アラン・ワッツ『お金の心配がなくなったら、お前は何がやりたいんだよ』

哲学
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突然ですが、皆さんはやりたい仕事をしているでしょうか? それとも、やりたくない仕事をお金のためにしているでしょうか? こう聞くと、次のように思うかもしれませんね。

「はあ、何言ってんだお前。みんなやりたくないことを金のためにやってるに決まってるだろう。やりたいことを仕事にできる人なんてごく一部だけなんだよ。」

こんな感じで、本当はやりたくない仕事をお金のため、生活のためにやっているのではないでしょうか。そんな人々に対して、イギリスの哲学者アラン・ワッツは次のように言います。

「お前らさ、なんか勘違いしてねえか。金なんてやりたいことを追求すれば後から勝手についてくるものなんだよ。最初から金を求めるなんて人生を無駄にする考え方なんだよ。」

このように、お金のためにやりたくないことをやるのは人生を無駄にする馬鹿げた行為だと言いました。しかし、そう言われても、皆さんはきっと次のように思うのではないでしょうか。

「金は後からついてくる? そんな夢みてえなこと言ってんじゃねえよ。それができねえからみんな我慢して仕事してんじゃねえか。」

こんな感じで、やりたいことでお金を稼ぐのは難しい、将来を考えたらやりたくないことでも我慢しなければならない、と考えるのではないでしょうか。しかし、アランは次のように言います。

「んな金のことを考えずにやりたいことを真剣にやり続けろ。やり続ければ達人になる。達人になれば価値を生み出せるようになる。俺たちは社会によって金のためにやりたくないことをするべきと洗脳されてるんだよ。」

こんな感じで、好きという気持ちを持ち真剣にやり続ければ、いずれ達人になり、そうすれば勝手に価値を生み出せるようになると言いました。それなのに、仕事は辛いもの、好きなことよりもお金を優先するべきと周りの大人たちや社会によって洗脳されてしまっているのです。

それでは今日は、アラン・ワッツの「やりたいことにお金はついてくる」という話をざっくり解説しましょう。まずは彼という人物について紹介します。

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アラン・ワッツについて

彼はイギリスの作家であり哲学者です。1915年にロンドン郊外の田舎で生まれ、幼い頃にロンドンで仏教を教えるお寺を訪れたことで仏教に興味を持つようになりました。そして仏教の勉強を始め、10代の頃にはロンドンの仏教協会が出している機関誌「ザ・ミドルウェイ」の編集者になりました。19歳の頃には仏教についての本「ザ・スピリット・オブ・ゼン」を出版。その後アメリカに渡り、神学を学びながら6年間牧師として働き、26歳からはアジア研究アカデミーにて仏教を教えるようになりました。

彼の講義は次第に話題となり、ラジオでアジアの仏教文化や禅の文化を放送するようになりました。その影響もあり、1960年代には禅はアメリカ国内で広まり、彼の思想は既成の社会体制や価値観を否定するカウンターカルチャーとして多くの若者から支持されるようになりました。

アランと禅について

ここでちょっと禅について簡単に解説すると、禅とは心を沈め無心になることで外界からの刺激によって自分を乱さず、本来の自分に立ち返ることを目指すものです。禅ではそのために静かに座禅を組み、他者からの目線や世間の価値観から離れることで自分と向き合います。ある仏教研究者は禅を次のように言います。

「禅とは自分を自然の一部とすることで自らを立し、万物に感謝し、無駄を省き、生き方を見つめ直すことだ。」

アランは仏教や道教、ヒンドゥー教など、様々な哲学を研究する中で、多くの人々が凝り固まった価値観に囚われていることを知り、禅の思想を伝えることでそこから解放しようとしていました。

人生の目的

アランは

「人生の目的なんてただ生きること、それだけだ。それなのに立派にならないといけない、バカにされるような人ではいけない、社会によって何かを成し遂げる必要があるかのように錯覚させられているんだよ。」

例えば、フリーターをしている30歳で独身のA君がいます。彼は映画が大好きで、バイト代のほとんどを使って映画館に行き、家でも毎日Netflixで映画を見続ける生活をしています。それをする以上にお金が欲しいわけでもなく、今の暮らしで十分に満足しています。

ところが実家に帰ると、両親からは「いい加減定職に就け」と言われ、友人から「そろそろ結婚とか考えたら」とプレッシャーをかけられます。まさに周りの大人たちによって立派な大人を成し遂げることを強いられ、ただ生きること以上のものを求められます。A君が「俺は今のままでいい」と言っても、たいていこのように返されてしまいます。

「へえ、そんなんでやっていけるわけないでしょ。今はいいとしても、将来必ずお金に困ることになるわよ。」

こんな感じで、「そんなんじゃ将来必ずお金に困る。だから立派な大人になれ」と言われてしまいます。しかし、アラン・ワッツは次のように言います。

「お金を第一優先にしたら人生を無駄にすることになる。お金がもらえなくてもやることをやらなきゃいけないんだよ。お金なんて後でどうにでもなるんだよ。」

多くの人は何かやりたいことがあっても、それではお金が稼げないかもしれない、将来生活に困るかもしれないと考えてやりたいことよりもやりたくないことを我慢してお金を優先してしまいます。しかし、アランはお金のための仕事をしてしまえば、やりたくないことを続ける人生になり、それでは人生を無駄にすることになると言いました。

