もしハリスが大統領になったら世界はどうなるのか?【もしハリス】

政治・経済
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もしハリスが大統領になったら世界はどうなるのか?【もしハリス】アメリカ大統領選がこれまでにない盛り上がりを見せています。バイデン氏とトランプ氏による討論会に始まり、トランプ氏の銃撃事件、そしてバイデン氏の撤退表明という大騒ぎぶりです。そんな中、新たに注目されているのがバイデン氏の後継者であるカマラ・ハリス氏です。米国初の黒人女性でアジア系の大統領を目指すという彼女は、凄まじいスタートダッシュを切っているようですが、一体どんな人物なのでしょうか?

もし彼女が選挙に勝てば、アメリカや世界はどうなるのでしょうか?そこで今回は、カマラ・ハリス氏の人物像と思想、その可能性について検証します。最後までご覧いただければ、今後のアメリカ大統領選の注目ポイントから、選挙後の世界まで理解できるようになります。それでは早速、やっていきましょう。

ハリス大統領誕生の可能性とその影響

バイデン氏が選挙戦から降り、そのバイデン氏の代わりに出馬することになったのが現職の副大統領であるハリス氏です。世論調査によると、ハリス氏とトランプ氏の支持率は今、拮抗しています。一部では、民主党としてはこのままバイデン氏で行くと負けてしまうから、新規一転してハリス氏に変えたという見方もあるようです。今のところ、その判断はうまくいっているように見えます。実際、新しく出てきたハリス氏について、アメリカ国内外から大きな注目が集まっています。これまではバイデン氏の影に隠れていたハリス氏について、アメリカの有権者も世界各国も彼女の主張に注目し始めたという段階なのです。

アメリカの選挙には、本来まず予備選挙というものがあります。民主党と共和党それぞれの党の中には複数の候補者がいるのですが、その中で本選挙に進む党の代表者を1人に絞るための戦いです。それを勝ち上がった民主党と共和党の両党の候補者同士が最後に一騎打ちを行うというのが、アメリカの選挙のステップとなっています。ですから通常は、予備選挙を勝ち上がっていくうちに何度も演説を行い、アメリカ国民に対して自分のことや政治方針を知ってもらうという段階があるのです。それを経て初めて選挙戦に出馬できるわけですが、ハリス氏は今回、その段階を経ていません。つまり、彼女は突然本選挙に踊り出て、これから自分の情報や公約などを発信していくという、通常とは違う状況にあるのです。

カマラ・ハリス氏の人物像とこれまでの歩み

それでは、ハリス氏とは一体どんな人物なのでしょうか。ハリス氏は1960年生まれの女性で、父親はジャマイカ出身、母親はインド出身です。ハリス氏は元々検事を務めていた人物で、政治の世界に入ったのは2017年、今からほんの7年前のことです。一方で、バイデン氏は1970年から現在まで54年間も政界に身を置いてきた超ベテランですから、政治家としてのハリス氏はまだまだ経験が浅いことがわかります。彼女はバイデン氏によって2021年に副大統領に大抜擢されましたが、このこと自体がアメリカでは異例の出来事でした。女性としても黒人としても、そして南アジア系としても初めてアメリカの副大統領となったのです。

その後もハリス氏は副大統領として様々な「アメリカ初」を更新してきました。2021年には、バイデン氏が健康診断を受けている間の85分間だけ、大統領の権限を担いました。これはアメリカで女性が大統領の権限を握った初めての瞬間です。さらに同じ年には国家宇宙会議の議長としても務めましたが、これも女性初、さらに有色人種としても初の出来事でした。

