もしトランプ大統領が再選したら世界はどうなるのか?

歴史

もしトランプ大統領が再選したら世界はどうなるのか?

アメリカのそして世界の未来を大きく変えるであろう米大統領選が2024年11月5日に迫っています。世界中が注目しているのは、今のバイデン政権が続くのか、それとも再びトランプ氏が大統領に返り咲くのかということです。

バイデン氏は史上最高齢米大統領として有権者の間で健康状態への懸念が出ていることに加えて、先日行われた討論会で言葉に詰まるなど精彩を欠いた言動が目立ちました。これを受けて、「もしトランプが再当選したら」という「模トラ」から「ほぼトラ」になったという報道が目につくようになりました。

今、ロシアとウクライナの戦争や中国との関係悪化、中東問題など、世界には様々な心配事があります。そんな中でトランプ氏が大統領の座についたら世界はどうなるのでしょうか。そこで今回はトランプ氏が大統領になったら起こることを考察していきます。最後までご覧いただければ、株価への影響から世界情勢への変化まで理解できるようになり、日頃のニュースを見る目も変わること間違いありません。では、一緒に見ていきましょう。

民主党と共和党

11月に迫るアメリカ大統領選、民主党の候補者は現大統領であるバイデン氏、対して共和党の候補者がトランプ氏です。そもそも民主党と共和党にはどのような違いがあるのかから話を始めましょう。アメリカの民主党と共和党はその理念や支持基盤において大きく異なります。

民主党は大きな政府を基本理念とし、社会福祉や生活保護を重視します。全ての市民に対して基本的な生活水準を保障するべきだと考えます。つまり、政府が積極的に市場に介入することで社会の不平等を是正していくということです。一方、共和党が基本理念とするのは小さな政府です。自由な市場というのを重視していて、政府の介入を最小限にすることを目指します。

個人の自由と市場の競争が経済成長を促進し、それが結果的に全体の繁栄につながると考えるわけです。また、支持基盤においても両党は異なります。民主党は都市部やリベラル層やマイノリティ、労働組合、西海岸や東海岸の住民で、近年は高学歴層からの支持を集めるようになりました。

対して共和党は白人保守層、敬虔なキリスト教信者からの支持を受けています。近年は中西部や南部の農業地帯といった労働者層からの支持を集めています。

経済政策においてはどうでしょうか。民主党は中間層の収入増加や経済的公平を目指し、最低賃金の引き上げや課税の強化を提唱します。一方の共和党は減税や規制緩和を通じて自由な経済成長を促進し、企業活動の自由を重視します。外交政策においては民主党が重視するのは国際協力です。一方で共和党が重視するのはアメリカの国益で、自国第一主義的な外交政策を取ります。今は民主党のバイデン氏が大統領です。これが共和党のトランプ氏になるとどうなるのでしょうか。

移民政策

まずトランプ氏は移民政策を変更するでしょう。アメリカとメキシコとの国境の長さは3100km以上であり、日本の北から南よりも長い距離を接しています。そのため、アメリカでは長い間メキシコからの移民が問題になってきました。長すぎる国境のため管理が難しく、許可なく入ってくる不法移民が大勢いたのです。メキシコからの移民の人数は、トランプ氏が大統領になる直前の時点で年間1000万人以上に上りました。それに加えて中南米の他の国からアメリカを目指す人々もメキシコを通ってアメリカに来ます。

これらの移民が安い給料で働くことでアメリカ国内の労働者の雇用が奪われているというのがトランプ氏の考え方です。トランプ氏はアメリカ人の雇用を守るために移民を厳しく取り締まるべきだという立場なんです。実際に前回トランプ氏が大統領だった時には移民に対して厳しい政策を取りました。特に話題になったのはメキシコとの国境に壁を建設するという政策です。

また、国境に移民の集団が近づいてきた時には数千人の軍隊を派遣したこともあります。今回の選挙でもトランプ氏はこの移民問題について特にアピールしています。昨年は、自分が大統領になったら外国にいる軍隊をメキシコとの国境に移動して移民を止めると発言しました。また、何百万人もの不法移民を強制的に元の国に送り返すために軍隊を使うとの発言までしています。実際にどれくらい多くの移民が送り返されることになるかはまだ分かりませんが、トランプ氏が厳しい移民政策を再び行う可能性は非常に高いと言えます。