お金はどうにでもなる

先ほどのA君は本当は映画を見続けていたいのに、周りの声に従い、やりたくもない会社に就職し、そのせいで大好きな映画を見る時間が減ってしまいます。そうなると、彼の人生は一体何のためにあるのでしょうか。こう思うかもしれません。

「お金はどうにでもなるって、どうなるんだよ。やりたいことだけやってどうやって生活するんだよ。」

こんな感じで「後でどうにでもなる」と言っても、どうやって生活するのかと思うかもしれません。しかし、アランは次のように言います。

「好きなことをひたすら続けてみろ。そうすればいずれその分野の達人になる。達人になれば価値が生まれる。価値が生まれれば勝手にお金が生まれるようになるんだよ。」

好きなことだけして生きる

このように、好きなことをひたすら続けていれば、勝手に知識や技術が身につき、勝手に価値を生み出せるようになると言いました。

例えば、野球をやっているしげる君がいます。彼は親から野球を強要され、野球クラブに通わされ、無理やり練習をさせられます。

しげる君は野球が好きではないため、野球のことを考えるのは練習中だけで、休みになればすぐにゲームや友達との遊びに夢中になります。

一方で、野球が大好きな達也君がいます。自ら野球クラブに入ることを望み、自ら進んで練習をします。好きでやっているため、常に野球のことを考えており、家に帰ってもテレビで野球を見てYouTubeで野球の動画を見て、休みの日にも1人で練習をしています。さて、しげる君と達也君は一体どちらがうまくなるでしょうか。

多くの人はこういった違いを「努力量の差、努力できるのも才能」と言いますが、そもそも好きでもないものを努力なんてできません。逆に言えば、好きだからこそ努力ができるのです。まさに「好きこそものの上手なれ」というように、好きであれば自ら進んでそのものについて調べ、自ら進んでそのもののことを考えます。

好きこそ達人への近道

アランは、好きなものを追求することこそ達人になるための近道だと言いました。もちろんこれはあらゆる分野で同様です。

例えば、これは実在のモデルがいる人物なのですが、怖い話が大好きなアミちゃんがいます。彼女は元々は普通に会社員をしていましたが、ある人たちに怪談会に誘われたことで怪談の面白さを知り、突然会社を辞めて借金をしてまで全国の怪談会を巡るようになりました。テレビやYouTubeでも怪談を探し求め、古い本なども片っ端から漁り、怪談好きが集まるバーなどにも通うようになりました。

それを1年2年と続けるうちに、古今東西のあらゆる怪談を覚えていきます。そのあたりからお金が足りなくなり、怪談会で出会った人に相談すると「あなたの知識は価値があるからブログでもやったら」と勧められ、そうしてあらゆる怪談をまとめたブログを始めたことで徐々にお金を稼げるようになってきます。そうしてできた怪談好きたちが集まる場が欲しいと考え、自分でも怪談バーを開業し、知り合った怪談師などを招いて怪談会を開き、さらに収入を得るようになりました。さらにはテレビや雑誌の取材などにも呼ばれるようになりました。バーは結局うまくいかず閉店してしまいましたが、現在は怪談会で知り合った人に誘われ怪談関係のイベントのスタッフをしていると言います。

他にもYouTubeを見れば、ガチャガチャが好きすぎる人がガチャガチャを開封するYouTuberとして登録者が50万人近くいたり、1つのゲームをずっとしていた人がeスポーツのプロとして活躍していたり。このようにアランは、お金のことを考えずに好きなものを追求すれば、いずれそれについての知識が身につき、その知識には価値が生まれ、あなたに協力したい人も集まり、勝手にお金を稼げるようになると考えていました。

自分の欲求に正直でいることが大切

アランは次のように言います。

「人が強烈に興味を持つものは他の誰かも興味を持つものだ。あなたがそれを必死でやっていれば必ず応援する人が現れるんだよ。」

もちろん、誰にも見えないところで好きを追求していても、あなたに協力したい人も、あなたに価値を感じる人も現れません。しかし、アランは多くの人と関わり、自分の活動、自分がどれだけその好きなことを追求しているかを伝えていけば、いずれその行動に価値を感じる人が現れ、勝手にお金に変わっていくと考えていました。

例えば、多くの成功者と言われる人を見ていると、大抵の場合はやりたいことを追求した結果です。Facebookのマーク・ザッカーバーグはプログラミングにはまり、大学時代に悪ふざけで女子生徒を顔写真で格付けするサイトを作り、それが後のFacebookとなり億万長者になりました。

