつもりなのか?」を確認するために、あなたはあえて反論をしてみます。「私は頑張る自信があるのですが、他にも年上で、営業実績がある優秀な先輩がたくさんいます。私で大丈夫ですか?」と尋ねてみます。
この反論に対して部長が曖昧な返事をした場合、例えば、「まあ、色々問題はあるかもしれないけど、私が面倒を見るから大丈夫さ」と言った場合、それはあまり信用できないかもしれません。しかし、部長が具体的な返事をしてくれた場合、「あなたはデータに基づいた強力な営業資料を作る能力があるから、商品企画部に向いていると思うよ」と言った場合、それは信頼できる可能性が高いです。
このように、交渉相手がどれだけ本気で、その意見や提案が現実的なものなのかを確認するために、あえて反論をしてみるというのがこのテクニックです。この方法を使えば、相手の真剣度を見極めることができるでしょう。
相手の決断を褒めちぎる
「相手の決断を褒めちぎる」というのは、交渉が成功した後に行うテクニックです。交渉が成功したらもうそれで終わり、と思うかもしれませんが、交渉は常に反転の可能性を秘めています。なぜなら、交渉のキーポイントは相手が心の底から納得することです。心からの納得がなければ、契約書にハンコを押した後でもトラブルが起きる可能性があるのです。これは、ビジネスの世界においては感情が重要な役割を果たすためです。
ですから、相手が「はい」と言ったら、そこでゴールだと思わず、さらに一歩進めて相手の決断を褒めることが重要です。
例えば、あなたが商品を販売し、お客様がそれを購入したとしましょう。その際に、「この商品をこの価格で買うのはこれからなかなかないでしょう。本当に良いタイミングでしたね」と言って、お客様の決断を賞賛します。
また、上司に提案を受け入れてもらった場合、その決断を褒めることも大切です。「課長のおかげで提案内容を大いに改善できました。感謝しています。この案件の実現に向けて全力を尽くします」と言って、上司の決断を尊重し、敬意を表します。
この行為はとても大切で、相手があなたと離れた後に疑問を抱かないようにするためのものです。あなたと別れた後に「あれ、あの人のファンって本当に大丈夫だったのかな」と思わせてしまうと、それがトラブルの種になってしまう可能性があります。
だからこそ、相手の決断に敬意を示しましょう。相手が自分の判断を誇りに思うほど、そして心から納得するほど褒めちぎることが大切です。これは交渉の一部であり、成功するためには欠かせません。
まとめ
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今回は、交渉術における7つのテクニックを紹介しました。それぞれのテクニックは、交渉の成功に役立つ重要な要素です。
交渉はただ相手に自分の意見を押し付けるだけではなく、互いの理解を深め、良い結果を生み出すための手段です。しかし、交渉は常に相手との関係性や状況に左右されます。したがって、どのテクニックをいつ使うべきかを判断する洞察力が求められます。
また、交渉が成立した後も大事なポイントがあります。それは、相手の決断を褒め称え、その選択を尊重することです。これにより、相手が後から疑問を抱くことなく、より良い関係性を築くことができます。
これらのテクニックを身につけることで、あなたの交渉力は大きく向上していただければと思います。
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