保険制度

次に保険制度の見直しです。トランプ氏は前大統領時代、その前の大統領であるオバマ氏が作った保険制度であるオバマケアを廃止すると宣言していました。ここでこのオバマケアについて少し補足しておきます。以前のアメリカには保険に加入していない人が大勢いました。日本のように国民全員が入るような保険の仕組みがなかったからです。

この場合、病気や怪我をしたら自分で医療費を払わなくてはなりません。ちょっと風邪を引いただけでも数万円から10万円ほどかかることもざらです。それが高すぎるためになかなか治療を受けられないという人たちが多くいたのです。こうして保険に入っていない人たちが多くいたことが問題になり、オバマ大統領の時に新たな政策が行われました。それがオバマケアです。

オバマ氏は保険に入ることを義務とし、低所得者向けの保険の対象を広げたのです。実際、この政策により保険に入らない国民は着実に減っていきました。しかし、トランプ氏は前回の選挙の時、この制度の廃止を主張したのです。なぜなら医療費が高くなっていて、政府の負担が増えていたからです。トランプ氏や彼が所属する共和党は、政府の役割を減らすために保険は民間に任せるべきだと考えていました。

とはいえ、実際にはトランプ氏が大統領だった時に議会では認められず、オバマケア廃止までには至りませんでした。では今回はどうかというと、トランプ氏は相変わらずオバマケアを改善すると主張しています。トランプ氏はそれ以上の詳しい説明は避けていますが、何らかの新たな政策は打ち出す可能性が高いでしょう。

株価

トランプ氏の再選でアメリカの政策が変われば、世界経済や株価にも大きな影響が出てきます。なぜならトランプ氏は何よりもアメリカの利益を重視しているからです。これは裏を返せば、他の国の利益は後回しでいいということです。例えば、今回の選挙でトランプ氏は全ての輸入品に10%の関税をかけるようにすると述べています。

さらに、中国相手には60%以上もの関税をかけるとまで言っています。現在のアメリカは輸入品には平均で8%の関税をかけています。中国の製品に対しては19%ほどの関税をかけていて高めになっています。19%でも高いのに、これが一気に60%まで上がるわけですから、中国にとってはかなり大きな変化だと言えるでしょう。

なぜトランプ氏がここまでするのかと言うと、その目的はアメリカ国内の産業を守るためです。10%の関税がかけられるというのは、単純に考えれば100万円の輸入品がアメリカ国内では110万円で売られることを意味します。60%の関税がかけられる中国の商品であれば160万円にもなります。このように外国の商品の値段が高くなれば、当然アメリカ国内で作られた商品の方が安く売れやすくなります。そうなると外国企業はアメリカへの輸出を減らすことになるでしょう。

逆にアメリカの製造企業は国内で商品がよく売れるため、より多くの商品を作るようになります。こうすることでトランプ氏はアメリカ国内の産業を発展させ、雇用を増やそうと考えているのです。前回大統領だった時にもトランプ氏は同じような政策を行っていました。

鉄鋼やアルミ製品に対する関税を上げ、中国に対してはさらに厳しい関税をかけたのです。初めは約3%ほどだった税率も一気に20%近くまで上げられました。トランプ氏が再び大統領になれば、もっと厳しい関税政策が取られる可能性が高いと言えます。

そして、こういったアメリカの政策が世界経済にも大きな影響を与えることになります。先ほどお伝えしたように、関税が高くなれば各国の企業はアメリカへの輸出を減らすことを考えます。そうなれば、各国の企業がこれまで自国アメリカ向けに作っていた商品の量は減らされることになり、世界中の経済が縮小する可能性があるのです。