そして、ハリス氏がもし大統領になれば、さらに大きな「アメリカ初」を歴史に刻むことになります。アメリカ初の女性大統領、そして南アジア系の大統領です。特に「女性」というのは、アメリカの歴史において大きな意味を持ちます。ハリス氏が副大統領になるまで、アメリカでは大統領も副大統領も全て男性が務めてきました。2016年にはヒラリー・クリントン氏が主要政党で初めての女性大統領候補になりましたが、選挙には敗れてしまいました。その時、敗北演説でクリントン氏はこう話しています。「私たちは未だ最も高く、硬いガラスの天井を破ることができていない。」この「ガラスの天井」というのは、男性によって組織された女性の進出を阻むような社会のことです。この言葉から8年が経ち、今度はハリス氏がアメリカの初代女性大統領の座に再び挑んでいるのです。

ハリス氏が直面する主要な問題点

女性大統領候補として特に注目されることには、例えば中絶問題があります。日本人には少し分かりづらい感覚かもしれませんが、中絶というのが女性の権利や家族観、そして宗教観にまで深く関わってくるテーマなんです。実際にアメリカでは中絶に反対する過激派もいて、中絶クリニックが襲撃されるなどの事件も起こっています。2022年にはアメリカ最高裁が中絶の権利は憲法によって認められないという考えを示したことにより、アメリカでは凄まじい議論が巻き起こっています。

元々、バイデン氏やハリス氏の属する民主党は中絶を認めるという立場を取っています。その中でも副大統領であるハリス氏は、中絶の権利を主張するとして大々的に活動をしてきたのです。それに対するトランプ陣営はというと、中絶には断固反対派です。ここが激しく対立することは間違いありません。しかし、これはトランプ氏とハリス氏がそれぞれに掲げるアメリカの未来像のほんの一つの違いに過ぎません。それでは、もしもハリス氏がアメリカ大統領になったら、アメリカはどうなるのでしょうか?それはトランプ氏の目指すものとはどう違うのでしょうか?ここからハリス氏の政治政策について見ていきましょう。

ハリス氏は選挙戦に勝つために、これからはっきりとした自分の方針をアピールしてくるはずです。その方針が、彼女が実際に大統領になった時の政策と深く関わってきます。これからの演説などでだんだんと明らかにされていくはずですが、今回は現時点で予想できる点を解説していきます。

まず最も大きな要素として、バイデン大統領の後継者であるという彼女の立場があります。つまり、そこからあまりに大きな路線変更はできないということです。民主党という政党の代表としてバイデン氏が君臨していたところに、そのままハリス氏がすっぽりと入るわけです。選挙というのは大統領候補者が自分だけで作戦を決めるのではなくて、超大人数のスタッフと大量のお金が動く巨大なチーム戦です。ハリス氏

はその巨大なチームの1番上にポンと置かれた状態なので、そう簡単にバイデン氏の政策を転換することはできません。

ハリス氏にとって苦しいことに、バイデン政権の間、民主党の支持率はかなり下がりました。それもあって、バイデン氏vsトランプ氏の選挙戦ではトランプ氏が優勢だったわけですが、ハリス氏は11月の投票日までにそれをひっくり返すことが求められます。これは簡単なことではありません。

まず、バイデン政権が行ってきた失敗点をハリス氏は明確に攻撃することができません。そんなことをすると、党の信用自体が落ちることになります。ですから、ハリス氏が最初に述べるであろうことは、まずバイデン政権の実績を評価することです。その上で、バイデン氏の悪かった点については「私はこうやって改善します」というややこしい戦略を立てなくてはならないのです。実際、これは選挙には不利な立場とも言えます。過去のアメリカ選挙を見てみると、大統領に代わって現職の副大統領が選挙戦に出馬し、その選挙に勝利したのはたったの1度、1988年のジョージ・ブッシュ氏だけです。厳しい戦いになることは間違いないでしょう。

そこでポイントとなるのは、ハリス氏がどうやってバイデン氏の失敗を乗り越えるのか、そして「自分はバイデン氏と違うのだ」という点をアピールできるのかというところです。