USJを世界4位のテーマパークに導いた森岡氏は、「成功者とは好きの探究者である」と言い切ります。ほとんどの人はまずお金のことを考え、その後に今のお金でできることを考えています。

しかし、それは順番が逆なのです。好きでもないことを仕事にするから情熱が生まれず、真剣に努力ができなくなり、一向にお金を稼げなくなります。いわば、生きるために働くのではなく、やりたいことを叶えるために生きる。

アランは、何よりも自分の欲求に正直でいる人こそが結果的に成功を手にし、誰よりも幸福に生きられると考えていました。

仕事がつらくなる理由

アラン・ワッツは仕事が辛いものになる理由を次のように考えていました。

「まずはさ、仕事を仕事と思うのをやめろ。仕事と思うからそれが辛いものになる。仕事ってのは遊びに本気で取り組んでいたらいつの間にか稼げるようになるものなんだよ。」

例えば、サッカーが大好きで暇さえあればサッカーをしていたA君がいます。ところが、プロになりお金を稼ぐようになると、いつの間にか金のためにサッカーをするようになり、だんだんと辛く感じるようになってきます。なぜなら、元々は目的がサッカーそのものだったのに対し、いつの間にかサッカーでお金を稼ぐことに変わってしまい、やりたくてやるものからやらなければいけないものになってしまったからです。

だからこそアランは、仕事という認識をやめ、遊びと思って好き勝手に楽しむこと、そうしなければ好きな仕事も嫌いになり、どんどん成果をあげられなくなると語りました。さらに彼は次のように言います。

「お前らはさ、やりたくないことがずっと続く長い人生と、やりたいことだけをやる短い人生、どっちがいいんだよ。」

例えば、全く面白くない、むしろ苦痛な上にクリアまでに100時間かかるゲームがあるとします。一方で、クリアまで10時間しかないけれど非常に面白いゲームがあります。この2つのうち、どちらがやりたいでしょうか? 聞くまでもなく全員が後者の短いゲームを選ぶのではないでしょうか。

しかし、いざ人生となると、ほとんどの人が前者のゲームを選びます。なぜなら、私たちは生まれた時から「安定こそが幸せ、長生きこそが幸せ、お金に困らないことが幸せ」といった価値観を押し付けられているからです。

安定が本当の幸せか?

アランは

「人が本当に求めているものは予測不能なことだ。収入が安定して将来も見通せる人生、それのどこが楽しいんだ。人生は予測できないから楽しいものになるんじゃないか。」

実際、安定した仕事に就き、それを続ける人の人生というのは、将来までにどんなことが起こるのかほとんど予測できます。ちょっとずつ年収が上がり、30歳ぐらいで結婚し、子供が生まれ、マイホームを買い、子育てに専念する。ドキドキワクワクするようなことは起こらず、その後の全てのネタバレを食らったような、事前に攻略本を読んでプレイする人生になります。攻略本通りにプレイしているからこそ、そこから外れることに不安を感じてしまいます。

だからこそアランは、「何が起こるかわからないことをしなければ人生はつまらないものになってしまう。だからこそ将来の見通しがつかないやりたいことに本気になるべきだ」と考えていました。

もちろん、やりたいことをやったところで達人になるまでには時間がかかり、最初は全く成果が出ません。だからほとんどの人は、少しやっただけで「やっぱり稼げない」と諦めてしまいます。さらに、その分野はやる人が多いほど競争率が上がり、より長い時間がかかります。

どんなジャンルでも片手間にやっている人は大勢いても、自分のやってみたい、面白そうに身を任せ、全力を尽くして本気でやっている人は100人に1人もいないのではないでしょう。だからジャンルによって時間に違いはあるかもしれませんが、本気で取り組めば、本気で自分が楽しめるものに取り組めば、大抵のことは価値を生むことができるのではないでしょうか。

サッカーが好きで続けていれば、サッカー選手にはなれなくてもサッカーに関係した何かを仕事にできます。映画が好きで見続けていれば、映画監督にはなれなくても映画評論YouTuberや何かしらの形にはなります。

つまり、結局は先にお金を求めた人ほどやりたくない仕事をするしかなくなり、お金を後回しにしやりたいことを続けた人ほどやりたい仕事を手にできるのかもしれませんね。

終わりに

今回は、アラン・ワッツの語る「やりたいことにお金はついてくる」という話です。アランは禅の心を持ち、周りに流されずに本当の自分を見つけることを重視していました。ここまでの話を聞いても、そもそも本当にやりたいことが思いつかない人も多いかもしれません。しかし、一度お金の心配がなくなったら何をするかを考えてみてください。そして、その答えが見つかったら、それをやるためにはどうするのかを考えてみてください。

もちろん、ここまでの話で「そんなにうまくいかない」と思う人がいるかもしれません。ただ、やりたいことを追求して失敗したなら、何かしらのやりたくない仕事に就くことはできます。そう考えると、何もしないでやりたくない仕事に就くよりは、一度サイコロを振ってみる方がはるかにましなのではないでしょうか。

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