WTO脱退

また、トランプ氏は前回の大統領時代、世界貿易機関WTOから脱退したいと発言していました。WTOは世界の貿易に関するルールを決めたり、トラブルを解決したりするための機関のことです。そのため、WTOはアメリカを最優先としたいトランプ氏にとっては邪魔な存在なんです。実際に対立するWTOは、以前のトランプ氏の中国を狙い撃ちにした関税政策を「これはルール違反だ」と批判しています。トランプ氏が大統領になれば、今回もWTOから脱退しようとするでしょう。前回脱退できなかった経験を踏まえると、今回はかなり強引に脱退してしまう可能性すらありえます。WTOからの脱退は、WTOが定めた世界の貿易ルールに縛られなくなるということを意味します。つまり、アメリカはその貿易相手に好き勝手に関税をかけることができ、アメリカと取引したい各国に対してやりたい放題の貿易ができてしまうのです。

実際にトランプ氏が在職中に中国に対する厳しい経済制裁を行った時には、米中貿易摩擦を懸念して世界中の株価が下落しました。WTOを抜け、トランプ氏のやりたいように貿易をするようになれば、前回以上に世界の株価も大きく混乱することになるでしょう。特にバイデン政権とは明確に異なる方向性を打ち出すという面から見れば、株価については今まで以上にセクター別での明暗が分かれそうです。今バイデン政権が行っているEV自動車関連や半導体企業への助成金が打ち切られることが考えられますから、そういったセクターは特に不安が残るでしょう。

一方で、アメリカ国内の産業を発展させ、雇用を増やそうという考えから、鉄鋼や石炭、自動車などの従来型の製造産業は強く守られるということが予想されます。

NATOへの影響

トランプ氏によるアメリカ自国主義の政策は世界秩序にも影響を与えかねません。アメリカは世界一と言われる軍事力を持ち、世界の警察官とも呼ばれ、世界の平和と安定の役割を担っている国だと言えます。しかし、トランプ氏は他の国に対して「自分の安全は自分で守るべきだ」といったような主張を繰り返しています。

アメリカの負担をなるべく減らしたいという狙いがあるのでしょう。今、アメリカはアメリカとヨーロッパの国々の同盟であるNATOに加盟しています。これは第2次世界大戦後、冷戦中にソ連の脅威を防ぐために協力していこうと作られた同盟です。冷戦終結後もロシアなどの脅威を防ぐために続けられてきました。

NATOという巨大な同盟が世界の安定に果たしてきた役割はとても大きいと言えます。しかし、トランプ氏は必要な軍事費を用意しない国に「ロシアが攻めてきてもアメリカは助けない」としていて、むしろ「ロシアに好き勝手に行わせれば良い」とまで発言しています。本来、NATOの加盟国が攻撃されれば他のNATO加盟国全てでやり返して世界の秩序を守るという決まりがあります。トランプ氏の発言はこれを無視するものです。

現在、ロシアによるウクライナ侵攻が続いていますが、バイデン政権はウクライナへの多額の支援を続けてきました。しかし、これもトランプ氏はウクライナを支援すべきかどうかに関して様々な発言をしています。「ロシアの好きにさせる」と言ってみたり、「私が大統領なら24時間以内に戦いを終わらせる」などと主張しています。その一方で選挙が近づく最近になって、「我々アメリカはウクライナの存続を重視する」と言い出しました。そのため、ウクライナに対して具体的にどのような政策を取るつもりなのかはっきりしません。何やら混乱の予感がありそうです。

台湾への影響

世界の問題はウクライナだけではありません。ロシアと同じように他の国への侵攻を企んでいると言われるのが中国です。特に気になるのが台湾問題です。中国から見れば台湾は自国の一部ですから、それを手に入れるのが当たり前だと考えます。ここでキーとなるのがやはりアメリカです。バイデン政権は台湾を守るというスタンスで中国には圧力をかけ続けています。

では、トランプ氏はどうするのでしょうか。トランプ氏は現時点で台湾と中国の問題について極端な発言は避けています。ですが、台湾はアメリカから半導体事業を奪ったという台湾への割とネガティブな発言はありました。そして、これを聞いた中国政府は「トランプ氏は台湾を見捨てる可能性がある」と発表しています。ここにも混乱の予感がありそうです。