では、バイデン政権の乗り越えるべき点とは何なのでしょうか?それは大きく3つあります。インフレ、不法移民対策、そして外交政策です。順番に見ていきましょう。

ハリス氏のインフレ対策の課題

まずは、現代アメリカ人にとって一番の関心事とも言えるインフレ問題です。アメリカでは、バイデン政権の発足以降、急速にインフレが進みました。2021年にバイデン氏が政権を取る前の数年間、アメリカのインフレ率は毎年2%程度で推移していました。それが2021年には4.618%、翌年にはさらに上がり8%近くにもなりました。バイデン政権のもとで国民の所得も順調に上がってはいたのですが、それよりも物価が上がりすぎて、国民の生活は良くならなかったのです。国民からすれば、トランプ政権の時には落ち着いていたインフレが、バイデン政権に変わった途端に吹き出したわけですから、政権への評価に直接響く問題というわけです。

ハリス氏はこれをうまく説明し、「私はバイデン氏とは違う」ということを示さなくてはなりません。しかし現状、ハリス氏はこのインフレ対策について、きっちりとした方針を打ち出せてはいないという声が上がっています。バイデン氏の経済政策から大きな転換は見られないとの見方もあります。

その一方で、演説では子育て世代や高齢者のために医療や保育のサービスを充実させるとして、社会保障には積極的な姿勢を見せています。選挙戦に勝つためにも、選挙に勝ってからの取り組みとしても、インフレ問題について解決策を提示できるかどうかは重要なポイントとなるでしょう。そこは、彼女がトランプ氏から批判されやすい弱点でもあるのです。

不法移民問題とハリス氏の対応

バイデン政権の失態の2つ目は、不法移民対策です。アメリカにはメキシコの国境を超えて毎年大量の不法移民が押し寄せてきます。主に中南米の国々からやってくる人たちです。メキシコからアメリカ側に国境を超えたところで現地民に助けを求める不法移民たちもいると言います。これはアメリカの治安を脅かす問題でもあり、アメリカ国民の不満は溜まっていきました。この不法移民問題を簡単に言えば、バイデン氏は悪化させてしまったのです。

トランプ全大統領は不法移民に対して厳しい政策を取り、メキシコとアメリカの国境に壁を建設しました。しかしバイデン氏は大統領になると、その建設をすぐにやめさせたのです。その結果どうなったかというと、毎年10万人程度だった国境付近の不法移民の拘束者がバイデン政権の1年目で170万人にまで膨れ上がりました。国境を超えるのが簡単になったと聞いて、これまでよりも多くの人が押し寄せたのです。

結局どうしたかというと、バイデン氏はトランプ元大統領が始めていた壁の建設計画をまた再開させることにしました。これはバイデン政権の大きな失態と言えます。しかも、今回の選挙戦にとってもっと悪いことがあります。バイデン政権の発足時からこの移民問題を任されていたのがハリス副大統領だったのです。つまり、ハリス氏にとってこの不法移民問題はできれば言及したくない、いわば弱点なんです。逆にトランプ氏からすればこれは自分の強みでもありますから、ハリス氏のこの弱点を積極的に攻撃してくるはずです。

もしハリス氏が大統領になったとしても、政策としてはバイデン氏が再開した不法移民の規制をそのまま進めていくことになるでしょう。しかし、元々民主党には移民の受け入れを緩和するという方針がありますから、その方針自体はなかなか変更できないはずです。どっちつかずの状態になってしまうこの移民問題では、ハリス氏はかなり厳しい立場に立たされています。

ハリス氏の外交政策とイスラエル問題

最後に外交政策です。バイデン政権の外交として最も議論になっているのがイスラエルへの武器援助問題です。イスラエルとハマスが戦闘を始めたことは日本でも大きく報じられました。アメリカは歴史的にずっとイスラエルに対する支援を続けてきたのですが、ここに来てその支援のあり方が疑問視されています。アメリカが供与している武器をイスラエルが国際法に違反してガザ地区への攻撃に使ったという疑いがあるからです。この攻撃によってガザ地区ではたくさんの一般人が犠牲になっています。

バイデン氏もイスラエルに停戦を促すということはしてきましたが、実際の停戦交渉にまではまだこぎつけられていません。バイデン氏の外交姿勢に対しては、党の中からも国民からも不満が出始めています。特にアメリカの学生たちが激しい抗議活動を続けています。ニューヨークのコロンビア大学では、デモ活動を行っていた100人以上が警察に拘束されるという事件もありました。

それでもバイデン氏は現状としてイスラエルへの武器供与をやめる姿勢を見せていません。ハリス氏もやはりこの点は受け継いでイスラエルの自衛権に対する支持を明確にしています。しかし、ハリス氏はバイデン氏よりもガザ地区の人道問題についてはもう一歩踏み込んだ姿勢を見せています。イスラエルのネタニヤフがアメリカを訪れ、米議会での演説を行った際には、ハリス氏はその演説を欠席していることにも注目です。つまり、ハリス氏はガザ地区の人道問題に疑問を持つ国民に寄り添う姿勢を見せているんです。

バイデン氏では収めることができなかったこの問題に、ハリス氏が新大統領としてもっと積極的に介入していくという可能性はありそうです。ただ、選挙戦という観点で見れば、トランプ氏の共和党はバイデン氏よりもさらにイスラエルに友好的ですので、それほど重要な論点とはならないでしょう。むしろ注目されるのは、選挙に勝った方の新大統領がどう停戦をさせるのかということです。トランプ氏はガザ地区の戦いをすぐにやめさせることを宣言しています。アメリカの新大統領には、より力強い交渉力を示すことが求められるのは間違いないでしょう。

ハリス氏とトランプ氏の外交方針の違い

さて、ここまでバイデン政権が抱えた3つの問題点と、その点を巡ってトランプ氏とハリス氏の攻防戦が起きるであろうということを解説しました。ここからは、今回の選挙によって変わるかもしれないアメリカの外交路線について、もう少し見ていきましょう。

インフレや移民問題などはいわばアメリカ国内の問題ですが、アメリカの外交政策となると、日本を始め世界各国にも大きな影響を及ぼします。特に今回の選挙は、この外交政策という点において今後の世界を大きく左右することになりそうです。詳しく見ていきましょう。

今回の選挙でアメリカの外交政策がまるっきり変わるかもしれません。それは、トランプ氏が大統領選に勝利した場合です。逆に、ハリス氏が選挙に勝った場合は大きくは変わらないということになります。では、具体的に解説していきます。

アメリカは第2次世界大戦で世界の覇権を握ってから、これまでヨーロッパ諸国と手を取り合ってアメリカを中心とした世界秩序を作り上げてきました。軍事的にも経済的にも世界最強であるそのアメリカの影響力を使って、それを成し遂げたのです。それは時にアメリカの力を使って外国に介入するということを意味します。アメリカの介入を受けてきたという点で言うと、日本はその典型的な例です。日本は戦争に負けたやけ野原から、経済的にも軍事的にもアメリカとの繋がりがあったことが急成長を支える一因になっています。

現在ロシアと戦争をしているウクライナにしてもそうで、アメリカから積極的な支援を受けることで、これまで軍事的にロシアに対抗することができているんです。これはほんの一例ですが、トランプ氏はこのような数十年続いたアメリカの世界戦略というのを、ぐるりと方向転換しようとしています。

「アメリカ第一主義」とよく言われますが、これは言い換えれば「アメリカの影響力から離れて、それぞれ自由にやってくれ」ということです。アメリカだけでなく、他の国も全て「自国第一主義」で自分の国の力だけでやっていこうよというメッセージとも取れます。アメリカが既存の世界秩序の維持から手を引くと、これまでアメリカの力で固定されてきた色々なものが動き始めることになります。