イランも同様です。最近、改革派政権が誕生したということがニュースでも報じられました。さあ、これから欧米との融和政策に舵を切るぞというところで、トランプ氏の再登場です。融和路線を進めようにも、それを受け入れる土壌がトランプ政権下にあるかどうかは大いに懸念されるところです。イランの新政権がいきなり行き詰まって

しまえば、もちろんイラン国内は極めて不安定になります。軍事大国のアメリカが政策を変更すれば、世界情勢は一変するのです。

日本への影響

ここまでお話ししてきたように、トランプ氏が大統領になったら世界中に大きな影響があります。しかし、中でも大きな影響を受けると予想されるのはアメリカと同盟を結んでいる国です。当然、日本もそこに含まれているので、日本の今後も大きく変わる可能性があります。

最後にこれについてお話ししましょう。日本は第2次世界大戦後、アメリカと日米安全保障条約を結び、いい意味でも悪い意味でもアメリカの軍事力に守られてきました。日米安保なしでは今の日本は軍事的に孤立すると言えるでしょう。

前回のトランプ政権はこの日米安保を破棄しようとしていました。「米軍が日本に駐留して日本を守っているんだから、全駐留費を払え、無理なら撤退する」と主張したのです。また、この発言は対日本だけにとどまらず、他の国に対しても同じような不満を漏らしています。「ドイツも払っていない」「韓国も払っていない」「サウジアラビアも払っていない」ただ乗りをしていると。

このようにトランプ氏はアメリカの軍事力に支えられている国との関係を破棄しようとしていたのです。なぜなら世界平和を守るということではなく、アメリカが得をするかどうかというアメリカ自国主義の立場で考えているからです。もちろんこれが外交の交渉カードにもなり得ます。しかし、厳しい姿勢のトランプ政権に対して当時の日本では安倍総理がトランプ氏と交際を深めることに力を尽くしました。

そのため日米安保を続けるという合意を得ることができ、内容は少し変更されたものの日米安保にそれほど大きな変化はなかったのです。

ただ、安倍総理はもういませんし、トランプ氏の「アメリカの利益が最優先だ」という姿勢は変わっていません。そのため、専門家の中には日米同盟破棄を突きつけられる恐れがあると警告する人もいます。破棄とまでは行かなくても、在日米軍基地の負担費用を増やせと要求してくる可能性は非常に高いと言えそうです。これは他の同盟国に対しても同じです。そういった国々は今後の対応策を十分に考え、早めに行動する必要があります。

実際にアメリカの同盟諸国は自国の利益を守るため、すでに様々な手を打ち始めていると報じられています。例えば、サウジアラビアのムハンマド皇太子は最近トランプ氏と電話で会談しました。ハンガリーのオルバン首相とポーランドのルダ大統領は先日トランプ氏と面会しています。

ドイツは州レベルでトランプ氏の共和党の支持層との関係を築き、ドイツは米国産業に多額の投資をしているということを強調しています。では、日本はどうかと言うと、トランプ氏との外交関係を強化するために外務省の高官の派遣を準備しているとロイター通信が報じています。高官はハーバード大学で学んだ通訳官で、安倍元総理がゴルフを通じてトランプ氏と親しくなる手助けをした人物です。また、自民党副総裁の麻生太郎氏もトランプ氏と面会しています。このように各国のキーマンたちがすでに何らかの手を打っていることからも、トランプ氏の「アメリカ第一」という姿勢が同盟国にとっていかにダメージになるかが伺えます。

おわりに

トランプ氏が大統領に就任すれば、経済や国際情勢など様々な面で世界に大きな変化があることがお分かりいただけるかと思います。同盟国すら新トランプ政権を早々に警戒する状況では、中国やロシアが主導する陣営に新たな求心力が生まれる可能性もあります。

東南アジアなどの有力国がBRICSへの参加を模索するようになれば、米ドル覇権にも揺らぎが生まれるかもしれません。いずれにしても、今年の11月は世界のターニングポイントと言えそうです。これからも世界情勢から目を離すことはできそうにありません。

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