例えばウクライナの場合はどうなるでしょうか。トランプ氏はロシア・ウクライナ戦争を1日で集結させると発言しています。実際、アメリカからの援助がなくなれば、ウクライナはロシアと戦うことが難しくなるでしょう。そうすれば、領土的にウクライナに不利な形で戦争が集結するということも考えられます。ただし、これも良し悪しがあります。この先、ウクライナを何年もかけて戦わせた最後に果たして良い結果が待っているのかという疑問があります。「とにかく戦争が早く終わればいい」という意見だってあるんです。

. トランプ氏のNATO政策とその影響

この点、ハリス氏が大統領になれば、これまでのバイデン氏の方針を引き継いでウクライナを支援し続けることになるでしょうから、戦いは続きそうです。ウクライナを例に挙げましたが、トランプ氏が大統領になるとこのような変化が世界規模で起こることが予想されます。このインパクトも非常に大きなものになります。

冷戦以降、西洋諸国はNATOに加盟して集うことで軍事的な繋がりを強めてきました。ヨーロッパ全体には、多い時には米軍部隊が10万人に達する規模で駐留していたとも言われています。NATOの加盟国が攻撃されたら全員でやり返すという軍事同盟です。しかしトランプ氏は、このNATOのあり方について根本的に見直そうとしています。軍事費をちゃんと払っていない国は、どこから攻撃されようが助けてあげないと発言しています。「いつまでもアメリカが助けてくれるとは思わず、自分たちでうまくやってくれ」というスタンスですね。

そもそもNATOはロシアを中心とする東側勢力に対抗するために結成されたものです。しかしトランプ氏は「我々にとって最大の脅威はもうロシアではない」と発言していて、NATOの存在理由そのものを疑問視していることも伺われます。極端なところまで行くと、アメリカがNATOを脱退するのではないかということまで囁かれています。

アメリカはNATOでもぶっちぎりの軍事大国です。さらにNATOの兵力において第2位を占めるトルコがNATOを脱退するのも不思議ではありません。トルコは近年、西洋諸国から距離を取り、ロシアとの結びつきを強めています。このまま行けばNATOは解体されるかもしれません。

NATOが機能しなくなれば、ヨーロッパの国々は新しい軍事同盟を結ぶか、自分の国だけで戦う力をつけなくてはなりません。このように、トランプ氏が選挙に勝てば、アメリカはアメリカ自身の力から世界を解放するという方向に向かうことになります。ここには混乱があるかもしれませんし、今より良い形で世界秩序が組み直されるかもしれません。はっきりとしたことは誰にも分かりません。しかし、もしハリス氏がトランプ氏に勝って大統領になれば、このようなアメリカの方針転換はないということになります。

実際、ハリス氏は2月に行われたミュンヘン安全保障会議において、今後も世界情勢にアメリカが積極的に関わっていくということを述べました。これによって、トランプ氏の「アメリカ第一主義」とは反対の立場を示したことになります。

東アジアと中国との関係

さて、ここまではヨーロッパでの同盟関係の行方を見てきました。では東アジアはどうなるのでしょうか?トランプ氏の方針は、今述べた通り「自国第一主義」です。しかし東アジアの問題となると、気になるのは中国の動きです。中国の進出はアメリカの利益にも大きく関わってきます。ですから、アメリカが台湾や日本との結びつきを捨てるということはなさそうです。実はトランプ氏がウクライナやヨーロッパから手を引こうとしているのも、その裏には東アジアで影響力を増している中国の力に対する警戒があると考えられるんです。

つまり、トランプ氏の考え方はこうです。「アメリカはヨーロッパの安全保障問題に首を突っ込みす

ぎて、大事な予算や軍事力を消費している。これまで外国に分散させてきたアメリカの力をアメリカ国内に戻して、中国への脅威に備えるべきではないか。」これがトランプ氏の基本的なコンセプトだと言えるでしょう。

では、日本や韓国、台湾との関係はどうするつもりでしょうか。まずトランプ氏は、台湾への軍事協力については消極的な態度を示しています。アメリカが台湾から手を引くということは考えにくいですが、そのためには台湾がアメリカに防衛費を支払うべきだと要求しています。日本と韓国にしても同じことで、トランプ氏は日本と軍事同盟を維持する代わりに、ちゃんと防衛費を支払えと言ってくるでしょう。

そしてもう一点、過去に注目すべき発言がありました。前回のアメリカ大統領選でのことです。日本と韓国が自国の防衛をアメリカに依存しているとして、このままならアメリカ軍を撤退させると言ったのです。「自力で国を守るために日本と韓国は核兵器を持っても良い」とする考えまで示しました。どこまで本気かは分かりませんし、今でも同じ考えを持っているのかは定かではありません。しかし実際に今、韓国ではトランプ氏が選挙で優勢であることを受けて、核兵器の保有に関する論争が加熱していると言います。北朝鮮がロシアと接近し、実質的な軍事同盟を結んだと見られることも大きな要因の1つです。それに加えて、アメリカの大統領がトランプ氏になると、韓国はアメリカをこれまでのように頼ることができないと考え、気が気ではないのです。

同じように、日本も安心してはいられないでしょう。日本でも韓国のように、真正面から核兵器の是非を議論するような事態が訪れるかもしれません。反対に言えば、もしハリス氏がトランプ氏に勝てば、当然ながらトランプ氏が名言している国際関係のアプローチは起こらないことになります。ハリス氏はバイデン氏と共に、東アジアでもこれまで通りの協調を維持していく方針です。

ハリス氏とトランプ氏の対中政策の比較

それでは最後に、アメリカが対抗すべき中国との関係はどうなるのかを考えておきましょう。この点、ハリス氏の主張についてはまだよく定まっていません。ハリス氏は国際会議で1度だけ中国の習近平氏と対面を果たしていますが、副大統領として中国を訪問したことはありません。中国政府も現状ではハリス氏に対する積極的な発言は控えています。

中国メディアや専門家はどうかというと、ハリス氏のことをそこまで重要視していないようです。選挙に当選したとしても、これまでのバイデン氏の路線を継続するだろうと判断しているからです。中国にとって困るのは、やはりトランプ氏が当選した場合です。「貿易戦争」とも言われますが、アメリカが中国製品に対する関税を上げると、中国も貿易分野でそれに報復するような対立関係にあります。トランプ氏はアメリカの自国の利益を上げるために、輸入品に対して一律10%の関税をかけると言っていますが、中国に対してはそんな生優しいものではありません。中国からの輸入品には60%もの関税をかけると発言しています。

これは中国だけでなく、アメリカ経済に与える影響も大きいでしょう。というのも、アメリカ経済では中国からの輸入品が大量に消費されているからです。『チャイナフリー 中国製品なしの1年間』というベストセラー本があります。もしアメリカ人が中国製品を全く使わずに生活した場合、お金がかかりすぎて生活が成り立たないという衝撃的な内容です。つまり、一般的なアメリカ人の生活というのは、中国製品によって成り立っていると言っても過言ではないんです。その中国製品に60%の関税をかけるとなると、アメリカの物価はどうなるのでしょうか?

アメリカでは近年、インフレが問題となっていますので、トランプ氏の政策がそれを悪化させるという危険性もあります。しかし、トランプ氏に言わせれば、過激とはいえこれもアメリカの産業や雇用を守るための手段なんです。もしハリス氏が大統領になった場合は、ここまでのことはしないと見られています。

まとめと今後の展望

さて、ここまでトランプ氏とハリス氏の外交方針を比較して、大統領選後の世界について解説してきました。日本人の中にも、ハリス氏の政策が魅力的に見える人、逆にトランプ氏に魅力を感じる人、それぞれいるはずです。トランプ氏の銃撃事件からの奇跡の復活、これで勝負あったかと思われたところに現れたのがハリス氏です。現状ではハリス氏に支持が集まり、トランプ氏と人気が拮抗しているという報道を目にするようになりました。果たしてアメリカ初の女性大統領は誕生するのでしょうか?世界の歴史が動く11月の選挙戦からは目が離せません。

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